表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら俺だけステータスが見れなくて奈落に落とされたのだが?  作者: すすむ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

第1話 異世界転移

俺の名前は一ノ瀬 いちのせ・すすむ

ごく普通の高校に通う、17歳の男子高校生だ。


学力は平凡。

運動もそこそこ。

だけどクラスではそれなりに人気者で、毎日そこそこ楽しく生きていた。


——あの日までは。


その日は、いつも通りの授業中だった。

突然、校舎の中心に黒い“穴”が現れた。


まるでブラックホール。

光すら吸い込むような、底の見えない闇。


「な、なんだあれ——」


誰かがそう言った瞬間だった。


悲鳴が上がる暇もなく、

生徒、教師、職員——高校にいたすべての人間が、その闇に飲み込まれた。



気づいたとき、俺たちは見知らぬ場所に立っていた。


足元は冷たい石造りの床。

見上げるほど高い天井。

周囲には、見覚えのある制服姿が無数にある。


ざっと見渡して、息を呑んだ。


クラスどころじゃない。

学年でもない。


——高校全体だ。


生徒だけじゃない。

教師も、事務員も、保健室の先生もいた。


ざわめきと恐怖が、広間を埋め尽くしていた。


「……ここ、どこだ?」


誰かの呟きが、妙に大きく響いた。


その声に答えるように、

俺たちの前に一人の男が姿を現した。


王冠を被り、豪奢な衣装を纏った中年の男。

どう見ても、普通の人間じゃない。


威厳に満ちた表情。

だが、その目の奥には——

切迫した焦りが滲んでいた。


「えー……ここはだな。

お前たちがいた世界とは、別の世界になる」


その言葉に、広間が一気にざわつく。


「ふざけるな!!」


別のクラスの男子が前に出た。


「あんたが俺たちを呼んだのか!?

今すぐ元の世界に返せ!!」


「すまないが、それはできん。

……こちらにも、事情があってな」


一瞬だけ、男は広間の奥——

まるで**“見えない何か”**を見つめた。


「知るかよ!!

この世界の人間でどうにかしろよ!!」


「それができるなら、とっくにそうしておる」


その声には、はっきりとした疲労が混じっていた。


この時になって、ようやく教師たちが動いた。


「落ち着きなさい!!」


数人の教師が前に出て、生徒たちを庇うように立つ。


「あなたは何者ですか!

生徒たちに何を——」


だが、教師の声は途中で止まった。


男——王の視線が、

一瞬、教師たちに向けられただけだった。


言葉を失い、

教師たちはそれ以上前に出られなかった。


空気そのものが、違った。


「……てか、お前誰だよ」


誰かが、震える声で聞いた。


男は小さく息を吐き、姿勢を正した。


「わしはこの国の王。

ソル・グラン・イグニートだ」


ざわ、と空気が揺れる。


「……やっぱ王様か。

言葉遣いよく分かんねぇから、イグニートでいい?」


「かまわん」


王は短く答え、

今度は俺たち全体を見渡した。


その視線は、

まるで人を選別するかのようだった。


「ところでお前たち。

ステータス画面は見えておるか?」


「ステータス?

なんだそれ?」


「“ステータスオープン”と唱えてみよ」


言われるがまま、全員が口にする。


「「「ステータスオープン」」」


次の瞬間、

至る所で驚きの声が上がった。


クラスメイトたちの前に、

光るウィンドウのようなものが浮かび上がっている。


……俺の前には、何も出ない。


嫌な予感が、背中を這い上がった。


「……あれ?」


俺は恐る恐る、王に声をかけた。


「王様。

俺だけ、何も表示されないんですけど……

そんなこと、あるんですか?」


王の目が、

一瞬だけ揺れた。


そして、冷たく言い放つ。


「それはな——

何の能力も持たぬということじゃ」


「……え?」


頭が、真っ白になった。


「じゃあ俺、能力なしってことですか?

この世界で……どうやって生き残れって……」


王は、ほんの一瞬だけ目を伏せた。


「……時間がない」


その呟きは小さく、

ほとんど誰にも届かなかった。


「お前は処分だ」


——その言葉には、迷いがなかった。


「使えぬゴミを置いておいても、仕方がない」


だがその瞬間、

王の指がわずかに震えたのを、俺は見逃さなかった。


「……なんでだよ!!」


俺は叫んだ。


「勝手にこの世界に召喚しといて!

それで処分!?

あまりにも自分勝手すぎるだろ!!」


「そうだ!!」


クラスメイトが前に出て、俺を庇った。


「進は何も悪くない!!

そんなの、おかしい!!」


教師の一人も、声を張り上げた。


「やめてください!

生徒に危害を加えるなど——」


王は、視線を逸らしたまま言った。


「……この世界が滅びれば、

お前たちの世界も無事では済まぬ」


ざわめきが走る。


だが——

それ以上の説明は、なかった。


「では、頼んだ」


王が背を向ける。


「かしこまりました」


部下が呪文を唱える。


「——深淵よ。

今こそ、顕現したまえ」


床が歪み、

再び“闇”が現れる。


ブラックホールのような奈落。


「や、やめ——」


抵抗する間もなく、俺は掴まれた。


まるで——

役目を終えた道具を捨てるみたいに。


俺の身体は闇へと投げ込まれた。


視界が、真っ暗になる。


落ちていく感覚の中、

最後に見えたのは——


王が、拳を強く握り締めている姿だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