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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT1 アイアン・エンジェル事件
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第三話「陸軍特殊部隊壊滅」

 ビルとビルの隙間を埋めるように首のないダチョウのような形をした警備ロボットが並び、ホログラムの通行止めラインが空中に描かれていた。

 警備ロボットは警視庁の印章とパトランプがついて点灯している。

 そこを横切ろうとした二人連れの通行人の眼の前に警備ロボットからバーが伸びて道を遮る。


「ここは通行止めです。迂回して下さい」

「通行止め? 事故でも有ったの?」

「極秘事項でありお答えできません」

「おいおい、迂回路検索したら5ブロックほど横から大回りしないと行けないみたいだぞ」

「マジぃ? ありえなーい」


 人々のざわめく声が響き、通行人の隣の道路へサソリ型の歩行戦車、兵員を輸送する防弾車両が列をなして走ってくる。

 上空には兵員輸送用のホバーヘリが随伴している。

 道路を防ぐように並んでいた警備ロボットはさっと道を開け、その中に戦車達が入っていく。


「おいおい何が起こってるんだよ。只事じゃないぞ」

「ニュースは? ニュースには何か出てない?」

「うーん、今日この一帯で大規模な停電が有ったってニュースくらいかな。

 他は何もねーよ」


 通行止めのラインから奥に入り、一つ角を曲がるとそこは地獄の戦場であった。

 民間人、警官、警察の特殊部隊員、そして日本陸軍歩兵隊の射殺死体があちこちに点在している。

 立ち入り禁止区域の中央では道路に落ちた瓦礫を盾にして歩兵達が伏せた状態で小銃を構えていた。

 一人が首輪のような形の通信機を通じて会話している。


「観測班! ターゲットの『アイアン・エンジェル』の位置情報を早く同期してくれ!」

「最新情報は五分前に送ったのが最後だ。射出したドローン達は尽く撃墜されて全滅している。

 あ、まて今角から……フゴッ!」

「どうした? 応答しろ!」


 観測班の隊員は応答を返すことはなく、聞こえてくるのは銃の射撃音のみになった。

 突如背後でカランコロンという音がして歩兵達は振り返る。

 5、6個のグレネードが至近距離に転がっていた。


「ちきしょぉおおお!!!!」


 連続した爆発音とともに歩兵チームは壊滅した。


「パーパ! パーパ! 今のキルカウントトータル250よ? ハッハ! ハッハハ! アハハハハハ」


 アイアン・エンジェルと呼ばれたロボットは独り言を叫びながら弾倉が空になったグレネードランチャーを捨てると、歩兵達のもつ零式熱小銃(陸軍採用の一般的なライフル、サーマルガンである)を両手に持って走る。

