表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT6 クラブ音音襲撃事件
29/151

第二話「ナンバーワンの情報屋ティアラ」

 カムイはソファーにふんぞり返ると、グラスを手に取って一気飲みした。

 左右のホステスははしゃぐ。


「まぁ、凄ーい」

「豪快な飲みっぷりですわぁ」


 カムイは空になったグラスを置いて尋ねる。


「ところで今日はティアラちゃん居る?」

「はぁ~~。まーたティアラちゃんですかぁ……」

「ティアラちゃーーん! ご指名ですよーー!」」


 電脳アイドルのコスプレをしたティアラが一瞬こっちを見る。

 そして隣のホステスにこちらを指して何かを囁いた。

 隣にいたホステスは頷くとカムイの居るテーブルの前へと歩み寄る。


「申し訳ございません。ティアラは今接客中ですので、あと30分ほどお待ち頂けますか?」

「オーケー」


 ティアラのヘルプと思われるホステスは、カムイの左右に座るホステスに話す。


「ほーら、あなた達、そこをどいて。シッ、シッ」

「何この酷い扱い」

「ヘルプしたいならティアラ派へ入る事ね」

「私たちは好きなようにやりたいの。いきましょ?」


 カムイの左右に座っていたホステスは立ち上がって去っていく。

 代わりにティアラのヘルプの女性がカムイの隣に座った。


「ティアラがここに来るまでの間お相手させていただきます。隣の女性の方は初めて見ますわね?」

「俺の連れだ。名前はマキ、マキちゃん、彼女はちぃさんだ」

「まぁ、可愛いお連れさんですね。」


 フロアが一瞬ブラックアウトし、フロアの中央にあるステージにスポットライトが当たる。

 そして裏舞台から着ぐるみを着た3人のホステスが現れて中央のステージで踊り始めた。

 動きにくい着ぐるみで激しいダンスを踊っているせいか、一人が素で転ぶ。

 周囲から笑いが起こった。


 マキはしばらくそのダンスを見ていたが、カムイのほうを振り向いて微笑みながら言った。


「ここは面白い所ですね」

「はっはっは」

「カムイさん、何か飲み物を注文なさいますか?」

「この店で最高のボトルを、4本貰おうか」


 ちぃは驚いた顔でカムイを見つめる。


「そ、そんな……二人で飲むにしても二つで十分ですよぉ」

「いいや、2本と2本、4本だ」

「二つで十分ですよぉ」

「あと、うどんをくれ」

「在庫を確認してきますので少々お待ちください」


 ちぃは席を立ち、ティアラの所へと戻るとヒソヒソと何かを話す。

 ティアラは応対していた客に申し訳なさそうに何かを告げると舞台裏へと消える。

 マキがカムイに尋ねた。


「うどんなんてメニューに有りませんよ?」

「あのやり取りが情報売買依頼の合図なんだよ。ボトル4本は依頼料、兼店への迷惑料の最低ラインさ。高いが……彼女はネオ東京で最高の情報屋だからね」


 しばらくしてちぃがカムイのテーブルへ歩いて戻ってくる。


「どうぞこちらへ、VIPループへご案内致します」


 カムイとマキはちぃの後に続いて、ステージのあるフロアから自動ドアを通って廊下へと出た。

 そして廊下の端にある巨大な鏡張りの壁にちぃが手のひらを当てると静かに壁が開き、廊下が続く。

 その廊下の右手に防弾仕様の重厚な扉があり、二人の屈強な黒服の男が仁王像のように直立して警備していた。

 ちぃが歩み寄ると一人の男がお辞儀してスイッチを押し、扉を開ける。

 カムイとマキもちぃに続いてその部屋へと入った。


「ようこそカムイさん。そして絶賛指名手配中のアンドロイド、マキさん」


 大きな部屋の中央のテーブルの向かいのソファにティアラが足を組んで両手を組んで座り、笑顔で二人を出迎えた。

 カムイとマキは向き合ったソファに座り、ちぃはティアラの隣に両手をそろえて組んで立つ。


「さすがに一目で見抜かれたか」

「安心してね。私は商売に関係のないものは『見なかった』事にするわ。

 ところでご用件は何かしら?」


「レジスタンスと接触したい。つい先日、リーダーのカイが射殺されたところだ」

