表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大久野学園シリーズ

大久野学園新聞部 ~全員黒光りゴリマッチョになったゲーム部の謎に迫る~

人生初の小説投稿です。至らぬ点もあるかもしれませんが、ぜひご一読のほどお願いします。

 夏休み明けの熱い2学期が始まった日、友人達と夏休み中の出来事の話題で盛り上げっていた大久野学園の生徒達に衝撃が走った。


 1学期までは地味で痩せすぎたり太りすぎていたりと不健康そうな姿で有名なゲーム部の面々が筋骨隆々の黒光りマッチョ軍団に様変わりしていたのである。



 大久野学園新聞部、この部では学園内の様々な事件や出来事に全力取材をしていく学園内でもまあまあ有名な部でる。

 その日は部長が部員全員を招集し取材状況を確認し合っていた。


 ねずみ男を思わせる出で立ちに丸眼鏡を掛けた姿が特徴的な新聞部部長が口を開いた。

「さて、諸君、これから進捗を確認していく。まずは学園に猿の群れが襲来した事件についての報告から頼む。では佐藤くん」


 こうして各自が追っている事件の進捗を確認しながら会議は進んでいく。そして最後に、小動物を思わせる小柄さに黒のショートヘアー姿の新人部員”増子 美貴”の方を見ながら部長は言った。

「増子君、そろそろ君も一人で取材に行ってもらおうと思う。取材内容はゲーム部の件についてだ。彼らのゴリマッチョ化について取材してきてくれ」

「はい、わかりました!」


 そして放課後、増子は初めて一人で活動することに緊張しながら、ゲーム部の部室をノックした。


「失礼します、新聞部の増子です」

「フンヌゥッ! ハァッ! どうぞ~」


 独特の返事に困惑しながら扉をくぐると衝撃が走った。


 片やフルダイブゲームの機器を装着して汗だらだらで唸りながらゲームをしている者、片や重そうなダンベルや器具を使いながらハードな筋トレをし汗を流している者に分かれていた。なお両方ともゴリマッチョである。


 暑苦しいというか汗臭い上に異様な光景に戸惑いながら増子は部員に声を掛けた。

「新聞部です。ゲーム部について取材させてもらいに来ました」

「おおそれはそれは、わざわざ拙僧達の部に取材に来られるとは……このリハクの目を以てしても……」

「節穴定期でござりますよ部長wwww」

「失敬、失敬ww」

「えぇ、何? このやりとり?」


 増子の応対をしたのは今いる部員の中でも一番筋肉質かつ色黒なスキンヘッドの男だった。

 独特の喋り方や他の部員からの突っ込みを聞くに恐らく部長であろうことは予測できた。


 しかし、夏休み前と姿が違いすぎた。色白天パぽっちゃりかつバンダナはちまき姿で有名だったはずの部長がこうも変わっていて増子はもはや恐怖しかなかった。


 恐る恐る増子は本題に入った。

「今日の取材内容はその、何と言いますか……皆さんのお姿が夏休み前とあまりにも変わりすぎている事についてなのですが……聞いても大丈夫ですか?」

「あぁ、その件でござりますか。まぁ確かに気になりましょうな。皆様、拙者達に熱い視線を送って下さっていましたから。でも、誰も聞きに来ないのが不思議ですな~、新聞部さんが初めてですよ。なんなれと聞いて下され。ついでに拙僧の3サイズも話しまするか?wwww」

