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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT1 アイアン・エンジェル事件
2/151

第一話「市街地で突如産まれた殺戮サイボーグ」

 西暦2115年、ここはネオ東京。

 22世紀半ばに連鎖的に発生した世界大戦に日本も巻き込まれ、旧東京はダーティーボムによって人の踏み入れることのない広大なコンクリートの森と化した。

 結果首都が現在の大田区~川崎市周辺へと移動し、ネオ東京と呼ばれるようになったのである。

 あちこちにアルコロジーと呼ばれる住居区画、商業区画、工業区画を内部にいくつも持つ高度2000~3000メートルほどのメガ・ビルディングが建ち、反重力デバイスによって空を飛ぶ車が空中に列をなす。

 だが事件は社会のトップ階層の人々が住むその場所ではなく、中流層の住むビル街で起こっていた。


 高層ビルと高層ビルの間を挟む道路をダチョウのような形の交通整理ロボットが何十と並んで人々の通行を制限する。

 その内部では電磁自動車のパトカーが道路中央に停車しており、警官達が遮蔽物に身を隠しながら零式熱小銃を構えていた。


「このエリアの住人の避難誘導は済んだか?」

「今確認しています……、登録チップ情報によるとまだセクター2の山岸マンション周辺に人が残っているようです。」

「あそこか……、たしかアメリカからの難民がいっぱい住んでいる場所だな……。俺英語が……」

「私が行ってきましょう」

「助かるよ、エリオット」


 金髪で青い目の警官がビルとビルの隙間の路地へとスタンドバイクに乗って走り、消えていった。

 この時代では軍も警察も両足に電動式のドーナツのような形のタイヤを履いて横向きに移動する超小型携帯電動バイクのスタンドバイクを良く使用する。

 警官は前方注意を怠らずに、首にかけている通信デバイスを操作してビルを挟んだ反対側の警官チームに連絡を取る。


「ターゲットはセクター3のAZグリッドを経由してそちら側へ移動した。

 注意せよ! 既に無差別に23人の民間人と5人の警官を殺害し、サブマシンガンを奪っている。

 遭遇すれば即座に攻撃を受けるだろう」

「了解。こちら5名とも迎撃体制が完了している」

「やれやれ、殺人サイボーグの相手するのは今月で2件目だぜ。こんどは何処のマフィアだ……」


 反対側のビル陰では身長2メートルほどの相撲取りのような体格のロボットがサブマシンガンを構えて様子を伺っていた。

 ロボットは剥き出しの目玉の付いた骸骨のような顔をしており、塗装はまったくされていない。

 全身からは無理やり引きちぎったようなケーブルが多数露出していた。

 ロボットは素早くビルの角から顔を出し、即座に引っ込める。

 即座に無数の銃弾がロボットの顔をかすめて、ビルの壁と背後の炎上した車を穴だらけにした。


「ターゲット確認! 全員次は逃すな!」


 警官二人が腰に下げた誘導手榴弾を取り出した。

 片目に付けたバイザーを確認し、ハンドシグナルで誘導手榴弾へのプログラムを完了すると二人同時に手榴弾を放り投げる。

 2個の手榴弾は空中を飛び上がり、重力に従った下降に入る前にイオンスラスターを噴射するウィングを展開した。

 そのまま浮遊しながらロボットの隠れるビルの角へと向かう。


 ロボットは壊れた車のガラスの反射で誘導手榴弾の接近を確認していた。

 そして地面に倒れている警察特殊部隊員の死体のそばで屈むと閃光手榴弾を奪い取る。

 そして閃光手榴弾のスイッチをアクティブにするとビルの角から放り投げた。

 手榴弾はカランコロンと転がる。


「気を付けろ! フラッシュだ!」


 警官隊は全員バリケードやポリスカーに顔を隠す。

 閃光手榴弾の炸裂音が響き渡った。


「今だ! 敵を逃すな!」


 警官隊は全員遮蔽物から顔を出し、小銃を構えた。

 警官隊が銃を構え、注目するビル角近くの地面に転がるのは2個目の閃光手榴弾。


「ぐわっ!」

「ちきしょう!」


 計算されたタイミングで2個目の閃光手榴弾が炸裂し、警官隊は全員視力を一時的に失った。

 角から飛び出したロボットは両手に構えたサブマシンガンを正確に射撃する。

 空中に浮遊する誘導手榴弾2個を正確に迎撃して爆発させた後、その体格に似合わない素早さで警官達のほうへ駆け寄った。

 ポリスカーを半分潰しながら上に飛び乗ると、視界内に居た警官5名の頭部にきっちり2発ずつ弾丸を当てて射殺する。

 警官5名はあっという間に全滅した。

 

