表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/205

第62話 学院交流祭と錬金術の華麗なる失敗

「本日は王立魔法学院と王立錬金術学院の交流祭を開催いたします」


校長先生が壇上で宣言すると、講堂に集まった両学院の生徒たちから拍手が起こった。


「ふみゅみゅ〜」

肩の上のふわりちゃんも小さな翼をぱたぱたと動かして、交流祭の雰囲気を楽しんでいるようだ。


「今日は錬金術学院の上級生たちと一緒に実習を行うのですのね」


カタリナが上品に微笑みながら言った。

縦ロールの赤茶色の髪がいつもより丁寧にセットされている。


「楽しみですね。錬金術学院の技術レベルは非常に高いですから」

エリオットも興味深そうに古巣の錬金術学院の生徒たちを観察している。


「王立錬金術学院上級クラスの皆さんです」


紹介された錬金術学院の生徒たちが入場してきた。

みんな自信に満ちた表情で、手には立派な錬金術道具を持っている。


「あ、エリオット君!」

その中から、見覚えのある銀髪の青年が手を振ってきた。


「マックス先輩!」

エリオットが嬉しそうに応えた。

どうやら錬金術学院時代の先輩らしい。


「久しぶりだね。魔法学院はどうだい?」

「とても刺激的です。特にルナさんという同級生がいて…」


エリオットが私の方を見た。


「こちらがルナ・アルケミさんです。非常にユニークな錬金術を研究されています」

「あ、はじめまして」


私が挨拶すると、マックス先輩が興味深そうに見つめてきた。


「君がエリオットの話によく出てくる『爆発の錬金術師』か」

「爆発って…そんな風に呼ばれてるんですか?」


「いえいえ、良い意味でですよ。創造的破壊による新発見、素晴らしいじゃないですか」

マックス先輩が豪快に笑った。


「ふみゅ?」

ふわりちゃんも首を傾げている。


「今日の実習テーマは『光と香りの錬金術』です」


モーガン先生が実習内容を説明してくれた。


「光る薬剤と香りの薬剤を組み合わせて、美しく香り高い作品を作ってください」

「魔法学院と錬金術学院の生徒がペアを組んで行います」


「では、ペアを発表します」


私のペアは…


「ルナ・アルケミさんとアリシア・ドルーチェさん」


錬金術学院の女の子が挨拶に来てくれた。

栗色の髪を三つ編みにした、眼鏡をかけた真面目そうな子だ。


「よろしくお願いします、ルナさん。私は理論重視の錬金術が得意です」

「こちらこそ。私は…実験重視かな」


「ふみゅみゅ〜」

ふわりちゃんがアリシアさんに挨拶している。


カタリナのペアは錬金術学院の男子生徒ダリオさん。


「お美しい方とペアを組めて光栄です」

「恐縮ですわ」


エリオットはマックス先輩とペア。

「久しぶりに一緒に実験できて嬉しいです」


「では、実習を始めましょう。まずは基本的な光る薬剤から作ります」


アリシアさんが手際よく材料を並べ始めた。


「まず『月光草』を細かく刻んで、『星の雫』と混合します」


「すごく手慣れてますね」

「理論を完璧に覚えていれば、手順も自然と身につきます」


アリシアさんの手つきは確かに完璧だった。


「あの、少し変化を加えてみませんか?」

「変化ですか?」


「『月光草』に『虹色キノコ』を少し混ぜてみるとか」

「虹色キノコ?それは理論書にない組み合わせですが…」


アリシアさんが困惑している。


「大丈夫です。失敗しても面白いことが分かるかもしれません」


「ふみゅみゅ〜」

ふわりちゃんも賛成してくれているようだ。


「では、少しだけ…」

アリシアさんが恐る恐る虹色キノコを加えた。


——シュワシュワシュワ


薬液が泡立ち始めて、七色に光り始めた。


「あら、予想以上に綺麗ですね」

「でしょう?理論にない組み合わせも時には面白いんです」


「次は香りの薬剤ですね」

アリシアさんが『薔薇の花びら』と『風の精髄』を用意した。


「今度は私から提案があります」

「どんなことですか?」


「『薔薇の花びら』に『時の砂』を少し加えてみませんか?」

「時の砂?それは時間系の錬金術に使う材料では…」


「そうです。でも、香りに時間の要素を加えると、持続性が向上するかもしれません」

「なるほど…理論的には興味深いアイデアですね」


アリシアさんが眼鏡をくいっと上げた。


「やってみましょう」


二人で協力して、慎重に『時の砂』を加えていく。


——フワ〜


薔薇の香りがふんわりと立ち上がり、そして…なぜか香りが濃くなったり薄くなったりを繰り返し始めた。


「香りが時間変化してる!」

「理論書にない現象です!」


アリシアさんが興奮している。


「最後に、光る薬剤と香りの薬剤を混合します」

「ここが一番重要な工程ですね」


私たちは慎重に二つの薬剤を合わせ始めた。


ところが、二つの薬剤が触れ合った瞬間—


——ピカピカピカ


