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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT3 レジスタンス組織
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第二話「一時的共闘」

 洞窟内の寺院は四角い形に回廊が作られた構造をしており、中央に大きな中庭があった。

 そして入り口から中庭を挟んだ反対側に大きな本堂があり、3階建ての構造になっている。

 本堂の3階は大広間が一つだけ有り、大きな仏像が壁際に鎮座していた。

 そして大勢の全裸の美しい女性たちが壁が見えないほどの列を作って壁際に立ち並び、部屋の中央では周囲に全裸の女性を侍らせたブヨブヨに太った中年男性があぐらをかく。

 この男は現政権を握る民青党の幹事長、五十嵐 聖二である。


「失礼致します」


 部屋の障子を開けてスーツを着た痩せ型の男が現れて五十嵐にお辞儀する。


「遅いぞ安田。わざわざこんな所にまで出向いてるんだ。分かってるだろうな」

「ははっ、五十嵐様のご希望通りの容姿、……それどころかサンプル候補盗撮映像の本人を持ってまいりました」

「持って来たか……大丈夫だろうな?」

「全く問題御座いません。」


 スーツの男が手を二回叩く。

 すぅ~ーっと障子が開き、二人の男が大きな長方形の木箱を抱えて部屋にはいる。

 そして五十嵐の眼の前の座卓に横にして箱を載せると、蓋をとった。

 箱のなかには両手足を縛られて猿ぐつわをされたユリカが足を曲げて入れられている。

 五十嵐を見て驚き、そして怯えて唸る。

 服装は攫われた時のままで丁寧に鞄も添えられているが、ホコリも無いほどにクリーニングされているようである。


「この娘は既に社会から目撃者なく永久に消えた生き人形でございます。

 どうぞ五十嵐様のお好きなようにお楽しみ下さいませ。

 処分が必要になればいつでも申し付け下さいませ」


 ユリカの足首を掴んで高く持ち上げ、凝視しながら五十嵐はスーツの男に言った。


「中々のもんだ。今回はどうやって遊ぶか迷うわ」

「気に入っていただいて幸いです」

「ふっふっふ。お前の所とはこれからも懇意にさせてもらうよ」


 突如黒服の男が部屋に駆け込み安田に早口で囁く。


「安田さん、武装した人間が襲撃に来ています。

 我々では抑えきれません。

 五十嵐様を早くここから逃さなければいけません」

「襲撃? そんなまさか」

「一刻を争います。例の道から、早く」


 遠くで銃撃の音が聞こえ、安田は窓から回廊を覗く。

 複数の男たちがマシンガンを持ってこちらに駆けて来る。

 襲撃を安田に伝えた黒服は銃を構えて再び階段を降りていった。


「どうした安田。何事だ」

「問題ございません。五十嵐様、良くあるちょっとしたトラブルです。

 ただ今日は申し訳ございませんが、万が一の為に避難して頂くより他ありません。

 この埋め合わせは必ず致します」


 安田が仏像の後ろを弄ると、仏像が横にスライドして人間が入れるほどのダストシュートが姿を現した。

 五十嵐が安田に押し込まれるようにダストシュートに入る。

 安田は五十嵐がダストシュートを降りていくのを確認すると、部屋の掛け軸の裏にあるパネルを操作した。

 警告音が鳴り響き、階下でパトランプのようなものが点灯する。



 カムイは扉の陰に隠れて様子を伺いながら本堂へ向かおうとしていた。

 だが突然警告音と共に先に続く広い廊下の両脇天井のパトランプが点灯し、二メートルほどの大きさの二足歩行ロボットが開いた壁から出現した。

 両手には人間ならミンチになりそうな機関砲が備え付けてある。

 センサーに捕えられる前に慌ててカムイは扉の陰に隠れ直す。

 反対側からこの寺院襲撃の先客と思われる男たちがこちらに駆けて来る。

 一人は青いマフラー、白いロングコートの男。

 この男は見たことがある。

 ここ数年、何度もテレビ放送をハッキングして乗っ取り、人々に呼びかけを行っていた男、自称レジスタンス、ニュース上ではテロリストのリーダーである。

 一人は金髪の少年。

 まるでいかつい機械の塊のような、望遠鏡のように長いゴーグルを頭に載せている。

 最後の一人は黄色い衣服を着ている坊主頭の男。

 この衣服は見たことがある。

 たしか中国の大林寺の修行僧、武僧の衣装である。

 だが両足は裸足で、鎖付きの足枷が付いている。

 そして片腕と片目をサイボーグ化し、やはりサブマシンガンを持っている。

 マフラーの男が一瞬こちらに銃を向け、銃を再び上へと向ける。

 先の廊下に待ち受けるガードロボの機関砲が床に無数の穴を開け、三人の男はカムイの反対側の陰に隠れた。


「……どうも」

「あんた……ここの護衛じゃ無いな。何者だ?」

「バウンティ・ハンター兼探偵さ。人探しで潜り込んだらあんた達が色々荒らしてくれてて戸惑ってたんだよ」

「俺達は人身売買の被害者を救出に来たんだ。中庭中央から続く地下牢に何十人も捕えられていた。その中に居るかもな」

「そうか……だが俺はこの先が気になるんだよ」


 カムイの腕に備え付けられたデバイスの一つ、臭気センサーは静かに針を震わせていた。

 金髪の少年が呟く。


「ガードロボが邪魔だね」

「私に任せろ」


 サイボーグ化した武僧は素早く先の廊下へ飛び出すと、即座に右の壁面へと駆け上った。


「ハァッ!」


 遅れて追従する機関砲を避けながら2、3歩壁面を歩いた後、再びジャンプして左の壁面へ着地。

 そのまま駆け下りてからバク転を高速で繰り返して、ロボットの背後に素早く移動する。

 そしてロボットの背後から頭頂部へと駆け上がる。


「ハッ!」


 ロボットの上に乗りサイボーグ化した腕の手首が裏返るように開かせる。

 その中から現れた砲身をロボットの頭上に押し上げて、轟音を立てながら射撃する。

 ロボットは機能を停止した。


「終わったぞ」


 穴だらけの壁の裏で伏せて頭を抱えていたカムイは、反対側で同じことをしているマフラーの男に話しかける。


「トンでもない坊さんだな」

「ああ、多分ウチで最強だ」


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