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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT7 ドレッド・ベレーとキャシー・パイロ
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第六話「ドレッド・ベレーの脅威」

 メトロ20地区の海水循環設備横の住民居住エリア。

 その入り口では3人の自警団が警備に当たっていた。

 自警団の男が呑気に昼寝しする住民に怒鳴り散らす。


「お前ら何度言ったら分かるんだ! もう狩りが始まっている。殺されるんだぞ!

 早くもっと奥へ逃げるんだ!」

「殺されるぅ~? そりゃ大変だ。皆逃げとけ逃げとけ」


「お前もだよっ! 手間かけさせんなっ!」

「俺はもう死んでも構わんよ。俺はこのアンダーワールドで生まれた。

 一度も外に出た事はねぇ。

 太陽を拝んだのも、海水排出口からおっかなびっくり一度見たきり。

 こんな糞みたいな人生、いつだってオサラバでいいさ」


 周囲を伺っていた自警団員が叫ぶ。


「気を付けろっ! 何か来るぞっ!」


 足首まで水に浸かる大きな下水パイプの中を何かが凄まじい速度で水しぶきを立てながらこちらへ駆けてくる。

 その双肩の上には丸い二つのドローンが浮遊し、男の両手にはサブマシンガンが握られ、ベレー帽を被っていた。


「ドレッド・ベレーだっ! 仕留めろぉ!」


 3人の自警団員が慌てて小銃をドレッド・ベレーに向けた。

 しかしドレッド・ベレーは下水管の出口で少しかがんでからジャンプした後、上側の淵を掴み、逆上がりをするように体を回転させて、天井の上のメンテナンスパイプ群の上に滑り込む。

 あまりの素早さに誰一人銃口で狙いを定める隙が無かった。


「天井のパイプだっ! 天井のパイプの上を走って近づいて来るぞ!」


 天井のパイプの上をドレッド・ベレーが駆ける足音が地下に響く。

 自警団員達はオロオロしながら天井に銃口を向けて警戒する。


「よぅ。こっちだ」


 一人の男が慌てて振り向くと、天井のパイプに足を絡めて逆さまになり、上半身をさらしたドレッド・ベレーが至近距離でサブマシンガンを向けていた。


「うあぁぁぁ」

「オゥオゥオゥ……楽しくいこうぜ」


 自警団員が小銃を向けるより早く、サブマシンガンが火を吹き、自警団員は体中に銃弾を受けて痙攣するように死のダンスを踊った。

 残り二人の自警団員が慌てて小銃を乱射するが、ドレッド・ベレーは素早く体を起こすと天井のパイプ上を走り、二人の頭上を通り抜けると、金網の床へと飛び降りる。


「舐めやがって!」


 小銃が乱射されるがドレッド・ベレーは広間へ逃げ込むと、柱の裏に隠れ、時々顔を出して挑発する。

 だがそこに放たれる銃弾は一発も命中しない。

 自警団員の一人の額を冷たい汗が流れる。


(さっきからガーディアンドローンのカメラがずっと俺たちをロックしている。

 だが一度も撃たれていない。

 つまり今まで撃ちまくった銃弾全て……只の一度も……ドレッド・ベレーが撃たれる可能性が無かったという事……。

 伝説は只のうわさでは無かった……俺たちじゃ……勝てない……)


 ドレッド・ベレーは近くで呆然と見ていた住民に銃口を向けて命令した。


「立て……」


 住民は呆然と見たまま動かない。

 だが即座に一発、男の右腕を銃弾が貫通した。


「だあぁぁぁっ! いってぇぇ!」

「立て」

「わ、分かった……撃つな」


 ドレッドベレーは住人に自分の前を歩かせ、後頭部に銃口を突き付けながら自警団員の方へ進む。


「そのオモチャを捨てな」

「わ、分かった。その人を解放しろ」

「馬鹿野郎! そいつは全員を殺す気だっ!」


 住民の腹部を貫通して血と肉片と共に銃弾が飛び出し、銃を捨てた自警団の頭部に命中した。

 最後の自警団員が小銃を乱射するがドレッド・ベレーは自警団員を見据えたまま右へ、左へとジャンプを交えながら移動し、最後には体を丸めて転がりながら背後へと回り込む。


「こんのっ! ゴキブリみたいに動きやがって……。どふっ」


 ドレッド・ベレーは背後から片手で自警団員の首を掴み、片手でサブマシンガンの銃口を腰の上の脊椎に押し当ててから耳元で囁く。


「分かってないな……ゴキブリというのは……お前らの事だ」


 ドレッド・ベレーはそのまま自警団員の体を、首を掴む手と、腰の脊椎に押し当てたサブマシンガンの銃口でささえて頭の上に持ち上げた。


「俺は疑問に思ってたことがある。お前の体が上半身と下半身に分かれたら、どっちがお前自身なんだ? 教えてくれよ。ハァ~~ッハッハ!」


 サブマシンガンのフルオートのけたたましい轟音が鳴り響き、自警団の男の腹部から血と肉の噴水が上がった。

 突如、ガーディアンドローンが反応し、ドレッド・ベレーが走り出てきた下水管のほうへカウンター狙撃を行った。


「ちっ、ポイント1ダウン。不機嫌になったぜ」


 ドレッド・ベレーは自警団員の死体を捨てると素早く走って壁の裏に隠れて様子を伺う。


 下水管の曲がり角では、ネリが破壊された小銃の銃口を眺めて思案していた。

 サイドショットモードでL字型に折り曲げて使用していたのが幸いし、体に銃弾は受けていないが銃のつなぎ目が破損してもう使用出来そうにない。

 その後ろではマキが屈みこんで待機している。


「銃で倒すのは難しそうですね」

「……ちっ……」


「真正面から戦って勝てない。一番やっかいなタイプです。

 ネリさん。その高周波ブレードの扱いに慣れていますか?」

「物心ついた時から使ってるさ。この手の得物はな」


「私に考えがあります」

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