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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT7 ドレッド・ベレーとキャシー・パイロ
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第三話「自警団でのブリーフィング」

 マキとカムイは、ノアの部下に案内されてメンテナンス用通路を歩いていた。

 床板は網状の金属プレートになっており、左右の壁からプレートの下までぎゅうぎゅう詰めの状態で大小さまざまなケーブルが走っている。


「それにしても凄い光景だな。このケーブルは何だろう?」

「こういうケーブルが運ぶのは二種類だけだ。情報か、電力だ」

「電線ではないようです。大電流というほどの磁界が検出されません」


 先を行くノアの部下は興味がなさそうに肩にパルスレーザーライフルを担いだまま振り返らずに言った。


「なんだっていいさ。だがむやみに触って壊すなよ? もしケーブルに異常が起これば地上のエンジニアがメンテナンスに派遣される。

 我々も地上のエンジニアも鉢合わせになることは望んじゃいない」

「よく会うのか?」


「アンダーワールドの住人は人が良く来る場所になるべく立ち寄らないし、地上の人間が来たらそこから立ち去る。お互いの為さ。

 今向かっている場所の自警団も侵入者から住人を守るのだけが仕事じゃない。

 トラブルを引き起こすどうしようもないアンダーワールドの犯罪者の処理も仕事だ。

 見境ない犯罪者が地上からきたエンジニアを襲えば、住人全部が迷惑するからな」


 3人は直径50メートルほどの円筒形の部屋へとたどり着いた。

 そこにはいくつかの木箱が机や椅子の代わりに置かれ、既に20人くらいの人々が集まっていた。

 上を見上げると遥か高い天井ではファンが回転している。

 ここは空調設備の一部のようである。

 下を見ると二重構造の金網のプレートの5メートルほど下では海水が川のように流れている。

 ノアの部下が手を上げて声を張り上げる。


「聞いてくれ。この娘が今日から自警団で世話になるマキ、軍用アンドロイドだ」


 人々が一斉に注目する。

 黄色く染めた角刈りにバンダナを付けた20代後半くらいの男が答える。


「話は聞いている。『訳あり逃亡者の居住区』自警団へようこそ。

 俺が自警団のボス、コーディーだ。皆、彼女が新入りのマキだ。仲良くしてやってくれ。

 ネリ、しばらく彼女に仕事を教えてやってくれ」


 赤いセミロングの髪、片目に赤くルビーのように輝くバイザーを付け、全身をダイバースーツのようなもので覆った20代ほどの女性が無言で歩み寄る。


「やぁ、久しぶりじゃないかネリ、ユリカを案内してもらって以来だな」

「あぁ」


 ネリは興味なさそうに軽く相槌を打つ。

 コーディーがカムイに言う。


「悪いな。ここから先は業務上の機密を守るため、部外者には出て行って貰いたい。

 その方がお互いの為だ」

「分かったよ。ネリ、マキをよろしく頼む」


 カムイはノアの部下に続き、そのフロアから立ち去った。

 カムイが立ち去るのを見届けたコーディーが机替わりの木箱の上にVRディスプレイデバイスを置いた。


「皆集まってくれ、今回のミッションだが……来たばかりのマキには可哀想だがかなり面倒な相手だ」


 自警団の連中が机替わりの木箱を取り囲んで座り、マキもネリの隣で座る。

 コーディーが端末を操作すると『訳あり逃亡者の居住区』周辺の地上と地下構造のマップがホログラムで表示され、ゆっくりと回転し始めた。

 地上のL字型のエリアが黄色く光って点滅している。


「メトロ20地区を知ってるな? 地上のショッピングモールで使う空調の熱交換機が多数露出しているエリアだ」

「ああ、臆病な連中が寄り集まって大勢住んでいる場所だな」

