表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT7 ドレッド・ベレーとキャシー・パイロ
42/151

第五話「『狩り』開始」

 マキとネリはアンダーワールドのSGFメンテナンスエレベーターのC29地点を警護していた。

 そこは四角い大きなホールとなっており、壁の一端を這うように金属むき出しのエレベーターシャフトが見える。

 ここは通常時はロックされており、もう何十年も使用されていない。

 二人とも零式熱小銃を両手で持ち、遮蔽物となるプレートボックスの影に隠れてエレベーターを監視し続ける。


「マキ、零式熱小銃のサイドショットモードの使い方は分かるか?」

「はい。一般に情報が流通している兵器の使用方法は全てインプットされています」


 マキはストックと銃本体のつなぎ目にあるピンを引っ張ってロックを外し、銃身をトリガーの前から横に90度折り曲げた。

 折り曲げられた銃身についている液晶パネルが銃口の向き先の映像を映し出す。


「よし、もしもエレベーターが開けば問答無用で撃つ。いいな?」

「はい」


 突如地下のあちこちから警告音が響き、エレベーターシャフトに取り付けられたパトランプが回り始めた。


「来るぞっ!」

「ここだけじゃありません。あちこちのエレベーターが同時に作動しています」


 マキ達の見ているエレベーターシャフトの中に上から金属の塊のコンテナがゆっくりと現れた。

 そしてフロアと同じ高さになり、ドアが開く。

 息をつめて銃眼視点の映像を見守っていたネリが、しばらく黙ったあと呟く。


「外れだ。 他の連中の援護に行くぞ」



 丁度マキ達が見張っていた場所から、各種配線の格納されたコンクリートの壁を挟んで裏側のエレベーターC24。

 そこでは二人組の男の自警団が同じように銃口をエレベーターへ向けて構えていた。

 エレベーターのドアが開くが人の気配が無い。


「ちっ、誰も居ねぇ」


 一人が立ち上がって振り向いた瞬間、エレベーターの中に男が降り立った。

 両手にサブマシンガンを持っている。

 ドレッド・ベレーである。


「ダニー! どけぇっ! 奴が居る!」


 自警団のもう一人の男が横へ走り出てエレベーターの中目がけて小銃を乱射する。

 だがドレッド・ベレーは素早くエレベーターの外へ走り出ると隣の壁へ駆けあがり、フロアの天井のパイプに飛び移る。

 銃弾はその背後をトレースするのみである。

 遂にドレッドベレーが二人の自警団の目の前へと降り立った。

 小銃を向けようとした自警団の男は顔中を穴だらけにされてその場に倒れる。


「ち、ちきしょぉ」


 もう一人が銃を持ち上げようとしたが、ドレッド・ベレーのサイボーグ化した足が素早く銃を蹴り飛ばして銃が消える。

 さらに回し蹴りを受けて男は地面にあおむけに倒れこんだ。

 ドレッド・ベレーは男の横顔を踏みつけて2丁のサブマシンガンを胴体に向ける。


「1秒やる。命乞いをしろ」

「この……」

「終わりだ」


 ドレッドベレーは男の腹に2丁のサブマシンガンを乱射した。

 当たりじゅうに血と内臓の破片が飛び散り、異臭が立ち始める。

 遅れてエレベーターの中にもう一人、キャシーパイロが天井のメンテナンスハッチから飛び降りた。

 そしてドレッド・ベレーの所へ歩み寄る。

 両手にガーディアンドローンを抱えているようである。

 キャシー・パイロはドローンのスイッチを入れるとドレッド・ベレーへと放り投げた。

 ドローンはドレッドベレーの両肩の上で浮遊して止まる。


「自警団が居たの? 警戒されてるって訳ね」

「ああ……たかが知れてるがな。それより手分けするぞ」


「私は北部エリアの消毒してくるわ。南部エリアは排水路や水路が多くてちょっとね」

「オーケー。俺が南部の奴を狩る。じゃぁお楽しみはホドホドにしろよ?」

「アハッ、貴方がそれを言う?」


 キャシー・パイロは北部エリアへと続く通路へ向かって走りこむ。

 ドレッド・ベレーは南部の住人たちの居るエリアへ向かって駆け出した。

 遅れてその部屋にマキとネリが駆け込む。

 ネリは二人の自警団の死体に無言で歩み寄り、しばらく見ていたが冷めた目で南部エリアへの通路を指さした。


「ドレッド・ベレーだ。南部の住人居住区に向かってる。私達も追うぞ」




 下水溝の中を全身が有機物で覆われた人型の宇宙人のようなものが歩いていた。

 それは膝までが流れる汚物に浸かったまま足取り重く進んでいる。

 八菱重工研究所から脱出したディバである。

 あれから四日間、彼女は地下迷宮のような下水を彷徨っていた。


【生体型バイオハザードスーツ緑蝉リョクセン:ディバ様、生体維持の為に水と食料の摂取が必要です。口を開けてください。内部生成した再生食料を流し込みます】


「もう勘弁してよ……、それ何で出来ているの?」


【再生したたんぱく質とビタミン、水分です】


「どこにあったのよ?」


【70%はディバ様の排出されたものを再生、20パーセントは大気中からの合成、10パーセントは外環境から摂取したものの分解合成したものです】


「……薄々分かってたけど……聞かなきゃ良かった……」


【内部に蓄積した有毒物質が限界値に近づきました。排出行動を取ってください。】


「排出行動? どうすればいいの?」


【股を開いて立ち止まって股間にある排出パイプを持って体に付着しないように構えてください】


「こんな格好……とても人には見せられないわ……」


 ディバはいわゆる男が立って尿を出すポーズで有毒物質を下水へと流した。

 ふと振り返ると10歳くらいの女の子が金網の通路の上からじっとディバを見つめているのに気が付いた。


「え、こんなところに子供が……、そこの君! そこから動かないで待っててね!」

「女の人の声……女の人なのにあんな事するんだ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