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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT3 レジスタンス組織
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第四話「アンダーワールド」

 ネオ東京の高層ビル密集地帯にある築50年の高層マンション。

 その一階の出入り口、そして地下駐車場から車道へ抜ける地下道を黒塗りの車が取り囲むように何台も停車していた。

 黒服の男が入り口の窓口で管理人と口論をしている。


「何を言ってるんだ! いきなり来た部外者を建物に入れるわけにはいかないっ!

 ちゃんと面会者に話を通すのが筋だろっ!」

「貴様、後悔することになるぞ」

「如月さんにインターフォンで聞けばいいだけだろう。いいよ私が今からきいてみよう」

「黙ってここを通せ。これが最後の通告だ」

「無茶言うな。警察を呼ぶぞ」


 口論をしていた黒服の男は後ろに居た十数人の仲間に合図を送った。

 全員が手にしていたスーツケースを開くと中からサブマシンガンを取り出し、いきなり入り口のガラスのドアの周辺に発砲する。


「うわぁぁ! な、何しやがる! 警察や警備会社の人間が駆けつけるぞ」

「そうだな。今日の夜辺りにな」


 サブマシンガンを持った黒服の男達がマンションの中へとなだれ込んだ。

 そのマンションの20階では老婆がホログラムデバイスで通話をしていた。

 この老婆はユリカの母親である。

 彼女は卵子の保管サービスを利用し、人工子宮を使って一人っ子のユリカを高齢で授かった。

 その為見た目は老人とその孫ほどの歳の差のある親子だがこの時代では珍しくない。


「ママ? 今直ぐバイクに乗った白髪の女の子が迎えに行くわっ!

 貴重品を纏めてその女の子に付いて逃げて!」

「ユリカ! 大丈夫かい? 良かった、隣りにいるカムイさんに助けてもらったんだね?

