いつもの
仕事終わりの17時半。
僕はいつもの喫茶店に足を運ぶ。
カランカラン
扉の音を合図にバイトの子が「いらっしゃいませ!」と元気の良い
挨拶をくれる。僕は軽く会釈をして席に着く。カウンター席の一番奥。
ここからだとマスターが何をしているのかが良く見える。
「注文は?」とマスター。「いつもの」と僕。
2分程してバイトの子が私の席に注文の品を置きに来る。
「はい、ダージリンティーです」
僕は軽い会釈で返す。
「お客さん、本当にダージリンがお好きなんですね!」
僕は軽い会釈で返す。
マスターが自慢気に口を開く。「うちのダージリンは特別だからな」
「そうですね」と僕。
でも違う。僕はダージリンが嫌いだ。
3年前にこの店を見つけたとき、僕はアールグレイを頼んだ。
しかし来たのはダージリン。全くの別物だ。
だけどその時バイトの子が笑顔で「お客さん、私もダージリンが好きなんです!」
と言ってきた。それから僕は、いつもの笑顔に打ち取られている。