「残念だけど、私の裏稼業の客層は幅広いの。中には政府や警察の上層部の方も居る。そんな私にレジスタンスは気を許して好意的に接してくれないわ。

 私にもその方面へのパイプは無いのよ」


「では何か、ヒントになるような情報は無いか?」

「レジスタンスのリーダー、カイがタカマガハラで射殺されたとき、同時に侵入していた幹部のワンという男と、キットと呼ばれる少年が今は主導しているそうよ」


 ティアラが手元の機器を操作すると、スクリーンにワンとキットの全身像と顔のアップが映し出されて回転し始めた。


「カイは一体何をしに、この国で最も侵入が困難かつ危険なタカマガハラに強行突入したんだ?」

「そこから先は追加料金が必要ね」


「金はもう無い。……だがあんたは珍しい映像のコレクターだと聞いたが?」

「内容によるわね。私が興味あるのは社会的、歴史的に重大でセンセーショナルな、誰も知らない映像よ。以前入手して見飽きてマスコミに流したこの映像のようにね」


 ティアラは手元の機器を操作する。

 スクリーンには古びた工場の肉解体ルームで二人の全裸の女性が怯え、シザースカタールと呼ばれる中東の武器を持った男がこちらを向く映像が映った。

 カメラ映像を撮影している男は銃を構えながら叫ぶ。


『オペレータ。こちらバウンティハンター登録番号1A-0089、ビースト連続猟奇殺人事件の容疑者逮捕を行う。

 ウォッチャーとしての対応を頼む』


 カムイは笑いながら言った。


「マスコミに流したのはあんただったのか。おかげで渋っていた国がようやく怨霊とバウンティハンターの存在を認めてくれた、まさに歴史的な映像になったな。

 それじゃぁ、この映像にも興味を持ってもらえるかな?」


 カムイはポケットから映像メモリースティックを取り出すとスイッチを押した。

 映像の中のカムイは必死で走っており、扉を潜るとお札とロープを使った結界が周囲を取り囲んでいる。

 その外側では大勢の警官と、青い道士服を着た老人が待ち構えていた。

 カムイが結界のロープを潜って振り返ると、立ち込める煙の中に巨大な蜘蛛の姿がぼんやりと浮かぶ。

 そしてロープが引きちぎれんばかりに震え、怪物の恐ろしい咆哮が響き渡った。

 興味深そうに見ていたティアラは言った。


「カムイさんがこの符吏(フーリー)道士と共闘をしたのは、鬼鳴村の児童連続失踪事件でしたよね? 犯人の仕掛けた爆発物で警官30名死亡。

 Sランク怨霊の牛鬼を倒したとされる」

「怨霊の部分は報道されていないのに流石だね。この捜査と討伐の映像で、レジスタンスに関する追加情報+アンダーワールドの『訳あり逃亡者の居住区画』へマキを逃す手配をしてほしい」


「興味深いけど、もはや怨霊の存在は知れ渡り、バウンティハンターも増えて珍しいものでは無くなったのよ。これでは少し足りないわね」

「ティアラさん。このような映像ではどうですか?」


 マキがツインテールに隠されたマルチ通信ケーブルを機材に刺す。

 デバイスドライバが無い状態でも、この時代の一般規格のスロットには対応しているのである。

 映像にはマキがアイアン・エンジェルと激闘を繰り広げるシーンが一瞬流れ、停止した。

 ティアラは映像に釘付けになって食い入るように見ていたが興奮しながら向き直る。


「アイアン・エンジェル事件……」


 マキはさらに別の映像を流す。

 全翼型旅客機FJ212のガラスを割って強化機甲兵が降下し、ボルガ博士を拉致して帰還、その後猛攻撃の始まる前で停止した。


「全翼旅客機の空中爆発事件……」

「なんだなんだ? 一つ目はよく分からないが二つ目は只事ではないぞ」

「ちぃ、このお二方にドリンクと恵比寿屋の茶菓子をお出しして」

「かしこまりました」


 ティアラは目を輝かせながらカムイとマキに向き直る。


「映像、全て買い取らせていただきます。レジスタンスに関しては私が持っている全ての情報を提供しましょう。

 今後2か月間はボトルは私の驕りです。

 カムイさん、アンダーワールドの『訳あり逃亡者の居住区画』へ逃がすのはマキさん一人ですね?

 それも手配しましょう。」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