3話 ダメな俺と初めての異世界人
ヒロイン登場って難しいですね。
海から真っ直ぐ歩いてきた俺は途方にくれていた。
もう何時間、 歩いていたのだろう。
水もないし、飯もない。木や林はあるのだが、木の実も何も実っていない。
身も心も、疲れきって木陰で休んでいたその時、この世界で初めて女の子の声が聞こえた。
「あなた、大丈夫?生きてる?しっかりして?」
うん。美少女だ。
いつもの通り俺には、そんなやつらしか集まらん。
まぁせっかく会ったんだしお世話になるか?
「あぁ、なんとか生きてる。」
「そう、良かったわ。動ける?」
「ダメだ、エネルギー切れだ。」
「そうなの。だったら補充しなきゃね♪」
そう言って少女はリンゴのような木の実を取り出した。
「アップルよ。疲れた体にちょうどいい甘味なの。」
腹が減ってた俺は、夢中でかぶりつく。
俺の知ってるリンゴより酸味が濃いが美味しかった。
「美味しかったよ。ありがとう。」
「どういたしまして♪ わたしはアルファ。貴方は?」
「俺はタクト。別の世界から来たって言えば信じてもらえる?」
「何の冗談?」
「いや、忘れてくれ。」
だろうな。俺が逆の立場だったら絶対信じん。
説明しても信じてもらえなさそうだし。
ありきたりだが..。
「実は俺、海岸から歩いてきたんだが、それより前の記憶が無いんだよ。自分の名前しか覚えてないんだ。」
「それは大変だったね。職業も覚えてないの?」
「アルファは、もう働いているのか?」
「わたし、農民の子なの。」
「俺は、うん。覚えてないんだ。」
学生って言ってもわからんだろうな。
「タクトはこれからどうするの?泊まるところはある?」
「アルファ、助けてくれる?」
「んじゃちょっと手伝ってよ♪そしたら宿も貸すからさ。」
アルファはアップルが山積みになった箱を抱えて俺に差し出した。
なかなか量が多いぞ。だが、1個もらった恩は返したいしな。
「あぁ、いいぜ。俺に任せな!」
軽々と箱を持った俺を見て驚いてくれたアルファだが、男の子なら普通なのかと思ったらしく何も言わなかった。
「どこまで行くんだ?」
「ヒールミアの町よ。後、少しなの。」
右の方をよく見ればちらっと建物が見えた。
人間疲れると思考回路がダメになるな。アルファに出会わなかったら通りすぎていただろう。
本当に良かったぜ。そういえばアルファは、どうやって重い箱を運んできたのだろう。
抱えて歩いてきたとか?
「アルファ、力持ちなんだな。」
「へ?何言ってるの?」
「だって、この箱をここまで一人で運んできたのだろう?」
「タクトは魔力の使い方も忘れたの?」
そう言ってアルファは、人差し指を立てると集中しだした。箱がそっと浮かび上がる。
これが魔法かぁ..俺には使えないけど。
「わたしは魔力は町一番なんだけど、属性が無くてさ。これくらいしか出来ないんだ。」
「俺は、自慢じゃないが魔力が無いんだよ。」
「そうなの。ごめんなさい。知らなくて。」
「別にいいよ♪気にしないからな。」
話しているうちに町が見えてきた。
町というか村に見えるのは気のせいではないのだろう。
「ようこそ。ヒールミアへ!っと、身分証明書って持ってる..わけないか。」
「町に入るのにそんなものが必要なのか?」
「住んでる人ならわかるけど、タクトは初めてでしょう?みんなが不思議に思うわ。一番最初はギルド登録ね♪」
「もっと詳しく教えてくれ。」
「冒険者ギルド、みんなはギルドって呼んでるわ。誰でも登録することができるし、お金をたくさんもらえる仕事でもあるの。そのかわり危険なことが多いわね。身分を確認するにはギルドカードを提出すれば楽になるわ。何か質問ある?」
「まぁ、なるようになるだろ。」
町の入り口につくと警備員みたいな服の人がこちらを見てから立ち上がった。
「お帰り、アルファ。今日はいっぱい採れたね。」
「ただいま!ジエンおじさん!」
「おや?そちらの男の子は誰だい?」
「どうも。タクトと言います。」
「おじさん。タクトはね...」
アルファがおじさんに俺のことを話している。
うーん、流石に記憶喪失は通らんか?アルファ、頑張ってくれ。
「大変だったね。タクト君。ゆっくりしていきなさい。」
おー!この村大丈夫かぁ?それとも、アルファの交渉術がよかったのか?どちらにしてもよかったぜ。
「でもこちらも仕事なんだ。最初にギルドに向かってくれよ。」
「ありがとう。ジエンおじさん。これからもよろしくな!」
「アルファ。元気の良い彼氏が出来たな。」
「もう!おじさん!」
俺とアルファは、ギルドに向かって歩きだした。
冒険者ギルド。ありきたりだけど欲しい存在!俺TUeeeeになるのか。それとも...。
1話、1話で文字数の差が激しくなってすみません。変えるつもりはないです。区切りがいいとこで切っていきますのでよろしくお願いします。