 ママ心配で夜も眠れなかったんだよ?」

「ママ! 時間が無いの! 早く準備をしてよっ!」

「分かったけど、その前に説明を……」


 突如部屋の外の廊下で派手にガラスの割れる音が響いた。


「あら? 何かしら? ガラスの割れる音が」

「ママっ! お願いだから言うことを聞いてよぉ! 資産管理デバイスだけでも早く手に持って!」

「わかったわよ……ちょっと外を見てくるわね」


 老婆は戸棚の上からブローチ型のデバイスをとって手につけると部屋のドアを開けて外を覗いた。

 廊下の先からバイクが真っ直ぐこちらに走ってくる。

 そのバイクには白髪の少女が身をかがめて乗っていた。

 バイクは老婆の前で停止し、白髪の少女は部屋番号を確認して老婆に向き直る。


「如月ユリカの母親、如月加代さんですね? 僕はボウ。

 さぁ、早く後ろへ乗って。時間が無い」

「ユリカが言っていた子かい……こんな場所にどうやってバイクで……」


 狼狽えつつ老婆はボウの後ろに掴まってバイクにまたがる。

 20メートルほど前のエレベーターが開き、サブマシンガンを持った黒服が数人飛び出した。

 こちらを見てサブマシンガンを構える。


「しっかり掴まって!」


 ボウは改造バイクに備え付けたイオンブースターを噴射して急加速して突き進む。

 あわや黒服を轢き殺すというところで、黒服たちは飛びのいて床に転ぶ。

 バイクはそのまま突き進んでフレームに内蔵された人工筋肉がしなり、飛び上がってガラス窓を突き破ってビルの外へと飛び出した。


「ひぃぃぃぃっ!」


 老婆は必死でボウにしがみつく。

 バイクは向き合った別のビルへ向かって空中を突き進み、大きな窓ガラスを音を立てて突き破った。

 飛び込んだオフィスで慌てふためくOLや会社員達を無視してバイクは部屋を奥へと突き進む。


 一方、カムイはユカリと共にカイ達レジスタンスの持つ潜水艦の中に居た。

 レジスタンス達は海底洞窟の中をこれで進んできたようである。

 潜水艦の中の部屋には見たことのない機材が所狭しと並ぶ。

 最後部の部屋には救出された女性達が寄り添っていぎゅうぎゅう詰めになっていた。

 レジスタンスの仲間と思われる人々が介抱して回る。

 司令室でカイがカムイとユリカに話しかける。


「このまま海を進んでネオ東京に戻る。

 そこから港近くに点在する海水口を通ってアンダーワールドへと向かう。

 到着までは一日掛かるだろう。

 潜水艦内は狭苦しいだろうが我慢してくれ」

「こうやって移動してたのか。警察や警備システムに引っかからないわけだな」

「母は……母は無事でしょうか?」

「どうやら間に合ったようだね」


 カイは送られてきたホログラム静止映像をユリカに映してみせた。

 ボウの自撮り映像である。

 笑顔のボウの後ろに必死に掴まる老婆もこちらを向いている。


「おいおい……この背景……隣に映ってる馬鹿でかいタイヤ……最高時速300キロで走るスーパートレーラー専用の高速道路だぞ。

 一般車は進入禁止、人間のドライバーは非推奨だ。

 そこをバイクか。

 加代さん大変だな。はっはっは」


 カムイは思わず笑う。

 カイは再び話し始めた。


「ところでカムイさん。あんたもアンダーワールドへ着いて来るのかい?」

「依頼人達の安全をこの目で見届けるまではね。

 心配するな。あんた達のことをどうこうする気は無いさ。

 俺も信義を持って動いているからね」

「……そうか。まぁいいさ」

「カイ、見てよ、人魚が居るよ。はっははグロいなぁ……」


 潜水艦の半透過ガラスの壁面、キットが指差す方向には人間ほどの大きさのリュウグウノツカイのような深海魚が泳いでいた。

 人間のような手足と頭が付いている。


「海の中を眺めるのは初めてだが……まさに魔境だな」

「環境破壊の影響なのかねぇ。稀に奇形の巨大な首長竜みたいなのが泳いでたりするよ」


 丸一日の航海の後、潜水艦はネオ東京の港へと近づいた。

 潜水艦は直径数十メートルの海水取り込み口の中へと入っていく。

 カイが説明をする。


「ソリッド・グラウンド・フレーム構想って知ってるかい?」

「聞いたことはあるが、あまり建築技術に興味はないな」

「ドキュメンタリーで一回だけ聞いたような……」

「新しい住人になるユリカさんは知っておくべきだね。

 ソリッド・グラウンド・フレーム構想。略してSGF構想。

 それは大都市の地下を広大で巨大な鉄筋フレームの基礎で埋め尽くすっていう考え方さ」

「基礎?」

「例えば巨大なビルを建築する時、その地下には何十メートル、何百メートルもの杭を、何百本も打ち込んで地下深くの岩盤へ繋がる地盤を作るんだ。

 その上にビルを建てるから簡単には倒壊しない丈夫なビルになるんだよ」

「へぇぇ」

「SGF構想は都市全体の地下を特殊な合金の金属を使って公共施設として、ブロック状の基礎で覆ってしまうという考えさ。

 新たなビルを建造する時は、自力で深くまで杭を打たずに、自分が借り受けた範囲で、その公共の基礎に建物を固定するだけで済む。

 最新素材とコンピューター制御で地震対策は万全。

 簡単にいろんな場所に高層ビルを立て直し出来る。

 規格も共通化される。

 地下の広範囲な基礎全体で重量を支えるからアルコロジーはこの基礎なしに建造出来ない」

「それとアンダーワールドが関係あるの?」


「その地下の基礎は地下十数階ほどにまで伸びて、メンテナンス用、通信ケーブル用、上水道、下水道、海水路などの空間がいっぱいある。

 むしろ隙間だらけなのさ。

 そしてそこに多くの流れ者が住み着くようになった。

 様々な事情で地上の世界で生きられない人々達がね。

 そして今では一つの地下都市と言える程の規模になっているがその存在は黙認されている。

 いや、むしろ隠されているんだよ。

 政府は邪魔になった住人を『人権を無視して』秘密裏に、強制的に、気ままに排除する。

 そんな活動は知られたくないからね」

「それでか。そんな大規模なものの情報が俺にすら噂程度にしか来ない理由」


「地下の岩盤をも人工的に削り、地下の治水が必要になる。

 それで海抜0メートル以下に流れ込む海水の制御用の水路も張り巡らされている。

 我々はそこを潜水艦で移動する」


 潜水艦は巨大な水路の中を進んでいく。

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