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第41話 ふわもこ天使との出会い

扉をくぐると、そこは想像していた以上に美しい空間だった。

天井は高く、柔らかな光が宙に浮いている。まるで無数の蛍が舞い踊っているよう。

床には花びらのような光る苔が敷き詰められ、歩くたびにふわりと光る。


「わあ…」


思わず息を呑んだ。こんなに綺麗な場所が封印されていたなんて。

そして部屋の中央に、小さな光る泉がこんこんと湧いている。その泉のほとりに——


「あ…」


いた。


小さくて、ふわふわで、真っ白な毛玉のような生き物が、泉の縁で小さく丸くなって眠っていた。

猫のような、ウサギのような、でもどちらでもないような不思議な姿。

手のひらサイズの小さな体に、雲のようにふわふわの毛。

小さな翼が背中についていて、寝息のたびにぴくぴく動いている。


「天使…?」


私がそっと呟いた瞬間、その子がゆっくりと目を開けた。

まん丸で大きな、水色の瞳。まつげがくるんと長くて、見つめられただけで心がとろけそうになる。


「ふみゅ?」


小さく首を傾げる仕草が、もう反則級にかわいい。


「こんにちは」


私がそっと声をかけると、その子はびっくりしたように小さく跳ねた。

でも逃げようとはしない。むしろ、興味深そうに私を見つめている。


「ふみゅみゅ?」


まるで「あなたは誰?」と聞いているみたい。


「私はルナよ。あなたのお名前は?」

その子は少し考えるように小首を傾げてから——


「ふわり…」


か細い声で答えた。


「ふわり?それがあなたのお名前ね。可愛い名前」


私がにっこり笑うと、ふわりちゃんも嬉しそうに小さく微笑んだ。その笑顔がまた天使すぎる。


「ここに一人でいたの?寂しくなかった?」

「ふみゅう…」


ふわりちゃんが少し悲しそうな表情になる。やっぱり寂しかったのね。

私がそっと手を差し出すと、ふわりちゃんは警戒することなく、私の手のひらにぽてんと飛び移った。


「わあ、軽い!それに暖かい」


まるで温かいマシュマロを持っているみたい。こんなに癒される感触は初めて。


「ふみゅみゅ〜」


ふわりちゃんが私の手のひらでくるんと丸くなる。完全に警戒を解いてくれたみたい。


「みんなにも紹介するわね。きっとあなたを気に入るはず」


私がふわりちゃんを胸に抱いて扉に向かうと——


「ルナ!大丈夫か?」

「どうでしたの?」

みんなが心配そうに迎えてくれた。


「大丈夫よ。それより、みんなに紹介したい子がいるの」


私がそっと手のひらを開くと——


「「「「きゃああああああ!」」」」


リリィ、カタリナ、ミラ、そして意外にもエドガーまでが、同時に黄色い声をあげた。


「な、なんだこの破壊力は…」

エドガーが頬を赤らめながら呟く。


「ふわりちゃんっていうのよ」

「ふみゅ〜」


ふわりちゃんがみんなに向かって小さく手を振る仕草がまた可愛すぎて、全員がメロメロになった。


「だ、ダメだ…こんなに可愛い生き物を見たら、戦う意欲が失せる…」

リリィがガクガクと膝をついている。


「これが封印されていた理由ですわね…」

カタリナがふらふらと壁に手をついた。


「可愛すぎて世界が平和になってしまう…」

ミラがため息をする。


「ほう、これは『平和の化身』だな」

マーリンが感心している。


「古代の人々が保護したのも分かる。こんなに純粋で愛らしい存在は、確かに守らなければならない」

『ルナちゃん〜、その子とっても懐かしい香りがする〜』

スライムキングもふわりちゃんの前でぽわぽわと嬉しそうに光っている。


「ふみゅ?」

ふわりちゃんがスライムキングを見つめると、急にぱあっと明るく光った。


『わあ〜!光が戻った〜!』

そう、ふわりちゃんが現れた途端、スライムキングの光がいつもの明るさに戻っている。


「やっぱり!ふわりちゃんが寂しがってたから、ライトダンジョンの光が弱くなってたのね」

私の推理に、みんなが納得顔で頷いた。


「でも、なんで今頃封印が弱くなったんでしょう?」

エリオットの質問に、マーリンが髭をしごく。


「恐らく…ふわりちゃんが成長したからだろう」

「成長?」


「古代の記録に『時満ちて、光の使い目覚めん』とある。

つまり、ふわりちゃんが大人になる時期が来たということだ」


「ふみゅみゅ〜」


ふわりちゃんが私の手のひらでくるくる回る。まるで「そうなの〜」と言ってるみたい。


「それで外の世界が恋しくなったのね」

私がふわりちゃんの頭を優しく撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。


「よし!それじゃあ俺たちと一緒に冒険するか?」

エドガーがかっこつけてポーズを決めるが、ふわりちゃんを見つめる目は完全にデレデレだ。


「ふみゅ!」


ふわりちゃんが嬉しそうに小さく羽ばたく。どうやら賛成みたい。


「私のペットになる?」

私が聞くと、ふわりちゃんは首を横に振った。


「ペットじゃなくて…お友達がいい?」


今度は大きく頷いた。

そうよね、この子は対等な関係を望んでいるのね。


「よろしくお願いします、ふわりちゃん」

「ふみゅみゅ〜」


ふわりちゃんが私の頬にふわりと触れる。

まるでキスをしているみたいで、とても幸せな気持ちになった。


「それにしても」

ミラが苦笑いしながら言う。


「こんなに平和的な解決は初めてね。戦闘準備は何だったのかしら」

「俺の右手も疼かなかった…」

エドガーが不思議そうに右手を見つめている。


「でもこれが一番いい結末よ」


私がふわりちゃんを肩に乗せると、みんなが優しい笑顔を浮かべた。


こうして、ライトダンジョンの異変は、新しい仲間との出会いという素敵な形で解決した。


ふわりちゃんという最高に可愛い天使が仲間になって、これからの生活がもっと楽しくなりそう。

きっと、この子がいれば少しくらいの爆発事故も可愛く見えるはず。


…いえ、爆発は可愛くならないか。

でも、ふわりちゃんがいれば、みんながすぐに機嫌を直してくれそう。


「ふみゅ〜」


肩の上でふわりちゃんがあくびをする姿を見ていると、今日という日が特別な一日だったことを改めて実感した。

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