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男達を追いかけた先に、少しばかり開けた場所に出た。計画無しに乱雑に、空いたスペースに建物を建てて行った為に起きた、資材を運びこめない場所に出来た広場。それが運良く子供等の遊び場の様になっているのだろう、そんな場所。たまたま今はそこに誰も居なかったが、普段は遊び場になっているのは、隅に落ちている遊具で判断出来た。
そんな場所に追い詰められた少女を助けるべく、俺の存在に気付いていないと思われる男達の真ん中の男を蹴り飛ばした。
「うーん、これどう見ても、こっちが悪物だよね?」
少しばかり力を込め過ぎたか、一度空へと舞いあがった男の一人は数秒後背中から地面に落ちた。唖然とした空気になる。少女の手前、怖がらしては本末転倒、子供のふりをしながら俺は、気絶した男の分開いたスペースの部分を通り、少女を庇える位置へと、男達と相対出来る場所まで歩く。
「とりあえず事情は、おじさん達をどうにかしてから聞くよ。」
いきなり仲間が空中遊泳し落ちて気絶した事に呆然としていた男達も事態を把握したのだろう、俺が一歩を踏み込めばそれぞれ腰の得物へと手を伸ばした。
伸ばすも、それを抜くよりも俺の方が速い。ここの所負け続きというかピンチになりすぎな俺だが、そもそも村人Lv65のステータス上昇補正の恩恵で身体能力という面では負け無し。単純な力押しという、それだけに絞れば負け無しの筈なのだ。
これがボス魔獣の様なキッシュ以上の能力を有していると言うのならば話は変わるが、レベルの低い人を相手にしているか、やはり魔獣のレベルが低い王都での活動が主な連中なのだろう、それぞれ武器を振るう速度は遅く、振り下ろされた剣の腹を拳で叩いて弾く等という芸当も出来てしまった。
数だけは多いので、少女の方へと向かわないように用心しつつ、腹に一撃を加えていく。ゲーゲー汚物をまき散らしながら蹲る男達の顎を蹴り気絶させていく。
「大丈夫だっ……でぇっ!?」
少女の方を向きながら無事の確認をしようと声を掛ければ、目をキラキラさせた少女が迫ってくるかのように俺の両手を握りしめる。少しばかり、いやどん引きしてしまい、変な声が出たが、まぁ仕方ないだろう?
「どうか、どうかお礼をさせてくれないだろうか……」
「へ、あ、ああ、ってか近い近いっ!」
いや、いくら助けられたからっていきなり近づいてくるのはどうなんだろうとか思えるが、それだけこの子が純粋なのだろうと思う事にした。キスをするかのような近さで懇願してくる少女に慌てつつも返事を返し、それ以上に今の体勢について苦言したら、今更ながらに自身の体勢に気付いたのか、頬を染めながら小さくごめんなさいと呟き、一歩後ろへと下がった。
「キッシュッ!無事かっ!」
「あ、ああ、……」
少女が一歩下がってくれたからか、バクバク音をたてる心臓を落ち着かせるために胸に手を当てつつも、周りを見渡す余裕が生まれた。後ろからシヤさんの心配する声が聞こえ、そちらの方を向けば全力で走ってくるシヤさんが居た。
「ふむ、保護者の方ですか?」
「えっ?…うん。」
「えっと、君は?」
「先程、息子さんに暴漢から助けられた者ですわ。」
「それは……」
さっきまで少し老成したかのような喋り方をしていたのだが、シヤさんの姿を見れば一瞬で態度を変えたのを見て、女って怖えぇと戦々恐々としていた。
シヤさんも倒れ伏す男達の事を見ており、少女の言葉に何があったか悟ったようだ。魔王軍に目をつけられるような事をしてと咎める様な、それでいて流石ですねと尊敬するかのような視線になんと言っていいか判らなくなる。
「それでですね、よろしければ我が家に招待させていただきたいのですが……」
「あー、それは……」
「すまんが、夫を待たせているので出来れば遠慮したのだが……」
シヤさんの言う夫、そういう設定だったキヤラを、この辺りの事を知らない俺を心配して追いかけて来た為に放置して来ているのだそうだ。
「それは残念ですわ。もう少し一緒に居たかったのですが……」
「すまんな。」
本当に残念そうにする少女にシヤさんが苦笑しながら謝る。
「おーい、お二人さん、次に移動するっすよぉ!!」
路地の向こう側からキヤラが片手を上げて叫んだ。その声を聴き少女は少しばかり寂しそうに笑う。
「キッシュさんと言うのですね。私はカイラクスと申します。重ね重ねありがとうございました。」
「あ、ああ。うん、じゃぁね。今度は気を付けて。」
「ええ、出来たらまた会えるといいですわね。」
そういって手を振り少女とは別れたのだった。




