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第7話 国の法律

 今日はアリサは母親でもあるマーレと一緒に王都に来ていた。

 半分お買い物ともう半分はマーレ自身の用事。


 人が多い。

 アリサは息を呑む。屋敷や師匠が住む森以外の場所には行ったことがない。

 王都はこの国、一番の人口を誇る。人間だけではなく、エルフや獣人が共存している。


 うん?


 馬車の窓から見える光景に少し違和感が生まれた。

 ファンタジー世界なのは、この数年で経験してある。

 屋敷は中世の洋館がイメージとなっている。だから、前世の高度文明とはかけ離れた世界観だと認識していた。だが、目の前の景色はアリサの予想を超えている。


「そういえば、アリサは王都、初めてよね」


「......はい」


 魔法と機械技術が複合した世界だった。高層ビルはあるし、日本で着ていた服もそこかしこにあった。列車は走っている。飛行機が空を飛んでいる。魔法の絨毯で移動している人たちもいる。なんとも不思議な世界だ......


 一気に日本に戻ってきた気分を味わうアリサ。

 でも、日本ではない。外を歩く人たちは当たり前のように魔法を操っている。

 この世界は魔力に満ちている。空気中にも人や動物からも。そして物質からも。


 魔法石は存在する。空気中の魔力が鉱物に溜まる。蓄積された魔力で鉱物は変性する。魔力を持つ物質が誕生する。武器に使用したり、防具に活用される。

 魔導具にも運用できる。


 車が走っている。ごく少数だけど。でも、排気ガスは出ていない。ガソリンはこの世界にないのかもしれない。もしくは魔法石を車体に組み込んであると想像がつく。


 前世で活用していたエネルギーは、ここでは魔法石で補っている。


 窓から教会が見えた。人が多い。親と子どもがほどんどだった。

 アリサと同じくらいの年齢の子達がいた。

 長蛇の列。イベントかな......?


「お母様、あれは?」


「あれはね。()()()()()よ」


 適性の儀式?


 この国では、六歳を迎えた子どもたちには王都の教会、『聖教教会』に行く決まりがある。

 辺境の村にいる子も対象となる。交通費と報酬が聖教教会から貰えるらしい。


 で、適性の儀式というものは子どもたちが自分の魔法適性を確認する行事。

 教会内に置かれている水晶に手をかざし、出現した色によって適性が決まる。

 攻撃魔法が得意、防御魔法は不得意などが水晶に表示される。

 魔法使いとして将来、どの道に進むべきなのかと教えてくれる。

 六歳から十四歳までは自分の適性にあった魔法を訓練する。十五歳になれば、自分の適性にあった魔法学園に入学する。



 また、魔法の結果は個室で行われるので親子以外は詳細を知らない。


 いや、国の規則で十五歳まで、自ら自分の適性を明かさないルールとなっている。

 水晶にかざした瞬間に、位置情報も刻み込まれるとか。

 普段はそんなに重要視されないシステム。

『自分の適性を口に出す』。この項目だけは反応する。

 どんなに片田舎であっても、感度良く探知される。


 速攻、王都の憲兵に逮捕される。口に出した子どもも親も。勿論、聞いた者全員。

 大貴族にも適用される。貴族はお金を払えば、難を逃れると思われる。

 しかし、一切受け入れられない。何百年も続く名家の貴族様でも『自分の適性を口に出す』事は重い罰になる。これがこの世界の法律の一つ。


 十五歳以上の人たちは周知の事実。だから、子どもには徹底させていた。


「だからね。面白半分で他の子に聞いちゃダメよ。十五歳まで待ってて」


「分かりました、お母様。でも、何故そのような規則が?」


 アリサの質問に深刻な顔になるマーレ。

 マーレの手が震えていた。今にも泣き出しそうだった。

 口に出すことも憚れる内容だった。慌てるアリサ。


「ごめんなさい。もう、言いません......」


 アリサができることは母親に謝罪する。それだけだった............


 お母様のあんな姿、初めて。いつも明るく優しいお母様。

 余程、不味い事があったのかもしれない。

 態々、国の法律になるくらいだ。重大な事が......



 馬車が止まる。

 アリサの視界いっぱいに広がるお城。


「ここは?」


「王城よ」


 マーレと手を繋ぎ、アリサは歩き出した。


アリサはセシリアの魔法適性を知らない。

アリサは水晶に触れていないから、魔法適性を知らされても問題がない。

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