第231話 王立魔法学院 体育大会 ②
「第二種目は『クラス団体錬金術調合バトル』じゃあああ!」
メルヴィン卿が興奮して両手を広げる。
「各クラスから3名ずつが選ばれ、協力して魔法薬を調合する!完成した薬の『効果の派手さ』と『完成度』で順位を競うのじゃ!」
つまり、全9クラスが、各3名ずつ(計27名)で、それぞれの薬を調合するということか。
「ただし!」メルヴィン卿が指を立てる。「使える材料はランダムに決定される。そして、調合中に『予期しない化学反応』が起こる可能性もある!」
各クラスから選ばれたのは、以下の通りだ。
1年生Aクラス:クラリス、男子生徒A、女子生徒B
1年生Bクラス:男子生徒C、女子生徒D、男子生徒E
1年生Cクラス:女子生徒F、男子生徒G、女子生徒H
2年生Aクラス:男子生徒I、女子生徒J、男子生 生K
2年生Bクラス:女子生徒L、男子生徒M、女子生徒N
2年生Cクラス:フラン、エミリ、ノエミ様
3年生Aクラス:私、カタリナ、エリオット
3年生Bクラス:男子生徒O、女子生徒Q、男子生徒R
3年生Cクラス:男子生徒P、女子生徒S、男子生徒T
私たちのチームは、私、カタリナ、エリオットだ。
錬金術室に案内されると、各チームの前に材料が置かれていた。
「材料は……」
カタリナが確認する。
「『光の花びら』『透明な水晶』『魔力の結晶』……あ、これは『魔力可視化薬』の材料ですわ」
「知ってるの?」
「ええ。ルナさんが前に作っていたもの。ただし、今回は『火の色』がランダムに決定されるはずですが……」
メルヴィン卿が説明する。
「各チームに与える火の色は、ルーレットで決定される。その火の色によって、薬の効果が変わるのじゃ」
エリオットが呟く。
「前回と同じですね。つまり、同じ材料でも、火の色次第で全く異なる薬が完成する、と」
「その通りじゃ」
ルーレットが回される。
私たちに与えられたのは、『紫色の火』だった。
「紫か……」
前回は、この火で『透明化の薬』が完成したはずだ。だが、今回の材料は『魔力可視化薬』の材料だ。
「さあ、調合を始めてください!」
グリムウッド教授の掛け声と共に、全チームが調合を始める。
私は『光の花びら』を炉に入れ、紫色の火で加熱する。紫色の火から立ち上る蒸気も、薄紫色だった。
カタリナが『透明な水晶』を砕いて加える。
エリオットが『魔力の結晶』を投入するタイミングを計る。
やがて、液体が完成する。見た目は淡い紫色で、なんとも神秘的だ。
「完成ですわね」
カタリナが満足そうに呟く。
一方、他のチームはどうだろうか?
1年生Aクラスのクラリスが、緑色の火で調合を進めている。彼女の前には『音の草』『音波の石』『響く水』がある。
「『音声魔法の薬』ですな」
クラリスが集中して調合を進めると、やがて青緑色の液体が完成する。
「できました!」
彼女の顔は誇らしげだ。
2年生Cクラスのフランが、赤色の火で調合している。
「あ〜、これ炎系です〜♪」
フランの前には『炎の花』『温度の石』『燃える水』がある。
「『炎増幅薬』ですね」
彼女が手慣れた動きで調合を進めると、真っ赤な液体が完成する。
「やった〜♪」
フランが喜んでいる。彼女は超優秀な生徒だけあって、調合も見事だ。
3年生Cクラスの男子生徒Pが、金色の火で調合している。
「『聖光の薬』ですね」
やがて、黄金色に輝く液体が完成する。
「美しい……」
観客席から感嘆の声が上がる。
全てのチームの調合が完了した。
次は、『効果の確認』だ。
各チームが作った薬を、指定された対象に使用する。
1年生Aクラスのクラリスのチームが作った『音声魔法の薬』を、特別に用意された人形に投与すると、人形から美しい音色が発せられ始める。
「きれい〜!」
観客席から拍手が上がる。
2年生Aクラスのチームが作った薬は『治癒の薬』だったようで、傷を持つ人形に投与すると、傷がすっかり消えてしまった。
「素晴らしい!」
グリムウッド教授が手を叩く。
2年生Bクラスのチームが作った薬は『幻覚の薬』だったらしく、投与された人形が、存在しない何かを見つめ始める。
「不気味だ……」
観客席からは、笑いと悲鳴が混在している。