 アイアン・エンジェルは巨大なビルの1F入り口に到達した。

 そのビルの荘厳なデザインの入り口は半径10メートルほどの半円状のステップに6つほどのローマの古代建築のような石の柱が並んでいる。


「イージス展開! 包囲せよ!」


 一人乗りの二足歩行パワードスーツ「アツカイ」が6体ほど、両手に巨大な大砲のようなものを装備して進軍する。

 アイアン・エンジェルはパワードスーツに向けて零式熱小銃を乱射した。

 しかしパワードスーツの持つ大砲の電飾部分が赤く発光すると同時に空中で火花を散らして弾丸は全て迎撃された。


 イージスガン、このパワードスーツが両手に構える人ほどの大きさの大砲の名前である。

 マッハで飛んでくる弾丸をセンサーで検知し、カウンターの弾体を磁力による捻じ曲げ操作とともに発射し、空中で撃墜する。


 イージスガンを両手に持つ中型パワードスーツがビルの入り口のアイアン・エンジェルを囲むように包囲した。

 その防護の後ろで随伴歩兵十数人が展開して様々な武器を構える。

 全員通常の歩兵より明らかに豪華な装備をしており、巨大で筋肉質である。

 彼らは陸軍の特殊部隊チームである。


「撃てぇ!」


 歩兵達の持つミサイルランチャーや小銃からアイアン・エンジェルに集中砲火を放つ。

 アイアン・エンジェルは反射的に石の柱に身を隠した。

 ビルの入り口はミサイルや弾丸でボロボロになるまで破壊される。


 アイアン・エンジェルは攻撃が一段落して銃火器がリロードに入るタイミングで飛び出して兵士たちの所へと突進した。

 小銃弾がいくつか命中し、頑丈な装甲を凹ませて火花を散らすが、ロボットは止まらない。

 イージスガンの防護ラインを通りぬけ、密集する兵士の真ん中にジャンプして飛び込むと一人の屈強な黒人兵士を捕まえた。

 即座にロボットのアバラ部分に格納されていた4本のブレードを展開して黒人兵士をホールドし、ブレードを食い込ませる。

 兵士の防弾アーマーを高周波ブレードが切り裂き、皮膚に食い込んで出血、ブレードに血が滴る。


「アハハハハハハハ!!!」


 ロボットは黒人兵士の手ごと零式熱小銃を握って周囲に向かって乱射する。


「ぎゃぁ!」

「ぐわ!」

「た、たす……」


 次々と兵士たちが殺されていく。

 ロボットと人質の黒人兵士は大勢の兵士達の中心に居るため、周りの兵士は反撃しようにも躊躇していた。

 ロボットに銃口を向けると人質の黒人だけでなく、その後ろには味方が居るためである。

 それを計算し尽くしているロボットは周囲の兵士をまばらに次々と仕留めていった。

 パワードスーツに乗った兵士が慌てて上部のキャノンをアクティブにしてロボットを狙い射撃を試みる。

 しかしスクリーンには文字が映り、発砲が出来ない。


(フレンドリー・ファイア警告。生きた味方に危害を加える事はできません)


 イージスガンの防護内での攻撃で、兵士たちはあっという間に壊滅状態となった。

 ロボットのブレードでホールドされた屈曲な黒人兵士は涙をだしながら泣き叫ぶ。


「た、助けてくれぇ! いてぇよお!」


 ロボットは黒人兵士に恐ろしい骸骨のような顔を向けると命令した。


「小銃に徹甲弾カートリッジ4つをフルチャージしろ」

「わ、分かったよ……」


 黒人兵士は自分の手ごとロボットに握られている小銃に4つの新品カートリッジを装着した。

 再びロボットが命令する。


「ラピッドモードへチェンジしろ」

「するよ、するから助けてくれぇ」


 黒人兵士は片手を銃の側面のカメラに見える位置に動かしてハンドシグナルを行った。


(ハンドシグナル・トランスレーション完了。ラピッドモードにチェンジします)


 ロボットはパワードスーツに乗った一人の兵士へ銃口を向ける。

 兵士は慌ててイージスガン2丁をアクティブにして備えた。

 ロボットの持つ小銃から猛烈な勢いで弾丸の連射が始まった。

 猛烈な反動で黒人兵士の手が押しつぶされて血が滴り落ちて悶えている。

 イージスガンによって空中で弾丸が撃墜されて火花が空中に散っているように見えたがパイロットの兵士は冷や汗を流していた。


(警告、イージスガンの迎撃キャパシティの50%を超えました)

(警告、イージスガンの迎撃キャパシティの80%を超えました)

(警告、イージスガンの迎撃キャパシティを超えました)


 パイロットの眼の前の防弾ガラスにガンッと一発の銃弾が命中し、ヒビが入った。

 次々と連続して命中しヒビが広がる。


「や、やべ……ゴフっ」


 パワードスーツのコクピットのガラスは内部で炸裂した肉と血がベッタリと付着して曇った。


「このヘタレがっ!」

 この小隊の隊長と思われる強面の兵士がパワードスーツのハッチを開けて生身を晒すと、懐から拳銃を取り出し、ロボットを射撃した。

 だが命中したのは人質の黒人兵士の額である。

 即座にハッチを閉じるとキャノンを構える。

 ディスプレイからフレンドリーファイア警告が消えた。

 ロボットは黒人兵士の死亡に気がつくと即座に近くの武器を拾ってバックステップでジャンプする。

 直後に黒人兵士の死体をキャノンが粉砕した。


「アハハハハハ!」


 ロボットは笑いながら右に左に回避しつつビルの中へと飛び込んで逃げる。

 パワードスーツに乗った兵士も怒りを露わにして追いかけた。

 無線の音声がコクピットに響く。


「ロバーツ軍曹! 単独行動はやめろ、一旦引いて立て直すんだ!」


 兵士は無視してビルの入り口をキャノンで破壊するとパワードスーツのまま駆け込む。

 生き残っていた他のパワードスーツも後に続いた。

 だが彼らが見たのは携帯ミサイルランチャーを地面に撃った衝撃を利用して大ジャンプを行い、吹き抜けの上層階へ飛び移って逃げるロボットの後ろ姿であった。


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