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IN THE GAME ~勇者と魔王が戦争している異世界で俺は農耕する~  作者: yosshy3304
プロローグ 俺はゲームの中で『村人』する。
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1-5

「で、高位レベルの回復薬と『マナポーション』で良かったんだっけ?」

「ああ、出来るだけ欲しいんだけど…」

「オークションで値段調べて、一個あたり一番安い値段でいいよ。」

「さんきゅ!…でもさ、よく村人でこんだけやったよな。」


 俺の目の前には、何時かの友人が操作する騎士が居た。その友人は辺りを見回し、呆れたように俺に話しかけてくる。周りを見回せば辺り一面に広がる田畑や果樹園。少し離れた所では放牧されているティムされたモンスター達。そう、ここは最終フィールドにある俺が作り上げた農園であった。


「でもよくやったよ、お前は。よく村人のソロでここまで来たよな。」

「まぁな。一度挫折しかけたけど、まぁ、なんだ。隠し職業見つけてな?」

「マジでっ!?」


 白銀に輝く鎧を身に纏った戦士系最終職業である『勇騎士』が驚く様子は何とも言えない面白さがあった。


 ナイトメアになってから分かった事なのだが、どうやら俺のステータスは見えない様なのだ。いや、正確に言えば公開されている情報が改竄されて見えているようで、そう言えば転生して村人のレベルが上限突破した時も何も言われなかった事を考えるとその時からだったのかもしれないが。何はともあれ、どうも俺のレベルは50。職業は村人15レベルを筆頭に『大工』15レベル、『商人』15レベル、『農民』5レベルと見えている様なのだ。実際は村人が60レベルで、それ以外にもオーガが50レベルなのだが。


「こんなタイミングでそれは知りたくなかったぁ……」

「くっくっ、後三日ではどんなに頑張っても無理だもんなぁ。」

「くっそ、今からパーティー呼んだって、集まらんだろうし……」


 俺がナイトメアになってから半年ぐらい経った頃、このゲームのⅡが発売決定と言う情報が世に出た。その時は既に第二職や上位職を取得し、最終フィールドで農耕を楽しんでいた頃だ。そして最初期のプレイヤーも殆どが一度引退して、Ⅱへと引き継ぐデータをより強力にする為に、ちょいちょい出戻りし始めたのだ。


 そう後三日と言うのは、そのⅡの発売日であり、このゲームの寿命でもある日。すぐにはプレイする者が居なくなるって事は無いだろうが、それでも過疎化して忘れ去られる事となる。いつの日か思い出して、あーこのゲーム懐かしい、よくやったよねと語る事となる。


 残り三日という短い時間でナイトメアという職業に就くには、高位プレイヤーとパーティーを組んでもっとも経験値効率のいいフィールドでの狩りが必要。だがこの三日は全て平日でもあり、またこのゲームで引退を決めたプレイヤーも居る。それでも何人かは集まるだろうが、集めたアイテムが消えてしまう事も考えると難しいだろう。


「流石に終わり間近だな。高位アイテムが投げ売りされてるよ。」

「うぅぅ、まぁな。こっちとしては助かるけどさ。」

「それでも回復アイテム系は取られてんな。ほい、12個ずつで340GD。」

「あいよ。」


 それでも目の前の友人の様にⅡもプレイするからと、限界までアイテムを集める馬鹿も居た。引退を決めたプレイヤーや、すでに限界までアイテムを集め終えていたプレイヤーが高位アイテムを投げ売りし、その中でも回復アイテム系は特に人気であった。友人の様なプレイヤーがソロで高レベルダンジョンに潜る為に買いあさっているからで、回復アイテムはそうそう手に入らない。


 何処からか、此処で俺が農園を作っていると聞きつけた友人がそういった回復アイテムを求め、俺を訊ねて来たのだ。久しぶりにゲーム内で顔を合わせた事もあって、いやリアルの方では昨日も話をしていたんだが、まぁとにかく快く回復アイテムを錬金しては安く売ってやった。


「でも卒業かぁ。」

「そっちは就職だろ?時間取れんの?」

「まだ解かんね。お前こそ、大学に進学で時間あるんだろ?」


 そう俺達は現実では高校を卒業するのだ。一年の夏前に販売され、2年と半年ちょっとというのは今時のゲームとしてはもった方ではあるだろう。友人はⅡもやると言ってはいても、就職し社会人になってからこうやってゲームする時間を取れるんだろうか。少なくとも今までの様に平日でもガッツリとはいかなくなるのだろう。


 俺と言えば、大学へと進学する事となった。ただ地方の大学へと進学するので、部屋を借りて一人暮らしする事となっていた。リアルの方では今までの様に会う時間が減り、だからこそこうしてゲームでぐらい話をしようと言ってくれているんだろうけど、俺はこのゲームを引退する事を決めていたのだ。


「どれぐらい自由時間があるか判らんし、バイトもするだろうしな。少なくとも一人暮らしに慣れるまではヴァーチャルゲームする気はないよ。」

「そっか……」


 淋しそうにだけど何処か納得したかのように頷き、サンキュと手を振って別れた。俺がこれから用事があると知っていたからだ。別に友人を誘っても良かったんだが、そこはそれ。Ⅱも継続してやるために限界までアイテムを集めている友人の邪魔は出来ないから。


「それじゃ、俺も最後の種を求めて、行くとしますか。」


 一度青々と実をつけている田畑の方を見ては、俺は懐かしい最初のフィールドへとワープアイテムで跳んだ。

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