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第80話 ふわりちゃんと古代の賢者

「ふわりちゃんの大人進化について、専門家に相談したいの」


私がそう言うと、カタリナとエリオットが顔を見合わせた。


「専門家といいますと?」

エリオットが首を傾げる。


「古の森の迷宮にいる古代の賢者よ。きっとふわりちゃんの正体について何か知ってるはず」


「ふみゅ?」

肩の上のふわりちゃんが不思議そうに首を傾げている。

今日も相変わらず破壊的な可愛さだ。


「ピューイ」

ポケットの中のハーブも賛成してくれているようだ。


「確かに古代の知識なら、ふわりちゃんのような神秘的な存在についてご存知かもしれませんわね」

カタリナが頷いた。


「でも、賢者様に会うのに手ぶらというのも失礼ですわ。何かお土産を持参しませんか?」


「そうね。『知識探求薬』でも作って持って行きましょう」


——数時間後——


「『古代文字解読液』『記憶増強剤』『洞察力向上薬』を組み合わせて……」


——ボンッ


いつものように小爆発と共に、金色に輝く薬が完成した。


「また煙がもくもくですわ……」

カタリナが窓を開けて換気している間に、私は薬を小瓶に詰めた。


「これで古代の賢者も喜んでくれるはず」


「ふみゅ〜」

ふわりちゃんが嬉しそうに羽を広げている。


——古の森の迷宮——


久しぶりの森は相変わらず静寂に包まれていたが、以前と違って魔物たちが友好的に出迎えてくれた。


「こんにちは、ルナさん」

「お元気でしたか?」

ホーンラビットとフェンリスウルフが挨拶してくれる。


「ふみゅ?」

ふわりちゃんが魔物たちに興味を示すと——


「なんて美しい……」

「神々しい存在だ……」

魔物たちがふわりちゃんを見つめて感嘆の声を上げた。


「ふわりちゃん、人気者ね」

「当然ですわ。あの可愛さは万物共通ですもの」

カタリナが微笑みながら言う。


「ピューイピューイ」

ハーブもポケットから顔を出して魔物たちと挨拶している。


——最深部——


水晶の前に着くと、賢者の声が響いた。


『おお、久しぶりじゃのう。また何か面白い実験結果を持ってきてくれたのか?』

「はい。今日は特別なお客様をお連れしました」


私がふわりちゃんを賢者に見せると——


『……これは……』

水晶の光が一瞬強くなった。


『まさか……まさかこの時代に再び現れるとは……』

「ご存知なんですか?」


『知っているとも。これは古代の【浄化の守護者】じゃ』

「浄化の守護者?」


『遥か昔、世界に邪悪が蔓延した時、神々が遣わした清浄なる存在。全てを本来あるべき姿に戻す力を持つ』


「ふみゅ〜」

ふわりちゃんが嬉しそうに鳴いている。


『だが……なぜ今の時代に?世界はそれほど邪悪に染まっているのか?浄化の守護者よ』


「そんなことはないと思いますが……」

エリオットが困惑している間に、私は『知識探求薬』を取り出した。


「お土産です。これで何か分かるかもしれません」


薬を水晶にかけると——


——ピカピカピカァァァ


水晶が激しく光って、様々なビジョンが浮かび上がった。


『見えるぞ……浄化の守護者の過去が……』

映像には、大昔の戦争や災害が映っている。そして、小さな光る存在が人々を救っている姿も。


『なるほど……この子は戦いや災いを終わらせるために現れるのではない』


「では何のために?」

『愛と友情を広めるためじゃ。心の平和をもたらすために』


「ふみゅふみゅ〜」

ふわりちゃんが頷いているように見える。


『そして今回は……』


賢者が私たちを見つめた。

『おぬしらのような純粋な心の持ち主たちと出会うために現れたのじゃろう』


「私たちのために?」


「ふみゅ〜♪」

ふわりちゃんが嬉しそうに翼をパタパタしている。


『だが気になることがある。大人進化について相談に来たと言っておったな?』