2年生Cクラスのフランのチームが作った『炎増幅薬』を試すと、投与された人形から、勢いよく炎が噴き出す。
「わあ!」
フランが喜んでいる。彼女のチームは確実に上位だ。
3年生Bクラスの男子生徒Oのチームが作った薬は『力増幅の薬』だったようで、投与された人形の筋肉が隆々と発達し始める。
「おお、これはいい!」
カンナバール教官が興奮気味に叫ぶ。
3年生Cクラスの男子生徒Pのチームが作った『聖光の薬』を試すと、投与された人形から、淡い金色の光が放出される。
「美しい……」
観客席から、うっとりとした声が聞こえる。
そして、いよいよ私たちのチームの番だ。
私たちが作った『魔力可視化薬』を、人形に投与する。
人形から、淡い紫色の光が放出され始める。だが、それだけではない。
人形の周りに、複雑な魔法陣が浮かび上がり始めるのだ。
「あ、あ、あああああ!」
カタリナが驚愕の声を上げる。
「これは……『魔力の流れ』を可視化しているのですわ!」
確かに、人形の体内を流れる魔力が、複雑な線となって浮かび上がっている。
「なんと!この薬は、魔力を『文字通り』可視化するのじゃあ!」
メルヴィン卿が興奮して叫ぶ。
「つまり、魔力そのものの流れを見ることができるわけか」
エリオットが呟く。
観客席からは、大きな歓声が上がった。
最終的に、順位は以下のようになった。
1位:3年生Aクラス(私たちのチーム)『魔力可視化薬』
2位:3年生Cクラス(男子生徒Pのチーム)『聖光の薬』
3位:3年生Bクラス(男子生徒Oのチーム)『力増幅の薬』
「素晴らしい!」
グリムウッド教授が手を叩く。
だが、ここで問題が発生した。
「あ、あああああ!」
突然、全ての薬が、何かの拍子に混ざり合い始めたのだ。
棚から落ちた『音声魔法の薬』が『炎増幅薬』に混ざり、さらに『聖光の薬』が加わり……
「ちょっと待って!」
私が叫ぶ。
間に合わなかった。
全ての薬が一つの大きな瓶の中で混合し、複雑な化学反応を起こし始める。
「これは……」
カタリナが色を失う。
瓶から、虹色の煙が立ち上り始める。
「あ、あああああああああああ!」
私たちは一斉に錬金術室から飛び出す。
観客席からも悲鳴が上がっている。
「大変です!」
グリムウッド教授が叫ぶ。
「錬金術室が……爆発します!」
その時、ノエミ様が立ち上がった。
「治癒の光!」
彼女が魔法を発動させると、淡い光が錬金術室を包み込む。
「あ、あああああああああああ!」
爆発の衝撃が、その光の壁に吸収される。
だが、爆発の力は想像以上に大きかった。
光の壁が破れる。
その時、フランが走ってきた。
「待って〜!」
彼女が炎増幅の魔法を発動させると、逆に爆発の炎をコントロールしてしまった。
「え?」
フランが炎を手のひらで握りしめ、それを空に放射する。
炎は夜空に花火のように散った。
「わあ〜、花火だ〜!」
観客席から歓声が上がる。
エミリが弓を引いた。
「音声魔法の矢!」
彼女が放った矢が、虹色の煙に吸収され、その煙から美しい音色が発せられ始める。
「きれい〜!」
観客席は大盛り上がりだ。
一見、全てが上手く収まったかに見えた。
だが、最大の問題はまだだった。
「あ、あああああああああああ!」
錬金術室から、巨大な虹色のキノコが生え始めたのだ。
去年のキノコより、遥かに大きい。
「これは……」
グリムウッド教授が絶句する。
「『パーフェクト虹色キノコ・エディション』ですね……」
学院の屋上に、巨大なキノコがにょきにょきと生えている。それも、虹色に光ながら、音を発している。
「あ、あはは……」
私は乾いた笑いを浮かべる。
カタリナが疲れた顔で言う。
「ルナさん……これは……」
「今回もルナちゃんのせいじゃないと思うんだけど〜♪」
フランが優しく言ってくれる。
「ノエミ様も頑張ってくれたし〜♪」
「えっと……」
ノエミ様も困った顔をしている。
「エミリも手伝ったし〜♪」
フランが続ける。
「み、皆のせいですね……」
エミリが申し訳なさそうに呟く。
でも、体育大会はまだ続いている。
肩の上のふわりちゃんが「ふみゅみゅ〜」と楽しそうに鳴いている。
この後の種目では、何が起こるのか……。




