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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT3 レジスタンス組織
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第三話「宴の痕跡」

 カムイは銃を構えて前進しながら隣のレジスタンスのリーダーに尋ねた。


「あんた、名前はカイって言うんだっけ? 本人に会えるなんて思っても見なかったよ」

「名前を覚えてくれてて光栄だ。ブロードキャストジャックを繰り返したかいが有ったよ」

「危険を犯してこんな所に襲撃掛ける理由は何だ? 慈善事業か?」

「アンダーワールドの住人が大勢攫われたのさ。

 法的には存在しない人間だからね。

 悪どい人間はやりたい放題さ。

 ……キット! ちょっと来てくれ」


 背後を警戒していた金髪の少年がカイの元に駆け寄る。


「防護シャッターが降ろされてて進めない。開けられないか?」

「……配線を探すよ。ちょっとどいてて」


 キットと呼ばれた少年は頭に乗せていたゴテゴテと無数の機材の付いた望遠ゴーグルをおろして目に当て、幾つものダイヤルやスイッチを弄る。

 そして降りたシャッター周辺の壁や天井を見回した。


「そこだ、ワンさんお願い」


 先ほどガードロボ相手に大立ち回りを見せた武僧が歩み寄り、キットが指差す壁にサイボーグ化した腕で手刀で突きを繰り出す。

 そして壁に突き刺した指先を曲げて強引に壁の表層を引き剥がした。

 中には幾つものケーブルが束になった配線が見える。

 配線を近くで隅々まで確認していたキットは呟く。


「天神シリーズの政府機密用パッケージ『迦楼羅』か。

 ただのマフィアとは思えないセキュリティシステムを使ってるね」


 キットは側頭部に手を当ててカードサイズのカバーを開く。

 中には21世紀にあったUSBメモリのようなものが嵌めこまれていた。

 どうやら脳の一部に改造を施しているようである。

 キットはメモリカートリッジを上に少しスライドさせてから外し、ウェストバッグの中から選んだ別のカートリッジに入れ替えて差し込んだ。

 そしてカバーを閉じる。


「いくぜぃ! 3分ほど待ってな」


 キットは壁の配線をより分けてから迷いなく幾つかのラインにマルチツールから伸ばしたケーブルを固定する。

 そして目が虚空を見た状態で動きを停止した。

 ネットワークダイブを行っているようである。

 1分ほどして眼の前のシャッターが上へと音を立てて開き始めた。

 シャッターは3連の構造になっていたようである。

 全てのシャッターが開くとキットは目を覚まし、機材をウェストバッグに詰め込む。


「良くやったキット。よし、行くぞ」


 カムイとカイ達は本堂3階へと駆け込み、銃口を左右に向けながら構える。

 全裸の女性達が悲鳴を上げて怯え、腰が抜けたようになりながら畳の上を這っていた。


「怖がらなくていい。君達を救出にきた」


 女性達は驚いた顔で振り向く。

 既に黒幕は逃げた後のようである。

 ワンは部屋の奥にあった仏像の前に歩み出て合掌し拝む。

 その時何か違和感を感じたのか周囲を見回し、天井から伸びた4本のパイプを見ると壁を蹴ってジャンプして梁に飛び移り、強化された腕でパイプを捻って噴出を初めていた毒ガスを止めた。

 口封じ用だったようである。

 女性達の中の一人が感激の声を上げた。


「カイ様……カイ様が私達を助けに来てくれたのよ!」

「……カイ様? そう言えば放送ジャックでよく出てた……」

「うっ……うっ……助かったのね……夢みたい……」


 一人の女性のもとに屈みこんでいたキットが振り向いてカイに言う。


「カイ、この人達全員筋力減退する薬物を射たれているよ?

 体力のない人だったらまともに歩くことさえ出来ない。

 それに心臓発作の危険もあるから無理はさせられない。

 司令潜行艇から応援を呼ぼう」


 カイは首にかけていた馬蹄形の通信デバイスを触って会話を始める。

 その時カムイは女性達の中にユリカが居ないのを確認し、最後に座卓の上に載せられた箱を確認していた。

 ユリカが手足を縛られて呻いている。

 カイはナイフで拘束を解くとユリカに言った。


「如月ユリカだな?

 俺はバウンティハンターのカムイ。

 君の母親の依頼で君を救出に来た」

「ウフアァァァ」


 ユリカは安堵で嗚咽しながら訴えた。


「せ、政治家の……民青党の……五十嵐だったわ。

 私は貢物にされたのよ。うっ……うっ……」

「五十嵐? 民青党の幹事長のか?」

「そうよ……絶対に訴えてやる……」

「顔を見たのか?」

「見たどころか私の体を触りまくっていたのよ! あの変態っ!」


 カムイは上を向いてため息をついて黙りこんだ。


「早くここから出して。 こんな所に一秒でも長く居たくないわ」

「残念だが君を家へ返すわけにはいかなくなった……」

「え……? 何故? 私を救出に来たんでしょ!?」

「恐らく君を家へ返せば長くて二日以内に君は殺される。

 警察署の中に居てもね」

「そんなっ! そんな酷い!」


 隣で横から話を聞いていたカイが話しかける。


「ユリカさんだっけ?

 アンダーワールドへ来るかい?

 居心地が良いとは言わないが殺されるよりはマシだろう。

 危険はあるが政府や警察のセキュリティネットワークから隔絶された世界だ。

 潜り込めばそうたやすく見つからない」

「アンダーワールド? ……でも、その前に母に連絡をさせて下さい」


 カムイは黙りこむ。

 カイは即座にその意味を悟った。


「そうか……人質にされるな」

「あぁ……恐らく今日中に……。ユリカが生存したまま籠から解き放たれた瞬間から……五十嵐を目撃していた状況的に……。

 今からどれだけ急いでも間に合わない。

 年老いた都会育ちの母親が一人で逃げ切るのも不可能だろう」

「問題ない。ユリカちゃん、君は母親と一緒にアンダーワールドに住む。

 いいね?」


 ユリカは頷く。

 カイは再び通信デバイスを操作して話し始めた。


「……ボウちゃん? 緊急の仕事だ。

 女性を一人アンダーワールドに逃がしてほしい。……ああ、今直ぐだ。

 住所は……ちょっと待って」


 カイはユリカに近づいてやり取りを始めた。


 

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