「はい。ふわりちゃんが時々人型になるんです。みんなが跪いてしまって大変で……」

『ふむ……実際に見せてもらえるかの?』


私がふわりちゃんに人型になってもらうようお願いすると——


——キラキラキラ


光に包まれて、ふわりちゃんが人型に変化した。


「ふみゅ〜」

小学生くらいの女の子の姿で、真っ白な髪がふわふわと舞っている。


『おおお……なんと神々しい……』

なんと賢者まで感激している。


「みんなこの反応なんですのよ……」

カタリナがため息をついている間に、森の魔物たちまでやってきた。


「美しいですね」

「神秘的な存在だ」

魔物たちは興味深そうにふわりちゃんを見つめているが、跪くことはない。


「ふみゅ〜(こんにちは〜)」

ふわりちゃんが魔物たちに手を振ると、みんな幸せそうな表情になった。


『なるほど、人間が跪いてしまうのが問題なのじゃな』

「何か対策はありませんか?」


『うーむ……』

賢者が考え込んでいると、私に一つのアイデアが浮かんだ。


「『神聖隠蔽薬』を作ってみましょうか」

「また新しい薬ですの?」


「ふわりちゃんの神聖な力を少し隠して、みんなが普通に接することができるようにするの」

『面白いアイデアじゃ。だが神聖な力を隠すのは難しいぞ』


「大丈夫、私には秘策があります」


私は『親しみやすさ向上液』『普通さ演出薬』『可愛さ調整剤』を組み合わせ始めた。

「『神聖な力』は残しつつ、『親しみやすさ』を増加させて……」


——ポフッ


今度は爆発せず、やわらかなピンク色の薬が完成した。


「甘い香り……まるで花畑みたい」

エリオットが感心している。


「浄化の守護者よ、試してみるかの?」

賢者が優しく声をかける。


「ふみゅ〜♪」

ふわりちゃんが薬を一滴舐めると——


——ほんわ〜


柔らかな光に包まれて、なんだかより親しみやすい雰囲気になった。


「あら、確かに神々しさは残りつつ、もっと身近に感じますわ」

カタリナが驚いている。


『おお、これは見事じゃ。神聖さを損なわず、親しみやすさを増加させるとは』


魔物たちは普通に話しかけてきた。

「可愛いですね」

「お友達になってください」


「ふみゅふみゅ〜(もちろんだよ〜)」

ふわりちゃんが嬉しそうに答えている。


「これで学院でも大丈夫ね」

『だが一つ注意があるぞ』


賢者が警告した。


『この薬の効果は一時的じゃ。浄化の守護者の本来の力が必要な時には、自然と効果が切れるじゃろう』

「つまり、緊急時には元の神聖な力を発揮できるということですわね」


『その通りじゃ』


——帰り道——


薬の効果でふわりちゃんが元の大きさに戻ると、魔物たちが見送ってくれた。

「また来てくださいね」

「楽しかったです」


「ふみゅ〜(また会おうね〜)」


「ピューイピューイ」

ハーブも魔物たちとお別れの挨拶をしている。


「今日は大収穫でしたわね」

カタリナが満足そうに言う。


「ふわりちゃんの正体も分かったし、対策薬も完成しましたしね」

エリオットも嬉しそうだ。


「ふみゅ〜♪」

ふわりちゃんが私の肩で幸せそうに鳴いている。

確かに以前より親しみやすい雰囲気になっている。


——その夜、屋敷にて——


今日の実験結果をまとめながら、私は思った。


「ふわりちゃんが『愛と友情を広めるため』に現れたなんて……」


「ふみゅ〜」

ふわりちゃんが私の頬を優しく撫でてくれる。


「私たちこそ、ふわりちゃんに愛と友情を教えてもらってるのかもね」


窓の外を見ると、遠くの森がほのかに光っているのが見えた。

きっと賢者も今夜の出来事を喜んでくれているのだろう。


「明日は『友情増進薬』でも作ってみようかしら」

そんなことを考えながら、私は今日一日の素晴らしい発見に満足して眠りについた。


ふわりちゃんとの友情も、きっとこれからもっと深まっていくだろう。


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