勧誘開始
一旦書き溜めは終了したので初投稿です。
翌日の昼休み、俺は佐山と三木へ一緒に昼食を食べようと誘い学食へ向かった。
俺と三木は弁当だが佐山は学食だった為だ。
「悪いな。二人とも弁当なのに。」
「気にすんな。学食の雰囲気には興味あったから。」
「で、話ってなんだ?」
「佐山には軽音に誘って貰ってたのにこんな事言うのは悪いって思うんだけど、俺と演劇やってくれないか?」
俺の言葉を上手く呑み込めなかったのか、二人の箸が止まった。
「演劇ってアレか?おおロミオ!ってやつ。」
「そうだよ。」
「演劇部なんてあったか?」
三木はスマホのアルバムを確認し首を傾げつつ訪ねてくる。
「俺も昨日知ったんだけど、新任の先生と一年で立ち上げたんだよ。で…」
「なるほどな。それで昨日勧誘されて入っちまった?」
佐山の問いかけに俺は頷いて肯定し、昨日上野から聞いたことを掻い摘んで説明した。
そして、とりあえず夏の初舞台まで協力してもらうよう頼んだ。
「ふーん。演劇ね。三木はどうよ?」
「俺は別に興味無いけど、何点か質問がある。」
箸を置いて、真剣な眼差しで見つめてくる三木の圧に俺は思わず姿勢を正してしまう。
「バイトって出来るのか?」
「上野も昨日バイトがあるって言ってたから大丈夫なはずだ。」
「なるほどな。もう一つ、その子は可愛いか?」
「ブッホ!?」
真面目な雰囲気から発せられるバカな質問に佐山が咽た。
「…どうなんだ?」
「俺の感想だけど、可愛いよりも美人ってタイプの奴だよ。性格は今のところ嫌な所を感じたりはしない。」
「わかった。俺はいいぞ。」
「マジで?演劇に興味あんの?」
「無い。…が、高校で出来た友人の誘いを無碍にするのもどうかと思うし。昨日運動部を見て回ったがマネージャーが居ないし男女合同で練習している感じでもないんだ。それなら上野と仲良くなって友達を紹介して貰おうかと思う。」
「女目当てって訳ね。前田、俺も参加していいけど条件があるわ。」
「なんだ?」
「校外でバンド作ろうと思ってるから表に出るのはNGな。裏方ならやるってことで上野がオッケーくれたらやるよ。」
それは問題ないだろうと思う。昨日上野も役者と音響、照明は必要だと言っていたから裏方志望で入っても受け入れてくれるだろう。
「わかった。ありがとうな、二人とも。」
その後は放課後に屋上へ行くことを伝えて俺は午後の授業が移動のため一足先に学食を離れた。
「…軽音、入らなくていいのか?」
「正直言うとさ、ここの軽音部レベル低いんだわ。吹部の片手間にやってた俺よりもね。部内でバンド組んでも熱量の差で喧嘩するの見えてるし。中学の吹部もそんな感じだったから。そっちは野球以外で運動部やらないの?」
「別の競技初めて経験者を追い越せるほど才能ないって知ってるし。三年間補欠になるくらいなら最初から中心メンバーでやれるほうが楽しいんじゃね?って考え、どう思う?」
「エゴ全開で凄く良いと思う。俺とバンドやらね?」
「演劇がつまんなければ、考えるよ。」
「喜び辛い返しするのやめろよなー。」
「でもあと一人、誰誘うんだろうなアイツ。」
「友人として一肌脱いじゃおっかな。」
「心当たりあんの?」
「同中に一人演劇好きそうなやついるから声かけてくる。じゃあ先戻るな。」
「あいよ~。」
学食を離れ教室に戻り荷物を纏め、廊下を歩いていると誰かが手を振りながら走ってくる。
「おおーい!前田一輝!お前、前田一輝だよな!」
暑苦しいソイツは俺のことを知っているようだが見覚えはない。上野みたいに陸上関係者か?
「悪いけど誰?会ったこと無いよな。」
「会ったことないな。俺は中岡って言うんだ。県大会で毎回お前に負けてた男だ!」
やはり、陸上関係者か。
「何の用?移動教室だから急いでるんだけど。」
「前田は陸上部に入らないのか?」
「もう辞めたよ。じゃあな。」
横を通り抜けようとした俺の手を中岡は掴んでくる。
「いきなり何だよ。」
「部活はどこにも入らないのか?」
入らないと嘘を言えば陸上に勧誘してくる可能性があるな。コイツなんか暑苦しいし。
ここは正直に言って話を終わらせるべきだろう。
「…演劇やるつもりだけど。」
「そうか!じゃあ俺も入れてくれ。」
「は?陸上部じゃないのお前。」
「まだ入部届は出してないんだ!でも、お前が陸上を辞める価値があると思わせる演劇に俺も興味がある!活動場所はどこだ!?」
その後、俺は中岡の熱量に押されて色々説明する羽目になり、無事授業に遅刻した。
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