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第224話 王都の夏祭り一日目

王都に夏祭りの季節がやってきた。

街中が煌びやかに飾られ、屋台が立ち並び、人々の賑やかな声が響いている。


「すごい人ですわね」

カタリナが優雅に扇子を揺らしながら、祭りの様子を見渡す。


「うん!活気があって楽しいね!」

私、ルナ・アルケミは肩にふわりちゃんを乗せて、ワクワクしながら歩いていた。


「ふみゅ〜!」


今日は王都最大の夏祭りの初日。三日間にわたって開催される大規模なイベントだ。


「ルナさん、エリオットも来るそうですわよ」

「本当に?」


その時――


「ルナさん、カタリナさん!」


エリオットが人混みの中から手を振って近づいてきた。


「お待たせしました」

「ちょうど良いタイミングですわ」


私たちは合流して、祭りを回り始めた。

焼きリンゴ、肉の串焼き――美味しそうな屋台がたくさんある。


「これも食べたい、あれも食べたい!」

私が目を輝かせていると――


「皆の者、集まれ〜い!」

広場から大きな声が聞こえてきた。


「何でしょう?」

私たちは声のする方へ向かった。


すると、広場には特設ステージが設置されていて、派手な衣装を着た男性が立っていた。


「あれは……バルナード侯爵ですわ」

「皆の者〜!!今年の夏祭りも盛り上がっていくぞーーー!」

バルナード侯爵が声を張り上げる。


「本日は特別企画!『王都夏祭り大運動会』を開催するぞ!」


「大運動会……?」

私は首を傾げた。


「貴族も庶民も関係なし!誰でも参加できる、楽しい競技大会じゃ!」

バルナード侯爵が続ける。

「優勝者には豪華賞品!そして何より、王都中の笑顔が見られる!さあ、参加者は前へ!」


「面白そうですわね」

カタリナが興味深そうに言う。


「参加してみる?」

「え、私たちも?」

「ええ。せっかくのお祭りですもの」

私たちは顔を見合わせて――参加することにした。


「では、最初の競技は『パン食い競走』だ!」


バルナード侯爵が説明する。

「ルールは簡単!吊るされたパンを、手を使わずに食べながらゴールを目指す!」


「懐かしい競技ですわね」

カタリナが微笑む。


参加者たちがスタートラインに並ぶ。私、カタリナ、エリオット、そして他の市民たち。


「よーい、スタート!」

一斉に走り出す。


最初の地点に、パンが吊るされている。


「よし!」

私は飛びついてパンに噛り付いた――が、パンが揺れて上手く噛めない。

「むぐぐ……」


隣では、カタリナが優雅にジャンプして、一口でパンを取っていた。

「さすが」


エリオットも器用にパンを取る。

「待って〜!」


私も必死にパンに食らいつき、何とか取ることに成功。


そして次の地点へ――


「え、次は……おにぎり!?」

今度は大きなおにぎりが吊るされている。


「これは難易度が高いですわね」

カタリナも苦戦している。


私は飛びついて――「むぐっ!」

顔中おにぎりまみれになりながら、何とか食べた。


「ルナさん、顔が……」

エリオットが苦笑する。


「気にしない!」


最後の地点へ向かうと――


「最後は……ケーキ!?」

巨大なショートケーキが吊るされている。


「これは無理ですわ!」

カタリナが叫ぶ。


でも、私は諦めない。


「えいっ!」

飛びついて、ケーキに顔を埋めた。

クリームが顔中に広がる。


「むぐむぐむぐ……」

甘い。そして、顔がベタベタだ。

でも、何とか食べ切った。


「ゴール!」

私は一番にゴールテープを切った。


「優勝はルナ・アルケミ嬢じゃ!」

バルナード侯爵が発表する。


「やった!」

私は両手を上げて喜んだ――が、顔はおにぎりとケーキまみれだ。


「ルナさん、お顔が大変なことになってますわよ……」

カタリナが呆れたように笑う。


「あはは……」

私は慌てて顔を拭いた。


「素晴らしい!これぞお祭りの楽しみ方!」

バルナード侯爵が拍手を送る。

「賞品は……これじゃ!」

侯爵が差し出したのは――豪華な食材の詰め合わせだった。


「わあ、ありがとうございます!」


「次の競技は『水風船投げ大会』だ!誰でも参加できるぞ!」

バルナード侯爵がさらに盛り上げる。


次々と楽しい競技が行われ、私たちも夢中で参加した。

水風船投げでは、エリオットが見事な投擲を見せて優勝。

綱引きでは、貴族チームと庶民チームに分かれて大盛り上がり。


「これは楽しいですわね」

カタリナも笑顔だ。


「うん!みんな笑ってる!」

確かに、貴族も庶民も関係なく、みんなが一緒に楽しんでいる。


「これぞお祭りだ!」

バルナード侯爵が満足そうに頷く。

「貴族も庶民も、笑顔になれる場所。それが私の目指すものだ!」

侯爵の言葉に、観客たちから拍手が起こった。


夕方、祭りが一段落した頃――


「バルナード侯爵様」

私たちは侯爵のもとへ挨拶に行った。


「おお、君たちか!楽しんでくれたかね?」

「はい!とても楽しかったです!」

「それは良かった。君たちの笑顔が見られて、私も嬉しいよ」


侯爵は豪快に笑った。


「ルナ・アルケミ嬢、明日の特別企画に参加してもらえないかね」

「特別企画……ですか?」


「ああ。『錬金術パフォーマンス大会』だ。学生たちの面白い錬金術を披露してもらおうと思っておるのじゃ」


私は目を輝かせた。


「面白そうです!参加します!」

「ルナさん……大丈夫ですの?」

カタリナが心配そうに尋ねる。

「大丈夫!きっと面白いものを作るから!」


「よし!期待しているぞ!」

バルナード侯爵が嬉しそうに笑った。


その夜、私は明日のパフォーマンスのために、錬金術の準備を始めた。


「何を作ろうかな……」

「ルナさん、暴走だけはしないでくださいまし」

カタリナの心配そうな声が聞こえる。


「分かってる、分かってる」

私は材料を並べながら考える。

お祭りにふさわしい、楽しくて華やかなもの――


「そうだ、あれを作ろう!」

私は閃いた。


「ルナさん……その顔、また何か企んでいますわね……」

カタリナがため息をつく。


「大丈夫!今度こそ完璧だから!」

私は自信満々に答えた。


「ふみゅ〜」

ふわりちゃんも応援してくれている。


王都の夏祭り初日は、笑顔と楽しさに溢れた一日となった。


そして明日は、私の錬金術パフォーマンス。

果たして、どんな結果になるのか――それは、明日のお楽しみだ。


「さあ、頑張るぞ!」


私は拳を握り締めた。

カタリナの不安そうな視線を感じながら――。

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