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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT12 アトラスの亡者達
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第十三話「長蛇の列」

 農業エリアの制圧は完全に終わった。

 多くの狂信者達は自分の付けてきた衣類をロープ代わりにして拘束され、ホールの隅で喚き続ける。

 3名程の小銃で制圧を試みようとしたアトラス警備員が銃弾を受けて倒れ、元医者だという人が憎悪の視線を向ける患者の緊急対応に当たっていた。

 マキは今だ殺意の籠った叫びを上げる狂信者と、それに怯える人々を残してエレベーターに乗り込む。

 そして先発隊として格闘の出来るロボットと、小銃扱える人数名を引き連れて下へと降りていく。

 エレベーターはいつも通り無機質な音を立てながらゆっくりと降下し、アトラスのゼロプレートへと辿り着いた。

 機械音をたてて扉が開く。


「居たぞぉ!」

「我はエバの戦士、穢れの子(イルバ)を滅ぼす者!」

「我はエバの戦士、穢れの子(イルバ)を滅ぼす者!」


 予想通り既に多くの狂信者が武器を持って出口を取り囲んでいた。

 開くと同時にエレベーター内へとなだれ込む。

 彼らの背後にセキュリティガード・ロボを見つけたマキは何人かの狂信者を押し戻して強引に外に出てから跳躍。

 EMPブレードをガード・ロボの脳天に突き刺して無力化していく。

 だが銃を構えたアトラス警備員も混じっている。


「銃を下ろせ! 撃つぞぉ!」

「我はエバの戦士、穢れの子(イルバ)を滅ぼす者!」


 パアァ――ン!


 銃を持った元空挺隊員の男はアドレナリンを滾らせ、歯を食いしばりながら容赦なく呼びかけを無視したアトラス警備員の頭を狙撃、警備員は脳漿をまき散らせて倒れるが次から次へとやってくる。

 最初はある程度加減する気でいたロボットもあまりの状況に振り切れたのか、激しいパンチや蹴りで容赦なく狂信者達を制圧していく。

 だが内臓破裂をしている可能性すらある狂信者ですら、正気を失い血走った目を見開いて抵抗を続ける。


 パリパリ! パチッ!


 ロボットの無力化を終えたマキは、今度は指からほとばしる電撃で狂信者を制圧し始める。

 数分間の激闘の末、周囲は地面でうごめいて呪いの言葉を上げる狂信者に埋め尽くされながらも片付いた。


「ロボットの体の方々は通路の外へ繋がる扉の封鎖をお願いします。

 生身の方は危険そうな人を優先しながら倒れているアトラス住人の拘束作業を続けて下さい。

 他誰か一人、エレベーターで上がって後続の人々を誘導をお願いします。

 私は120メートル先に有る中継タワーへの道を制圧に向かいます」

「私が人々を呼びに行こう」

「扉を封鎖するぞ、急げ!」

「そいつの手足を拘束しろ!

 骨折しているように見えても容赦するな!

 捨て身で抵抗しやがるからなっ!」


 ロボットの体の人達はスライド式のドアを手動で閉じ、取っ手を掴みっぱなしにして封鎖をし始めた。

 遅れてやってきた狂信者が扉をガンガン叩いて叫んでいるのが透明アルミの窓越しに見えるが、ロボットの力でロックされた扉は人力では開けられない。

 生身の人々も抵抗しようとする狂信者は手足を踏みつけて押さえながら拘束していく。

 油断すれば内臓破裂して両足が折れた人間であろうとも工作用のレーザーカッターを振り回して抵抗してくるのである。


 制圧を繰り返しながら中継タワーに辿り着いたマキは、エレベーターのコントロールパネルを尽く破壊して壁に埋め込まれたケーブルをEMPブレードで切断しながら上の階へと階段で上がって行った。

 農業エリアに直結した業務用のエレベーターと違い、中継タワーとセントラルタワーのエレベーターはリング状シャフトに複数のカプセルが循環する方式である。

 利用すれば逃げる人々の拉致の可能性、外からは次々と新手の登場を許してしまう可能性がある。

 後続の人々が徐々にマキの切り開いた道をたどり始め、道中の扉は一つに付きロボット一体が手で封鎖する。

 人々は拘束されて地面でうごめく多数の狂信者の体の隙間から床に足を差し込み、ロボットが封鎖した扉の向こうで狂気の叫びを上げる狂信者を見て恐れおののきながらも道を進んだ。

 幼児、小児は泣き叫び、確実にトラウマになったであろうが脱出のためには行くしかないのである。


 ***


 マキ達はついに中継タワーの10階に到達した。

 そこからはセントラルタワーまでまっすぐな空中歩道、動く通路が伸び、さらにそこを突き抜けて遊興ハイブに直結する対岸の中継タワーまで繋がっている。

 マキがこのルートを選んだのは、ロボットの体を持った人達という使えるユニットの数の制限、制圧や封鎖をしなければならない分岐や扉の数の少なさからである。

 壁際の曲がり角から空中歩道を覗き込むと、何人かの狂信者が走ってこちらへ向かってくるのみ。

 マキはすぐ後ろで待機するロボット3名と元警官の射撃競技の実力者を振り返る。


「セントラルタワーまで駆け抜けて制圧します。

 後ろをついて来てご協力をお願いします!」

「分かった」

「いつでもいいぞ!」


「行きます!」


 マキは空中歩道へと躍り出て、動く通路を走り始めた。

 ロボットと元警官も後に続く。

 散発的に武器を振り上げて攻撃してくる狂信者は、マキが尽く回避しながら電撃を当てて無力化する。

 空中歩道の中ほどまで来た時、セントラルタワー側に小銃を持った警備員が2名現れた。

 こちらを見て即座に銃を構えるがマキの攻撃射程外である。

 だがマキの背後から元警官が叫ぶ。


「右に避けて下さい!」


 マキが右に飛びのくと、元警官は動く歩道の上で片膝をついた射撃姿勢で狙いを定め、正確に2発射撃した。

 セントラルタワー側のアトラス警備員2名は二人共正確に頭部を撃ち抜かれて倒れる。


「助かりました」

「さぁ急ぎましょう!」


 マキ達はついにセントラルタワーへと到着し、エレベーターの扉を破壊、ドアを封鎖してさらに遊興ハイブへと続く空中歩道を進む。

 逃げる人々は長蛇の列となって空中歩道を埋め尽くしながら後に続く。

 最後の中継タワーへと向かう中、ロボットの一人が透明な窓の外を指さして言った。


「海中を泳いでいるあれ、深海生物か?

 遠くに見えるだろう?」

「上半身は人の形に見えるな。でも手がヒレのようにも見えるし、尻尾はイルカのようにも見える」

「向こうにも、あっちにも居るぞ」

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