「冬場を過ごせるアンダーワールドの貴重な居住スポットね」


「その上のショッピングモールが改築され、120階建ての大型ビルへと改築される計画がある。

 その規模のビルへの建て替えはソリッド・グラウンド・フレームの大規模なメンテナンスを伴う」

「……狩りか?」


「そうだ。我々の情報網が無ければ気が付いたころには悲劇が始まっているだろう」

「避難させないのか?」


「もちろん警告をしたがあそこの連中は状況を甘く見ている。20年間平和だった場所に急激な変化が起こる事を理解しようともしない。

 説得は間に合わなかった。

 明日、二人の専門家が狩りに派遣される」

「こんどはどんなサイコ野郎だ……」


 コーディーは端末を操作した。

 ホログラムの地図が消え、坊主頭にベレー帽を被ってサングラスをかけた白人の軍人の東部が現れて回る。


「一人はドレッド・ベレーだ」


 自警団たちに動揺が走る。


「まじかよ……、こいつはヤバい」

「……出来れば見たくは無かった……」


 ホログラムに映るドレッド・ベレーの頭部が縮小され、全身が映し出されて回転する。

 その両肩の上部には二つの浮遊するボールが映っていた。

 両手には異常にグリップの長い短機関銃が握られている。


「ドレッド・ベレー。

 中国による九州侵略の際にロシア側から好んで戦闘に参加した殺人狂の元軍人。

 両腕と両足をサイボーグ化している。

 5年以上前からアンダーワールドの各地で殺戮と虐待を繰り返してきた殺人鬼だ。

 奴の両肩の上に浮遊するのはガーディアン・ドローンと呼ばれる迎撃装置。

 全方位を常時監視し、ドレッド・ベレーに銃口が向けられれば即座にカウンター狙撃で迎撃する護身用ドローンだ。

 そして直接人々を殺戮するのは彼が両手に持つサブマシンガン。

 彼が何故この武器を使うのか……」

「至近距離で無抵抗の人々の虐殺を楽しむ為」


「そうだ。ただの駆除であればガーディアン・ドローンに攻撃をさせることもできるが、こいつはあえて自衛しかさせない。

 自分が殺戮する獲物が減るからだ。そしてもう一人が」


 コーディーが端末を弄る。

 銀髪で寝癖カールのショートヘアの20代くらいの女性の頭部が映し出されて回転する。

 顔中に異常に光沢がある。


「キャシー・パイロ」

「ちっ」


 自警団のメンバーの大男が机に両肘を置き、頭を抱えて俯く。

 ホログラムが縮小され、全身をゴムタイツで覆って女性のボディラインが露わになった姿が映る。

 全身に金属製のタコの吸盤のような装置が付けられ、体の各所に小型のタンクを装着している。


「全身を防炎タイトスーツで多い、顔には防火ワックスを塗りたくっている。

 髪の毛は地毛ではなく、全て植毛した人工毛髪。

 全身から炎を噴出し、髪の毛に定期的に自動充填されるオイルで髪の毛も炎が燃え移ると一時的に燃え上がる。

 噴出する炎は半径20メートルくらいは届く。

 アンダーワールドで虐殺するには十分だ。

 彼女もまた極まったサイコ野郎だ。

 大勢の人間を至近距離で生きたまま焼き殺すのが趣味で、炎の熱風で自分の髪がはためくのが快感というナルシストでもある。

 ドレッド・ベレー同様に趣味と実益を兼ねて狩りをしている。

 そして神経拡張をしており、異常な反射神経で銃器で攻撃を受けた記録がない。

 今まで5年以上ドレッド・ベレーと共に戦闘を繰り返し、無傷で生き残っている。

 嫌なことに、二人とも慣れ過ぎるほどに『狩り』に慣れている強敵だ」


 自警団のメンバーは全員が沈黙していた。

 コーディーが一人続ける。


「メトロ20地区の住民は300人以上。

 大虐殺と、拉致によって二人のサイコパスの玩具代わりに拷問を受ける人間が出るのを止めるにはこの二人を倒すしかない」

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