二話
此処ではない、何処か別の世界に、かつて人間が棲んでいたにもかかわらず、忘れ去られた秘境があった。忘れていた秘境を人間が再度見つけた時、人間は恐ろしい魔物が住み、厳しい環境を持つ秘境を「魔界」と呼び忌み嫌った。
そんな魔界の果てに二種族の亜人が細々と暮らす村が有った。
その名も「ウルタール」
ン・ガイの暗黒の森に囲まれ、神の加護が無ければ、魔物が何時でも襲ってくるという、お世辞にも住みよいとは言え無い村だ。
ここの住人の種族の内の一つが「ディープ・ワンズ」である。
彼等は、半魚人で村にある名無しの湖で暮らしている。そしてタコのようなドラゴンを神として奉っていた。また魔法と呼ばれるものを得意とした。
もうひとつが「ディオル族」である。
彼等は人間に似た容姿に、猫としての特徴を持っていた。言わば人間の肉体に猫の耳と尻尾が生えており、魔法はあまり得意ではないが身体能力は高く、五感にも優れていた。ディオル族の神は「バテスト」という半人半獣の神だった。
彼等は宗教や種族が違ったが、互いに協力しながら、大した事件も無く暮らしていた。
ところが、とある日の早朝、バテストの祠から、ディオル族の赤ん坊が見つかった。
ところが、この時期に出産した女性もおらず、そもそも祠は司祭以外は立入禁止である。
村中から人が広場に集まり、大騒ぎになっていたその時、ディオル族の長老であり司祭でもあるミャオがやってきて、
「皆の集、落ち着くのじゃ、神からいただいた御神託を持ってきたので読み上げようぞ」
といい、巻物を開いた。
「その者は私の子である。名は貴様らが付けよ。そして成人まで村の子供たちと変わらず育てよ。彼の者は一族の悲願達成するであろう」
読み上げられた神託はそのような内容であった。