第124話 ダンジョンの不思議なぬいぐるみ
私は今日も王立魔法学院の実験室で、新しい薬の調合に夢中になっていた。
肩に乗ったふわりちゃんが心配そうに「ふみゅ〜」と鳴く。
「大丈夫!今度こそ『集中力向上薬改』が出来るはず!」
「ルナさん、大丈夫ですの?」
カタリナが呆れたように言いながら、蔦の魔法で私の周りの煙を払ってくれる。
赤茶色の縦ロールがくるくると揺れて、今日も優雅だ。
「ルナさんの大丈夫は、危険な気がしますけどね」
エリオットが苦笑いを浮かべている。
そんな時、実験室のドアがノックされた。
「失礼いたします」
入ってきたのは冒険者ギルドのギルドマスターと、フローラン教授だった。
フローラン教授は魔物学が専門で、いつも穏やかな笑顔を浮かべている男性だ。
「皆さん、お忙しい中申し訳ありません。実は、新しく発見されたダンジョンの調査をお願いしたくて参りました」
ギルドマスターが地図を広げながら説明を始める。
「山影のダンジョンという場所なのですが、そこの魔物には不思議な特徴があるんです。倒すと、なぜかその魔物のぬいぐるみになってしまうのです」
「ぬいぐるみ?」
私たちは顔を見合わせた。
「はい。しかも、そのぬいぐるみは非常に精巧で、まるで本物のような質感なんです。これは前例がない現象で、ぜひ『Tri-Order』の皆さんに調査をお願いしたいのです」
「それと」フローラン教授が続ける。
「今回は特別に、勇者エドガー一行にも同行をお願いしています。彼らの実力があれば、安全性も確保できるでしょう」
その時、実験室のドアが勢いよく開いた。
「先輩方〜!私たちも一緒に行きたいです〜♪」
入ってきたのは1年生のノエミ様、フラン、エミリの三人だった。
「ノエミ様、フランちゃん、エミリちゃん」
「お話聞いちゃいました〜♪ ぬいぐるみになる魔物なんて、超気になる〜♪」
フランが目をキラキラさせながら言う。
赤い髪のツインテールがぴょんぴょん跳ねて、金色の瞳が輝いている。
「私も勉強になりそうです」エミリが控えめに言う。
「皆の安全のためにも、私も同行させていただきたいと思います」ノエミ様が王女らしい毅然とした態度で言った。
「うーん、1年生には少し危険かもしれませんが…」
フローラン教授が悩んでいると、廊下からモーガン先生の声が聞こえてきた。
「それなら私も同行しましょう。錬金術の観点からも興味深い現象ですし、生徒たちの安全も確保できます」
「モーガン先生!」
こうして、私たち『ミックス・ワンダーズ』のメンバーと1年生、そして先生方で山影のダンジョンに向かうことが決まった。




