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第23話 勇者一行と再会と知能のある魔物

「今日は中級ダンジョン『古の森の迷宮』での実習です」


グリムウッド教授の発表に、クラス中がざわめいた。


「中級ダンジョン? 危険じゃないの?」

「大丈夫です。護衛として冒険者の方々にも同行していただきます」


教授が扉の向こうを示すと——


「よお、久しぶりだな!」

「えっ、その声は……」


扉から現れたのは、見慣れた勇者一行と数名の冒険者たちだった。


「エドガー! みんな!」

「元気にしてたか?」


エドガーが右手を額に当てながら登場した。


「フフフ……我が封印されし右手が疼いている……今日は何か大きなことが起こりそうだな」


「相変わらず厨二病が炸裂してますわね……」

カタリナが苦笑いしている。


「ルナちゃん! 私たち、このダンジョンの案内を頼まれたの!」

リリィが嬉しそうに手を振る。


「本当に? 偶然ね!」


「偶然じゃないのよ……」

ミラが疑心暗鬼そうに呟いている。


「実は学院から正式に依頼を受けたのじゃ。このダンジョンに最近、奇妙な魔物が現れるようになってな」

マーリンが説明してくれた。


「奇妙な魔物?」

「普通の森の魔物なのに、なぜか知能が高くなって、変な行動を取るらしいのじゃ」


「面白そうですね」


私が興味深そうに言うと、エリオットが心配そうに見つめた。


「ルナさん、また何か企んでませんか?」

「大丈夫よ。今日は『魔物知能測定キット』を持ってきたから」


「それがすでに怪しいですわ……」


——古の森の迷宮入口——


迷宮は深い森の中にあり、古い石造りの遺跡のような入口が木々の間に隠れていた。


「雰囲気ありますね」


「フフフ……この闇の気配……我が右手の封印が緩んでいくのを感じる……」


エドガーが中二ポーズを決めている間に、私は『魔物知能測定キット』を準備した。


「『知能分析薬』『学習能力測定液』『思考パターン解読剤』……完璧ね」

「ルナ、そのキットで何をするつもりだ?」


「魔物の知能がなぜ高くなったのか調べるのよ」


「また実験ですの……」

カタリナがため息をついている間に、迷宮に入った。


——迷宮内部——


最初の通路を進んでいると、茂みからウサギのような魔物が現れた。


「ホーンラビットね」


普通なら突撃してくる魔物なのに、なぜかじっとこちらを観察している。


「賢そうな目をしてますわね」

「確かに……普通のホーンラビットより知的に見える」


私が『知能分析薬』を取り出すと、ホーンラビットがさらに興味深そうにこちらを見つめた。


「実験させてもらうわね」

薬を一滴、地面に垂らすと——


——ピカッ


薬が光って、ホーンラビットの知能レベルが数値で表示された。


「IQ120? 人間並みじゃない!」

「すげー、本当に賢くなってる!」


エドガーが驚いている間に、ホーンラビットがこちらに近づいてきた。


「ピーピー」


まるで挨拶をするように鳴いている。


「可愛い……」

私が手を伸ばすと、ホーンラビットが優しく頭を擦り付けてきた。


「完全に友好的ですわね」


その時、奥から低い唸り声が聞こえてきた。


「今度は何だ?」


現れたのは、大きなオオカミ系の魔物フェンリスウルフだった。


「危険ですよ!」


エリオットが警戒するが、フェンリスウルフも攻撃的な様子がない。むしろ——


「ワオーン」

まるで挨拶をするように遠吠えした。


「この子も友好的ね」

私が『学習能力測定液』を使うと——


——キラキラ


フェンリスウルフの学習能力が測定された。


「学習能力も人間以上……いったい何が起こってるの?」

「フフフ……これは何らかの魔力の影響だな。我が右手が真実を告げている……」


エドガーが厨二ポーズを決めながら分析している。


「エドガーの直感、たまに当たるのよね……」

リリィが感心している間に、さらに奥から複数の魔物が現れた。


ゴブリン、コボルト、トレント……様々な魔物が行儀よく一列に並んでいる。


「整列してますわ……」

「まるで学校の授業みたい」


魔物たちがこちらを見つめている中、一匹のゴブリンが前に出てきた。


「ゴブ、ゴブゴブ!」


まるで何かを説明しようとしている。

「『思考パターン解読剤』を使ってみましょう」


薬をゴブリンにかけると——


——ピンッ


ゴブリンの思考が言葉として浮かび上がった。


『こんにちは、人間の皆さん。私たちは最近、急に賢くなったんです』

「喋った! 思考が読めた!」


『森の奥に不思議な光る石があって、それに触れてから頭が良くなったんです』

「光る石?」


『皆さんも見てみませんか? とても美しい石です』


