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第3話 屋敷探検と小さな大騒動

朝日が柔らかく屋敷の窓から差し込み、ルナ・アルケミこと私の新しい一日が始まった。


……目覚まし時計などという文明の利器はこの屋敷には存在しない。

ルナ流目覚め方、それは「自然覚醒と好奇心のコンボ」である。


目を覚ました瞬間、まず思ったのは——


「今日はどんな爆発を……じゃなくて、実験をしてみようかしら!」


いやいや、落ち着け自分。

屋敷の使用人はまだ朝の掃除に追われている。

昨日の“甘い煙事件”で、きっと全員が心の中で深く息を吐いているはずだ。


そんなことを考えながら、私はベッドからそろりと降り、書斎へ向かう廊下を歩いた。


しかし、その途中——


「きゃあっ!?」

廊下の角で掃除をしていたメイドが、バケツの水を思いっきり床にぶちまけた。


いや、これはもうアルケミ家の日常風景として許容範囲内……と思った瞬間、私も滑った。

手に持っていた銀のトレーに乗った小瓶群が宙を舞う。


「わわっ、待って待って待って――!」


飛び散る瓶たち。青、赤、緑、金色の小瓶が空中で舞い踊る。

廊下に小さな虹が描かれたようだ。


幸い、床は磨かれていて瓶は割れなかった。だがメイドたちは一斉に後ずさり、目を丸くしている。


「お嬢様……まさか、また……?」


「ええ、でもご安心を。これは“空中散布型観察実験”ですのよ!」


もちろん誰も納得しない。


やっと書斎にたどり着くと、机の上には昨日の“魔力増幅ポーション(試作1号)”が置かれている。

軽く瓶を振ると、液体は昨日よりも美しく光り、ゆらゆらと踊っている。

私の小さな大爆発は、どうやら何か新しい発見の前触れらしい。


その時、執事のハロルドが静かに部屋に入ってきた。


「お嬢様、また実験ですか……?」


「ええ、でも今回は実験じゃないわ。ほら、観察用だから」


ハロルドは眉をひそめながらも、手元の小瓶を見守る。


机の上で液体を混ぜると、小さな光がぽんぽんと跳ね、甘い香りが漂った。

思わず私は、「次はどんな変化が起きるのか……」と興奮してしまう。


しかし、ハロルドの静かな観察も無駄ではなかった。私が火力を少し上げすぎた瞬間——


——ボンッ!


小さな爆発でポーションが光の粒となって飛び散る。

ハロルドはびっくりして飛びのき、壁にぶつかる寸前でギリギリセーフ。

その衝撃で、書斎の小さな棚から試薬瓶がいくつか転がり落ちる。


「お嬢様……本当にもう!」

「うふふ、でも見て! 光の結晶が踊ってるわ!」


部屋は甘い香りと光の粒で満たされ、まるで小さな魔法の舞踏会。

ハロルドはため息混じりに片付けを始める。


次に私が試したのは、屋敷で集めた珍しい薬草を使った「香りの飛び道具」。

瓶の中で草を細かく刻んで混ぜると、香りが屋敷中にふわりと広がり、メイドたちは思わず鼻をくんくんさせて距離を取る。


「お嬢様、また匂い攻撃ですか……?」

「攻撃じゃないわ、これは“実験的芳香拡散”よ」


その間にも、ハロルドは紙に書き留めながら、


「お嬢様、この発想力と実行力は世界でも唯一無二……でも安全第一でお願いしますね」


私はにっこり笑いながら、次の実験プランを思い描く。


「次は火力を少し抑えて、抽出温度を変えて……あ、それから煙を少し制御してみようかな」


屋敷内の小さな書斎で、一人静かに(?)楽しむこの時間が、私は大好きだった。

異世界での転生生活——ルナ・アルケミとしての錬金術の日々は、今日もこうしてゆるやかに、そして確実に始まっていくのだった。

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