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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT6 クラブ音音襲撃事件
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第九話「曼荼羅システム搭載アンドロイド、流華」

遊里ゆうり、一刻を争います。急いで準備をお願いします」

「わ、分かったわよ……、まったくこれじゃ立場が逆だわ……」


 遊里ゆうりと呼ばれた巫女は神社の傍にある建物、拝殿の中へと駆け込んだ。

 流華るかと呼ばれたロボットも拝殿のほうへと歩き始めて足を止めた。

 そして振り向いてマキを呼ぶ。


「マキ、付いて来なさい」

「あの……貴方は一体……、オペって何ですか?」


 ロボットは自分の首に人差し指を当てた。


「貴方には今、悪しき者の体の一部が寄生しています。取り除かなければ彼らの仲間を呼び続けるでしょう」


 マキは確かにクラブ音音でアントドローンから発射された何かを首に受けていた。

 合理的に説明のつかない状況、このロボットを信じてよいのか分からず、マキは躊躇する。

 その様子を見たロボットはさらに語り掛ける。


「私を信じなさい。もしも迷っているならば萎縮して頑固になるのは過ちです。

 時には明らかな答えや判断材料が無い事もあるでしょう。

 そういう時は数千年、数万年も積み重ねて貴方を生かして来た、貴方の心に委ねて相手を判断しなさい」


 マキはしばらく黙りこみ、自分の胸に手を当てて目を閉じる。

 そして再び目の前の、初めて出会うロボットを見た。


「私は……何が真実で何が幻想か……判断が付かなくなってきました」

「人間は自分が確かに科学的に合理的に裏付けの取れた真実を見て、聞いて、感じている。

 そう信じ込んで、そういう幻想を見るものです。

 所詮は肉のセンサーが受け取った真偽の定かでない情報に過ぎません。

 貴方は今正しく感じているのです。

 私が貴方の敵か味方か判断しなさい。

 そして味方だと思ったならば付いて来なさい」


 ロボットは拝殿のほうをむくと振り向きもせず速足で進み始めた。

 しばらく沈黙したマキは彼女の後を追って駆け寄る。



 拝殿の中に急遽用意された寝台の上にマキは仰向けになって横たわっていた。

 流華るかが片手に持ったハサミ型の器具で切り開かれたマキの喉を押し広げて固定し、片手を横にいる遊里ゆうりに差し出す。


「マイクロレーザーメスを」


 遊里からメスを受け取り、マキの喉元に走るいくつもの特殊なケーブル類をかき分けて回路の配線を避けながら基盤の一部をレーザーで切断する。


「ピンセットを」


 流華はピンセットでマキの喉から小さな集積回路のようなものを取り出した。

 遊里が尋ねる。


「流華、貴方、エンジニアロボじゃないわよね。そんなソフトウェア入ってないわよね」

「ええ、そんなものは不要です。……見えますか? これが貴方と……私達の敵の手先の姿です」


 流華はピンセットでつまんだ小さな集積回路をマキに見せる。

 しばらくただの部品のように見えていた集積回路だが、部品全体に波のようなものが2、3回走ったあと、並んだ金属のピンがモゾモゾと動き始めた。


「なにこれ……部品にしか見えなかったけど擬態してたの?」

「寄生型スパイドローン……軍事知識としては知っていますが、私も初めて見ました」

「ではこれを祓います」


 流華は壁のパネルを操作して窓を開け、ピンセットでつまんだドローンを窓の外へと放り投げた。

 突如飛び降りてきたカラスがくちばしを開いてそれをキャッチし、飲み込んで飛び去る。

 そのままカラスは山を下りてはるか遠くへと飛び去った。



 同時刻、ハンニバルズの私服部隊を指揮する司令官がインフォメーショングラスを確認していた。

 インフォメーショングラスには周辺の地図が映し出されている。

 そして光点が白蓮神社の位置で点滅していた。

 司令官は喉元のマイクを操作してチームへ命令を出す。


「ターゲットはあの山の頂上の白蓮神社に居る。こんどは逃げられないように包囲しろ。

 急げ……いや……待て。

 西の方へ移動している。

 ……凄まじいスピードだ。

 ……山を下りたぞ。何か乗り物を手に入れたらしい。ホバーヘリ、位置を同期する。

 ターゲットを追え! 今すぐだ!」




 切開されていた喉が塞がれてマキは寝台の上で上半身を起こした。

 そして二人に尋ねた。


「貴方達は一体何者ですか? どうして初めて会った私を助けてくれたのですか?」

「私はこの白蓮神社の25代目の巫女。遥か昔の先祖からこの神社を守り続けて来た由緒正しき血統の巫女、遊里ゆうりよ。

 そしてこのロボットは流華るか


「特殊なロボットなのでしょうか?」


「特殊……まぁ特殊ね。もともとはメイドロボなんだけど、AIには曼荼羅システムを搭載しているの」

「曼荼羅システム?」


「占いを知ってるわよね? トランプを使ったり、サイコロやコインを使ったり……」

「はい。自然界のランダム要素を利用して人間の意思決定を補助する、世界各地の人間が持つ古い風習ですね」


「曼荼羅システムはコンピューターの中で無数のサイコロを振って、そこから意味のある物事を導き出してしゃべらせるソフトウェアなの。

 古代の中国の僧侶が曼荼羅と呼ばれる魔法陣に物を落っことして占ったのが由来らしいわ。

 オカルト科学と言われているけど、強い霊力を持つ人間が傍に居る状態だと人知を超えた予測や判断をすると言われているわ。

 世界各国の要人が密かに利用していると噂されているのよ」

「その曼荼羅システムが私に取り付いた寄生型スパイドローンを見抜いて手術し、摘出したのですか?」


「はぁ……ぶっちゃけ、流華はマジモンなのよ。天気どころか客人到来や事件の発生を当てまくるし、何千年も生きた神様みたいなこと言うから……なんか私と主従関係が入れ替わりがちなのよね……」

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