ゴブリンが案内してくれるというのだ。


「罠かもしれませんわ」

カタリナが警戒するが——


「フフフ……我が右手は危険を感じていない。むしろ……何か大いなる力を感じる……」

「エドガーがそう言うなら大丈夫かも」


結局、魔物たちの案内で森の奥へ向かうことになった。


——迷宮最深部——


森の奥には大きな空洞があり、中央に美しく光る水晶が浮かんでいた。


「わあ、綺麗……」


水晶は虹色に輝いていて、周囲に柔らかな光を放っている。


「これが知能向上の原因ですわね」

「『賢者の石』の亜種でしょうか……」


エリオットが分析している間に、私は『魔力分析薬』を取り出した。


「どんな魔力が宿っているか調べてみましょう」

薬を一滴、水晶に向かって落とすと——


——ピッカァァァ


水晶が激しく光った。


「うわああ、眩しい!」


光が収まると、水晶から不思議な声が聞こえてきた。


『久しぶりじゃのう、錬金術師よ』

「水晶が喋った!」


『わしは古代の賢者が残した知識の結晶じゃ。長い間眠っておったが、最近目覚めたのじゃ』

「古代の賢者……」


『そして先ほどの薬で完全に覚醒した。礼を言うぞ』


私の実験が、古代の賢者を目覚めさせたのだ。


「フフフ……やはりか。我が右手は最初から気付いていた……」


エドガーが決めポーズ。


『おぬしらには森の魔物たちを理解してくれた礼をしたい』


水晶が光ると、私たちの周りにキラキラした粉が舞い散った。


——ピカピカピカ


「あら、体が軽やか……」

「魔力も向上してますわ」


賢者からの祝福を受けていると、魔物たちがお礼にやってきた。


「ピーピー」「ワオーン」「ゴブ!」


みんな嬉しそうに鳴いている。


「私たちも友達になれたのね」


その時、水晶がさらに光って——


——ボンッ


小さな爆発と共に、美しい宝箱が現れた。


「今度は何ですの?」

『これは知識の宝箱じゃ。開ければ有用な知識を得られるじゃろう』


エドガーが宝箱を開けると——


——キラキラキラ


虹色の光が溢れて、みんなの頭に新しい知識が流れ込んできた。


「魔物との意思疎通の方法が分かる……」


「私は魔物の生態学が……」


「フフフ……我が右手に新たな封印が……じゃなくて、魔物語が理解できるぞ……」

エドガーも新しい能力を得たようだ。


『これで魔物と人間がより理解し合えるじゃろう』


賢者の言葉通り、魔物たちがこちらに寄ってきた。


「こんにちは、人間さん」

「お元気ですか?」


今度ははっきりと言葉で話しかけてくる。


「すごい! 普通に会話できるわ!」


「これは革命的ですわね」

カタリナも興奮している。


「でも一つ心配があります」

エリオットが指摘した。

「この知識が悪用されたら危険では……」


確かに、魔物と意思疎通ができる能力は使い方によっては危険だ。


「大丈夫じゃ」


賢者が答えた。


『この知識は心優しい者にしか定着せん。邪悪な心の持ち主には効果がないのじゃ』

「安全装置があるのね」


「フフフ……流石は古代の賢者……我が右手も納得している……」


——帰り道——


魔物たちに見送られながら迷宮を出た。


「今日は戦闘なしで終わりましたわね」

「魔物と友達になるなんて、滅多にない経験だった」


エリオットも満足そうだ。


「フフフ……我が封印されし右手が新たな力を……」

「エドガー、普通に『魔物語覚えた』って言えばいいのに」

リリィがツッコんでいる。


「それじゃあ格好つかないだろう!」


みんなで笑いながら学院に戻る途中、私は今日の実験結果をまとめていた。


「『知識向上薬』が作れるかもしれないわね」

「また新しい実験ですの?」


カタリナが心配そうに言う。


「大丈夫よ、今度は爆発しない薬を作るから」

「そのお言葉、何度お聞きしたでしょう……」


——その夜、屋敷にて——


今日得た知識を元に、『魔物親和薬』の開発を始めた。


「『友情の粉』『理解促進液』『共感増幅剤』を組み合わせて……」


慎重に調合していくと——


——ポンッ


小さく光って、薄緑色の薬が完成した。


「今度は爆発しなかった!」


薬は優しく光りながら、森のような爽やかな香りを放っている。


「明日、エドガーたちに試してもらいましょう」


窓の外を見ると、遠くの森がぼんやりと光っているのが見えた。

きっと賢者の水晶が、今夜も森を見守っているのだろう。


「今度また森の魔物たちに会いに行こうかしら」


楽しい再会を想像しながら、私は眠りについた。

魔物との友情も、素晴らしい発見の一つだった。

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