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第159話 魔王セレスティア降臨

手紙を送ってから八日目の夜、俺の右手の疼きが突然激しくなった。

封印されし力が、何か巨大な存在の接近を告げている。


「なんだ、この魔力は……」


突然、夜空に巨大な亀裂が走った。


「うわあ!何だあれは!?」リリィが指差す方向を見ると、空の裂け目から深い紫色の光が漏れ出している。


そして、その光の中から優雅な女性のシルエットが現れた。長い黒髪が風になびき、黒いのドレスを纏った圧倒的な存在感の持ち主。


「セレスティア!」


俺は驚きの声を上げた。魔王セレスティアが、なぜこんな戦場に?


「お久しぶりですね、エドガーさん」


セレスティアはゆっくりと地上に降り立った。

その表情は、いつものように穏やかだが、どこか怒りを秘めているようだった。


「セレスティア様!」リリィが嬉しそうに手を振った。「どうしてここに?」


「皆さん、本当にお疲れ様です」セレスティアが俺たちの疲弊した様子を見て、心配そうに眉をひそめた。


「まず、ルナさんの薬の効果を確認させてください」


セレスティアが手をかざすと、俺たちが使った『生命の輝き』の残留魔力が光って見えるようになった。


「素晴らしい錬金術ですね。アンデッドの死の魔力を完全に中和している」


「ああ、ルナの薬のおかげで、一時的にアンデッドを無力化できている」俺が説明した。

「だが、リッチが健在である限り、すぐに復活してしまう」


「やはり……」セレスティアが頷いた。

「根本的な解決には、リッチ本体を滅ぼすしかありませんね」


「わしらも何度か挑戦したが、アンデッドに阻まれて近づけんのじゃ」マーリンが悔しそうに杖を握った。


「きっと罠もあるはず……」ミラが不安そうに呟いた。


「実は、あのリッチ……私にとっても非常に不愉快な存在なのです」

セレスティアの美しい顔に、明らかな嫌悪感が浮かんだ。


「死の魔力を無秩序に撒き散らし、生者と死者の境界を曖昧にする……私の美学に反します」


「セレスティアの美学?」

「私は秩序ある美しい世界を愛しています。それに、私の魔王城の虹色も濁ってしまって……」


俺は思わず苦笑いを浮かべた。

魔王らしからぬ悩みだが、それがセレスティアらしい。


「そこで、提案があります」セレスティアが真剣な表情になった。

「私がリッチの足止めをしている間に、ルナさんに直接薬をかけてもらい、完全に無力化させませんか?」


「ルナが直接?」


「はい。私一人でもリッチを倒せますが、どうせなら悔いが残らない様に葬ってさしあげたいのです。それに、あのアンデッドの群れを突破するには、皆さんの力が必要です」


セレスティアは作戦を説明し始めた。


「まず、エドガーさんたちにアンデッドの大群を突破して、リッチまでの道を開いてもらいます。その道を駆け抜けリッチに接近します。私がリッチを足止めし、ルナさんが直接薬をかける。完全に浄化する作戦です」


「なるほど……確かに、それなら根本的な解決になる」


俺は仲間たちを見回した。


「どうする?」

「面白そうじゃない!」リリィが目を輝かせた。「魔王様と一緒なら安心ね!」

「わしも久々に本気を出してみるかのう」

「……今回は信じてみましょう」ミラも頷いた。



「では、ルナさんをお迎えしましょう」


セレスティアが再び転移魔法を準備し始めた。


「少々お待ちください」


紫色の光が再び空間を包み、セレスティアの姿が消えた。



私が実験室で『奇跡版』の最終調整をしていると、空間の歪みが現れた。


「ルナさん、お久しぶりです」


セレスティアが現れて、バサーラサ王国の状況を詳しく説明してくれた。


「エドガーさんたちが八日間も戦い続けているのです。もう限界に近い状態で……」


「そんな!エドガーたちがそんなに苦しんでるなんて!」


私は立ち上がった。友人が困っているなら、助けに行かなくっちゃ。


「私の魔力とルナさんの錬金術を組み合わせれば、必ずリッチを倒せます。協力していただけませんか?」


「もちろん!」私は即答した。


「お嬢様、私も一緒に参ります」

セレーナが決意を込めた表情で立ち上がった。


「そうね。セレーナの天使の力も必要になるかもしれないし、一緒に来てもらえる?」


「はい!」


「ふみゅ〜」

ふわりちゃんも私の肩で決意を示した。なんだか、普段より光が強い気がする。



「作戦を確認しましょう」セレスティアさんが説明してくれた。


「まず、エドガーさんたちにアンデッドの突破口を開いてもらいます。次に、私がリッチを『支配の魔法』で足止め。その隙に、ルナさんが『奇跡版』を直接リッチにかけて完全に浄化」


「なるほど」


「追加でセレーナさんの天使の力と、ふわりちゃんの浄化の力、をリッチにかけ確実に消滅させます」


私は薬瓶を握りしめた。これまでで最高の『生命の輝き・奇跡版』。

絶対に成功させる。


「準備はよろしいですか?」


「うん!行こう!」


「ふみゅ〜」ふわりちゃんが小さく羽ばたいた。


セレスティアさんが転移魔法陣を展開する。今度は、三人と一匹での転移だ。


「では、参りましょう。友達を救い、世界に平和を取り戻すために」


光に包まれて、私たちは決戦の地へと向かった。

エドガーたちとの再会が、すぐそこまで来ている。

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