「どうした? 応答しろ佐藤! 山下、そっちはどうなっているんだ? おい! 誰か?」


 怒鳴りこむように通信デバイスに語りかける警官のもとにエリオットがスタンドバイクを走らせて戻る。

「住民の避難誘導は完了しました」

「よし、これからポリスカーで突入するぞ。全員乗り込め!」

「隊長……本当に登録チップ情報の人間の誘導だけでいいのでしょうか?

 ……誘導した中には登録の無い人間も……」

「いいから早く乗り込め! 佐藤達が危険な状態だ、今直ぐ向かうぞ!」


 ポリスカーは急発進する。

 ポリスカーは一般車とは違い防弾仕様になっている。

 さらにこの車両は特別に上部にリモート操作の機関砲が備え付けてあり、

 車内中央の座席に座ったエリオットが頭部を覆うVRデバイスを付けてコントローラーで操作している。

 先頭の操縦席の警官が機関砲操作している警官に叫ぶ。


「エリオット! ターゲットを見つけたら即座に撃て。」

「ラジャー」

「他の者も銃をしっかり持って固定具を忘れるな。場合によっては車でそのまま突っ込む」


 ポリスカーはロボットが居たビルの隙間を強引の通り、落ちているゴミと壊れた車に追突して押し出しながら道路へと飛び出した。


「ターゲットを発見したら直ぐ教えろ!」

「今はまだ見当たりません」

「ポリスカーを発見! 識別コード、F1532、佐藤達の車です!」


 ポリスカーは全滅した警官達のそばに停車すると、エリオット一人を残して警官達が外に出る。

 即座に小銃を構えて周囲を警戒する。

 エリオットの操作するカメラ付き機関砲はグルグル回転して周囲を見回している。


「佐藤の死体を確認!」

「こっちでは山下も確認!」

「何てことだ……全員死んでる……」


 突如窓ガラスが割れる音が響き、破片が周囲に降り注ぐ。

 警官達は本能的に顔を伏せて目を手で覆って破片から身を守った。

 ポリスカーの真上にドシンと音を立ててロボットが着地し、天井を凹ませる。

 機関砲を片手でむしり取って破壊すると同時に、もう片方の手にもつ小銃で警官達を正確に狙撃する。


「ぐっ!」

「ゴフッ!」

「あぁ!」


 警官達はそれぞれ走って逃げようとしたが、一人一秒のペースでリズミカルに頭部を狙撃されて倒れた。

 車内のエリオットはようやく状況を把握し、真っ暗闇となったVRデバイスを外す。

 そして座席に置いてあった小銃を取り出すと上向きに構えながらポリスカーから飛び出した。

 エリオットが最後に見たのはロボットがバックステップで車体から飛び退きながらジャンプする姿である。

 その両手に構えるのは二丁の小銃。

 ロボットの目玉と右手の小銃の銃口がこちらに向けられ、発火するのをなす術無くスローモーションで眺めていた。

 エリオットの持つ銃は未だにロボットが飛び退く前の位置を狙っている。

 反応速度で人間が勝てる相手では無い。

 そしてブラックアウトする。

 エリオットは地面に着地するより先に頭を撃ち抜かれて死んだ。


 ロボットは動く者が居なくなったのを確認すると空を向いて話す。


「パパ……パパ……武装した警官10人をキルしたよ! 褒めてよパパ!

 こんなのは楽勝よ? パパ?」


 しばらく周囲を見回すと機械音混じりの歪みのある音声で笑い声を上げながら次の獲物を探しに向かった。


「ハッハ! ハァーーッハ! もっと沢山の標的を! もっと強い標的を! 足りないよ! まだまだ足りないよ! 今日は1万人をキルするよ! そしたら褒めてくれるでしょ? パパ!」


 その頃、警察署のオペレーションルームでは署長がディスプレイを見て肩を落としていた。

 ディスプレイでは警官隊のバイタルサインが全て直線に変わって動いていない。


「陸軍省の岩木大佐にコールを……緊急ラインだ」

「陸軍省へ緊急ラインでコールします…………コール中です……」

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