激しく光り始めて、香りも強烈になった。


「あれ?なんか反応が強すぎる」


「ルナさん、これは…」

アリシアさんが青ざめている。


「ふみゅう!」

ふわりちゃんが慌てて私の髪の中に隠れた。


私たちの薬剤だけではなく、なぜか隣のペアの薬剤も共鳴し始めた。


「カタリナの方も光ってる!」


「これは魔法との共鳴現象ですわね」

カタリナが冷静に分析している間にも、ダリオさんの薬剤がキラキラと光っている。


「マックス先輩の薬剤も!」

エリオットのペアでも、薬剤が予想外の反応を始めた。


「これは…面白い現象だ」

マックス先輩が興味深そうに観察している。


「複数の錬金術が相互に影響し合っている」


気がつくと、実習室全体の薬剤が次々と光り始めていた。


「すごい光景ですわ」

「まるで星空みたい」


生徒たちが感嘆の声を上げている。


そして香りも…薔薇、ラベンダー、ジャスミン、様々な香りが混じり合って、実習室が花畑のような芳香に包まれた。


「ふみゅみゅ〜」

ふわりちゃんが髪の中から恐る恐る顔を出した。

綺麗な光と良い香りに、だんだんリラックスしてきたようだ。


「ふみゅ〜♪」

嬉しそうに小さな翼をぱたぱたと動かしている。


でも、光と香りはどんどん強くなっていく。


「これ、大丈夫でしょうか?」

アリシアさんが心配そうに言った。


「多分…大丈夫だと思います」


でも、実習室の空気がだんだん濃くなってきて、光も眩しくなってきた。


そして、すべての薬剤の光が最高潮に達した時—


——ポン!


小さな爆発音とともに…


——キラキラキラ


実習室中に色とりどりのキラキラした粒子が舞い散った。

まるで虹色の雪のようだ。


「わあ〜」

「綺麗〜!」


生徒たちから歓声が上がる。


そして、とても良い香りの風が実習室全体を包んだ。


「これは爆発じゃなくて…」


モーガン先生が感嘆している。

「『香りの花火』ですね。非常に珍しい現象です」


確かに、危険な爆発ではなく、美しい演出のような現象だった。


「ふみゅみゅ〜♪」

ふわりちゃんも嬉しそうに舞い散るキラキラを見つめている。


「ルナさん、あなたの実験的アプローチ、素晴らしいですね」

アリシアさんが興奮気味に言った。


「理論だけでは到達できない発見がありました」

「アリシアさんの理論的な基礎があったからこそです」


「今度は理論と実践の両方を大切にしてみます」


「ルナさんのペア、今回も予想外の現象を起こしましたわね」

カタリナが微笑んでいる。


「でも、美しい結果でした」


「エリオット、君の同級生は本当に面白いね」

マックス先輩がエリオットに言った。


「はい。いつも新しい発見をもたらしてくれます」


「今日の交流実習は大成功ですね」

モーガン先生が嬉しそうに言った。


「両学院の生徒たちが協力して、素晴らしい現象を生み出しました」

錬金術学院の先生も満足そうだ。


「特に、理論と実践の融合という点で、良い学びがありました」


実習後、錬金術学院の生徒たちとすっかり仲良くなった。


「ルナさん、今度は私たちの学院にも遊びに来てください」

アリシアさんが誘ってくれた。


「もっと大きな実験室で、一緒に研究してみましょう」

「ぜひお邪魔させてください」


「君とはまた一緒に実験したいな」

マックス先輩もエリオットを通じて声をかけてくれた。


「理論を覆すような発見を期待してるよ」


「ふみゅみゅ〜」

ふわりちゃんも新しい友達ができたようで嬉しそうだ。


「今日の交流祭、とても楽しかったわね」


実験室で今日の出来事を振り返っていた。


「理論重視のアリシアさんと組んで、いいバランスが取れたと思う」


「ふみゅ〜」

ふわりちゃんも満足そうに小さくあくびをした。


「理論と実践、どちらも大切なのね」

今日の経験で、新しいことを学んだ。


「一人だけでは到達できない発見も、協力すれば可能になる」


窓の外を見ると、両学院の建物が月明かりに照らされて美しく光っている。


「また錬金術学院との交流があるといいな」


「ふみゅみゅ〜」

ふわりちゃんも同感のようだ。


新しい友達、新しい発見、新しい可能性。


今日もまた、錬金術師の素晴らしい一日が終わった。


きっと明日も、もっと楽しい発見が待っているだろう。


——翌日のアリシアさん——


「昨日の実験結果を理論的に分析してみました」


数日後、アリシアさんが手紙を届けてくれた。

「『虹色キノコ』と『時の砂』の組み合わせ、理論的にも説明可能でした」


「へえ、どんな理論なんだろ?」

「詳しくは今度お会いした時に。でも、確実に新しい発見です」


理論と実践の融合が、また新しい扉を開いてくれそうだ。


「ふみゅ〜♪」

ふわりちゃんも次の何かを楽しみにしているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