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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT7 ドレッド・ベレーとキャシー・パイロ
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第二話「赤目のノア」

 カムイはマキを連れてスラムの廃工場から地下へと続くメンテナンス用通路を降りていた。

 そしていくつものケーブルが左右の壁に束ねられた通路を歩き、流れる水路の上にかかる金属製の通路を渡る。

 3時間は迷路状の地下を彷徨っていた。


「地下は広大なんですね。今まで私が過ごしてきた世界の足元にこんな世界があるなんて想像すらしていませんでした」

「だから隠れられる人々もいるのさ。気を付けろよ? 一人で迷ったら脱出出来ずに死ぬ。南米のジャングルと同じだね」


「私はマッピング記憶能力と体内ジャイロ装置を持っているので迷いません」

「そうだったな……。俺は大変だよ。一度死にかけた」


 カムイは何度もインフォメーショングラスで投影した立体マップを確認しながら進む。

 そしてついに古い地下鉄駅の跡地のような場所へと出る。

 ドラム缶でゴミを燃やしながら暖を取る人々がちらほら居た。


「ここらへんが『訳有り逃亡者の居住区』。そこらに居る人々は穏やかで理性的な人間ばかりだ。

 だがそれはアンダーワールドでは異質でもある。

 他のエリアには本物の凶悪犯罪者も沢山居るから気を許すなよ?」


 カムイは地下鉄駅の階段を上り、廃墟のようにコンクリートの破片があちこちに落ちた通路を抜け、通路の一角にある鉄の扉を開けた。

 扉の先にはいくつものコンテナが並ぶ、巨大な地下倉庫のような空間が広がっていた。

 一番奥にはパルスレーザーライフルを構えた二人の歩哨が立っている。

 カムイは二人に近づいた。


「俺はカムイ、この娘はマキだ。話は通してあるはずだ。赤目のノアに会いたい」


 歩哨の一人が片手をインフォメーショングラスに添えて空中でARディスプレイを操作し、消音システムで外へ漏れる音を消しながら誰かと会話した。

 そしてカムイに向き直る。


「いいだろう。付いて来い」


 カムイとマキは歩哨の案内でさらに奥へと続く通路を進む。

 守衛や防衛ロボットが待ち構える広いフロアと上へ続く細いスロープがらせん状にしばらく続く。

 まるで立体駐車場のような構造である。

 そして3周ほどした後、歩哨に従って二重構造の自動ドアを潜って応接間のような場所へとたどり着いた。


「そこで座れ」


 大きな机に向かうソファーにカムイとマキは座った。

 しばらくすると奥の扉が開き、一人の男が歩み出る。

 身長は170cmほど、灰色の癖のついた髪の毛で、両目はルビーのように赤く輝く人工眼球がはめ込まれている。

 ノア・ウッドである。

 ノアはカムイとマキに向き合うように椅子に座った。


「ようこそ、『訳有り逃亡者の居住区』へ。私がここを統制しているノア・ウッドだ」

「カムイです」

「マキです」


 ノアはマキの方を観察する。


「この娘がマキか。なるほど。人間と見分けが付かないな。

 手配は完了済みだ。

 君の住む場所も既に用意してある。

 君はいまからここの一員であり、我々の家族だ。

 良いね?」

「はい、よろしくお願いします」


「ミスター・カムイ。ここまでの案内ご苦労だった。

 マキは我々が責任を持って預かろう。

 ところで私はマキと二人で話がしたいのだが、失礼だがしばらく席を外して貰えないかね?

 部下に休憩室に案内させよう。

 ドリンクを自由に飲んでくつろいでくれ給え」

「…………分かった。よろしく頼む。マキ、後でまた会おう」

「はい」


 カムイはノアの手下に案内されて部屋を出た。

 ノアがマキに向き直る。


「君はアンダーワールドのレジスタンスのリーダー、カイの記憶を持っていると聞いたが本当かね?」

「はい。死後数時間経過してあちこちが損傷したブレインスキャンのデジタル情報です」


「P-Xを知っているかな?」

「はい。ボルガ博士の開発した軍用ソフトウェアです。ノアさんが……ご興味がおありだと伺っています」


「それなら話が早い。私にはどうしてもそれが必要なのだよ。カイの記憶からその在り処を探ることは出来るかね?」


 マキは自分の胸に手を当てて目を閉じた。

 カイの記憶映像の断片が浮かぶ。


 コンテナがいくつも並ぶ広場で両手を上げて跪くノア・ウッド。

 カイは拳銃を構え、ノアの額に押し当てていた。

 カイの周囲には武装した仲間たちが居る。


「メトロ17地区の住民をどこへやった? 答えによっては容赦しない」

「落ち着け。銃を降ろせ」


 周囲のコンテナの扉が開き、女子供を含む人々がカイとノアの周囲に駆け寄る。

 年配の女性がカイの拳銃に手をあてて上へとゆっくりそらし、子供がノアを庇う。


「カイ様! 早まってはいけません。この人は私達を助けてくれたのです!」


 カイは出てきた人々を見回し、拳銃を収めた。

 ノアが胸をなでおろしながら言う。


「メトロ17地区で今日、『狩り』が行われるという情報を偶然入手したのだ。

 担当するのはフリーで虐殺を楽しむサイコパスのカップル。

 『ドレッド・ベレー』と『キャシー・パイロ』だ。

 我々は先回りしてメトロ17地区の住人を保護したのだ」

「悪かった。誤解していたよ。人々を助けてくれてありがとう。

 貴方とならば共に歩めそうだ」



 目を開けたマキはノアに語る。


「ノアさん。貴方とならば共に歩めそうです」

「…………ほぅ。その言葉を知っているものは少ない。まして地上には居ない。

 ではP-Xの場所は分かるのか?」


「記憶が断片化していて、偶然脈絡無く思い出すか、その場所、印象の深い人物を目の前にした刺激で関連した出来事を思い出せるみたいです。

 P-Xについてはまだ分かりません。」

「なるほど。分かった。そして君には仕事が与えられる」


「カムイさんから聞きました。自警団ですね?」

「そうだ。後で部下に案内させよう。どうもここ数日自警団の連中が慌ただしい動きをしている。

 いきなり大仕事になるかも知れないが覚悟しておけよ」

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