第160話 作戦開始
セレスティアさんの転移魔法で戦場に到着した瞬間、私は息を呑んだ。
「エドガー!」
目の前にいたのは、一週間前とは別人のようにボロボロになったエドガーたちだった。
でも、私たちの姿を見た瞬間、その疲れ切った顔に希望の光が宿った。
「ルナ!本当に来てくれたのか!」
エドガーが震える声で叫んだ。
右手を押さえているけれど、封印されし力がまだ彼を支えているようだった。
「ルナちゃん!」リリィがピンクの髪を振り乱しながら駆け寄ってきた。「もう本当に限界だったの!」
「わしもルナちゃんに会えて安心したわい」マーリンは杖にもたれかかりながらも、安堵の表情を浮かべている。
「ルナさん……本当に……」ミラも涙ぐんでいた。
私は胸が痛んだ。友人がこんなに苦しんでいたなんて。
「みんな、本当にお疲れ様!」
皆に体力回復薬や傷薬で治療する。
だいぶ顔色も戻ってきた。
さっきよりはボロボロ感が薄れたエドガーが口を開いた。
「さっきも作戦は聞いたが、具体的には?」
「先程申し上げた様に、まずエドガーさんたちにアンデッドの大群を突破して、リッチまでの道を開いてもらいます」
セレスティアさんが空中に戦術図を描いて見せた。
「皆さんが切り開いた道を駆け抜けてリッチに接近し、私が『支配の魔法』で足止めします。その隙に、ルナさんが『奇跡版』を直接リッチにかけて完全に無力化」
「私が直接薬をかけるの?」
「はい。そして最後に、セレーナさんの天使の力と、ふわりちゃんの浄化の力で追撃し、リッチを完全に消滅させるのです」
エドガーが目を見開いた。
「確かに、それなら根本的な解決になる。だが、ルナが危険に……」
「大丈夫です」セレスティアさんが自信を込めて答えた。「私が必ずルナさんを守ります」
「……分かった」エドガーが立ち上がった。
「やってみよう。ルナがわざわざここまで来てくれたんだ。俺たちも最後まで戦い抜く」
「エドガー……」
「封印されし右手よ、最後の力を貸してくれ」エドガーが右手を見つめた。「仲間を守るために」
「私も頑張る!」リリィが短剣を構えた。「最後の華麗な活躍、見せてあげる!」
「わしの魔法も、ここが正念場じゃな」マーリンが杖を握りしめた。
「みんなを信じます……今度こそ、きっと成功する」ミラも決意を固めた。
「私も準備万端よ!」
私は『奇跡版』の薬瓶を取り出した。これまでで最高の出来栄えだ。
「お嬢様、私の天使の力も全力で発動させます」セレーナが両手を合わせた。その髪が、虹色に輝いている。
「ふみゅ〜」
ふわりちゃんが私の肩で光り始めた。
なんだか、いつもより大きくなりそうな予感がする。
「もしかして、ふわりちゃん、人型になる?」
「ふみゅみゅ〜」
「では、作戦開始です」
セレスティアさんが魔法陣を展開した。
「エドガーさんたち、まずは突破口をお願いします」
「任せろ!『縮地斬り』連発で道を切り開く!」
エドガーが持てる力を振り絞って、アンデッドの群れに突撃した。
「『華麗なる連続暗殺術』!」リリィも続く。
「『神の雷・連発』!」マーリンの雷が道を照らした。
「『聖なる加護』!」ミラが仲間たちを守る。
「行くわよ、みんな!」
私はセレスティアと一緒に、開かれた道を駆け抜けた。
ついに、リッチとの最終決戦が始まる。
「セレーナ、ふわりちゃん、準備はいい?」
「はい!」
「ふみゅ〜」
骸骨の城が目前に迫っていた。いよいよ、最後の戦いだ。




