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第4話 学院初日と完璧お嬢様の登場

アルケミ家の屋敷を出て、王立魔法学院への道を歩く。

制服に身を包んだ私は、胸の高鳴りと緊張で小さく跳ねるような気分だった。


……まあ、緊張というよりも「今日の実験ネタを思いつくかどうか」のほうが重要ではある。


学院の門をくぐると、さすがにスケールが違う。

塔の先端まで届く石造りの建物、魔力の帯が輝く広場、そして魔法陣が敷かれた講堂……。


「わぁ……ここが、私の新しい“実験場”ね」


思わず胸が高鳴る。

いや、授業も大事だけど、やっぱり目の前の光景が気になる。


講義室に入ると、すでに数人の生徒が座っていた。

その中に、ひときわ目を引く美少女がいた——


赤茶色の髪に蒼い瞳。

完璧な縦ロール。

そして、誰もが振り返るその華麗さと気品——カタリナ・ローゼン。


「……あの、私、今日から転入なんです」


小さく自己紹介をする私に、周囲はちらりと注目。

カタリナは眉ひとつ動かさず、優雅に微笑む。


「ルナ・アルケミさんですね。よろしくお願いします」


その声に、私は心の中で軽く動揺。

な、なんて完璧なんだ……!


しかし、授業は待ってくれない。

今日のテーマは「魔力と元素の基礎反応」。


教授が大きな声で説明を始める。

私は手元のノートに、前世の化学知識を絡めつつメモを取る。

しかし、好奇心旺盛な私は、どうしても目の前の試薬台に目が行く。


思わず手を伸ばして——


「おっと、危ない!」


……いや、やっぱりやってしまった。

試薬の瓶をひとつ転がしてしまい、小さな爆発音とともに、甘い香りが教室に充満。

生徒たちは咳き込み、カタリナは眉をひそめる。教授も困った顔。


「ルナ・アルケミ、ちょっと落ち着きなさい!」


私は慌てて手を振り、瓶を元に戻す。

しかし、机の上の液体は不思議な光を放ち、ほんのり虹色に揺れている。


「……これは、ただの失敗じゃない」

胸の中で研究者魂が沸き立つ。前世の知識と魔法の組み合わせ——これこそ、私の得意分野。


授業後、カタリナが私に近づいてきた。


「ルナさん……あなた、本当に面白いわね。危なっかしいけど、才能は確かにある」


微笑まれると、なんだかくすぐったい気分。

私は咳き込みながら、しかし負けじと答える。


「ふふん、事故も発明のうちですもの!」


その瞬間、背後で小さな騒動が起きる。

別の生徒がうっかりポーションをひっくり返し、床が光と香りで一面虹色に……。

私は思わず笑いながら、ハンカチを取り出して軽く拭く。


「これぞ、魔法と錬金術のコラボ……教室が小さな舞台になっちゃいましたね」


カタリナは目を丸くしつつも、ちょっと微笑む。

そう、私たち二人は違うタイプの天才——完璧お嬢様とドジっ子天才。

しかし、魔法と錬金術の世界では、どちらも輝ける場所があるのだ。


こうして、学院生活初日から小さな大騒動を巻き起こしつつ、私はまたひとつ学んだ。


「魔法も錬金術も、面白くなければ意味がない!」


今日もルナ・アルケミの、ちょっとドジで天才な日々は始まったばかりだった。

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