表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
258/258

最終話 永遠に続く三人の物語

卒業前夜。学院の部屋に三人が集まっていた。


私は机の上に、何か特別なものを準備していた。


「これ、何ですの?」カタリナが静かに聞いた。

「あ、えっと。『未来を少しだけ見せる紅茶』を調合してみたんだ」


「『未来を見せる』?」エリオットが眉をひそめた。

「時間魔法と錬金術の融合ですね。理論的には可能かもしれませんが、制御が難しいのではないでしょうか」


「大丈夫だよ。一回だけなら失敗しないと思う」


ルナは三つのティーカップに紅茶を注いだ。淡い紫色の液体の中には、光がゆっくりと流動しているように見えた。


「では、飲みましょう」カタリナが言った。

「同時に」


三人は同時にティーカップを手にした。紅茶を飲んだ瞬間、世界が変わった。


~映し出される未来


最初に見えたのはエリオットの背中だった。


大きな研究所の机の上には、古代魔法陣の図面が積み重ねられている。彼の手は丁寧にその図面をスケッチしていた。集中した表情には深い満足感が満ちていた。研究に没頭するエリオット。それが彼の未来だ。


次に見えたのはカタリナの背中だった。


豪華な宮殿の中、彼女は大勢の人々に囲まれていた。外交の場で、完璧で優雅な姿勢で話をしている。その言葉ひとつひとつが人々を導いていた。外交の場で多くの人々をまとめるカタリナ。それが彼女の未来だ。


最後に見えたのはルナの背中だった。


彼女は旅の途中にいた。砂漠、山、海。様々な風景が彼女の周りに広がっている。手に握った調合器で、旅先でも常に新しい錬金術を生み出していた。旅の途中でも新しい発見を続けるルナ。それが彼女の未来だ。


~ 再会の約束


その時だった。

もう一度、ティーカップが映った。


別の場所で、三人が再び紅茶を飲んでいる。映像からは場所ははっきりしなかったが、三人の表情は明るく、笑い合っていた。ティーカップを手にして、笑い合う三人。確かに再会の約束がそこにあった。


~現実へ戻る


映像は消えた。

三人の瞼から現実が戻ってきた。三人は同時に目を開け、互いに見つめた。


「見えた?」ルナが聞いた。


「ええ、見えました」カタリナは静かに答えた。

「私たちは、それぞれの道を歩むのですね」


「そうですね」エリオットが淡々と言った。

「ですが、最後に我々は再び集うみたいですね」


「うん」ルナが頷いた。

「紅茶を飲みながら、笑い合う」


三人は同時にティーカップを伏せた。


その瞬間、光が一度だけティーカップから放たれた。その光は三人の約束を象徴していた。別れではなく再会。終わりではなく新しい始まり。すべてがティーカップに閉じ込められたように見えた。


~最後の言葉


「ルナさん。素敵な紅茶をありがとうございました」カタリナは優雅に微笑んだ。

「これ以上の卒業の思い出は、ありませんわ」


エリオットも眼鏡を直した。


「理論的には、この『未来を少しだけ見せる紅茶』の成功率は極めて低いはずでした」

「成功しましたね」彼は珍しく笑った。


「ルナさんの『予期しない錬金術』は、本当に素晴らしい」


「ありがとう」ルナは頭を下げた。


「そしてね。約束だよ。必ずまた会う。紅茶を飲みながら」

「ですわね」カタリナが手を握った。


エリオットもその手に自分の手を重ねた。私もその上に手を重ねた。


~ 別れと新しい始まり


卒業式の後、三人は学院の前で別れを告げた。


「では、それぞれの道へ」


「ええ。頑張ります」


「また、どこかで」


三人はそれぞれの方向へ歩んでいった。


~毎年冬に訪れる奇跡


だが毎年冬になると、不思議なことが起きる。


それぞれ別の場所にいる三人の元に、同じ時刻に、あの時のティーカップが現れるのだ。その中には『未来を少しだけ見せる紅茶』が一杯だけ用意されていた。


三人はその時刻に紅茶を飲んだ。そして、その中に互いの姿を見た。遠く離れていても、一杯の紅茶で繋がっていた。


それはルナの最後の錬金術の余韻なのか。それとも単なる偶然なのか。だが三人はその理由を問い掛けることはなかった。ただ一杯の紅茶で繋がっていることを大切にしたのだ。


ふわりちゃんとハーブも、その光景を見守り続けたという。


~エピローグ


『未来を少しだけ見せる紅茶』


それはルナが作った最も大切な錬金術だった。別れの中に再会を映し出す紅茶。友情を永遠に閉じ込める紅茶。その味は決して消えることがなかったという。


毎年冬の夜。三人はそれぞれの場所で一杯の紅茶を飲む。そして、その中に互いの笑顔を見る。


それが彼らの約束だった。


永遠の約束。


ルナ・アルケミの錬金術。

転生者として、がむしゃらな3年間で彼女が創った光は、決して消えることなく、毎年冬の夜三人を照らし続けるのだ。


~おわり~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