「いや、3サイズはいらないです。(変わりすぎているし暑苦しいから聞きにくいよそりゃ……)」

「失敬、失敬wwww」


 この癖のあるやりとり、間違いなくゲーム部部長だと確信した増子は尋ねた。

「では、早速。皆さんはなぜそのようなお姿に?」

「これでござるよ」


 部長がテーブルの上に置いたのはゲームソフトだった。パッケージのデザイン的には恋愛ゲームのジャンルと思われる物だ。

「これですか? フルダイブタイプの恋愛ゲームもあるんですね。スポーツやアクションタイプのゲームならギリギリ分かりますけど、これで変わったのですか?」

「まあ、やれば分かりますぞ。おまえたち! やぁっておしま~い!」

「アラホラサッサー!」


 部長のかけ声と共に部員達がゲームを始める準備をしていく、その手際の良さに関心しつつ部長からゲーム内での基本動作を教わり準備を待つのだった。

「では、増子殿。このヘッドギアと四つのバンドを体に装着してくだされ」

「バンド? それもいるんですか?」

「これがミソでござりまする故に」


 部長に言われるまま装着していき、後はゲームを起動するだけとなった。

「分からないことがあれば声を掛けて下され」

「はい、ではお願いします」


 そしてゲームが開始された。



 目覚ましの音が鳴り響く。チュートリアルとあるし朝の生活から動かし方を把握していくのかと増子は思った。

 目の前のウィンドウには布団から起きようと指示が出ている。

 増子はその通りに動かそうとしたが上がらない、布団が重すぎてびくともしないのだった。

 目の前のウィンドウがカウントダウンを始めている。必死に退かそうするがやはりだめ。とうとうタイムアップしてしまう。


 ヘッドギアを外し、息を切らせながら増子は怒鳴った。

「何なんですかこれ! 全然布団が動かせないじゃないですか!」


 部長が朗らかに笑いながら言った。

「大体、ベンチプレスで50kg上げられるようになると退かせますぞ」

「いや、そんなの恋愛ゲームじゃないですよ。恋愛要素と関係ないですよね?」

「はっはっは。懐かしいですな。拙僧達も最初はそんなもんでした」

「本当に申し訳ないですけどこれはクソゲーというやつでは?」

「そうですぞ、でも一周回って癖になる神ゲーになりましたな」

「えぇ……」


 増子は恐る恐る尋ねた。

「もしかして、こんなのがこの先もずっと?」

「そうですな、まだ拙僧達でもゲーム内での2日目にやっと到達したところですな」

「えぇ……」


 そして部長が語り始めた。

「このゲームは小さなゲーム会社が販売した物でしてな、古き良き恋愛ゲーをコンセプトに開発されたのですぞ。ある程度開発は順調に進んではいたのですが、社長が会社の資金をガールズバーに使い込んでしまった上に借金までこさえたことが発覚しましてな。社長は逃亡、返済期限とゲームの納期に迫る中、残された社員達は1人また1人とぶっ壊れてしまいましてな。最終的に全員の頭のネジが外れてこのゲームが完成したという経緯ですな。最終的にこのゲームの売り上げで首の皮一枚つながったそうですぞ」

「そんなことが……」

「リアルな感覚を持ち込ませる為に、アクションゲームでも採用されている装着者の筋肉量を操作キャラのスペックに反映させるシステムをこれにも採用したのですが、開発者たちのネジが外れた結果、緩い反映だったのがシビア過ぎるものになってしまったのですぞ」


 続けて部長は言った。

「筋肉と身体能力が物をいう理不尽な難易度、しかしストーリーとキャラクターの造形は神作でして……それらがゲーマー達のハートに火をつけましてな、皆競うように体を鍛え始めそしてゲームに挑むようになった、というのが我々の激変の真相ですな。とはいえ、実際にプレイするまではこんな内容だとは思わなかったですぞ。公式ホームページやらPVは全く触れてなかったというか隠していましたからな」

「なるほど……」

「最初は一人だと苦痛でしか無かったので部の皆で集まって筋トレをしていたら、野生のマッチョの方々にアドバイスをいただきましてな。それから段々鍛えることが、そしてその成果がゲームで現れることが楽しくなりましたぞ」


 夏休みの間だけで体ってこんなに変わるものだったか?と増子は思ったりしたのだが、ゲームへの情熱がそうさせたのだろうと無理矢理飲み込んだ。

  そして気になっていたことを尋ねた。

「先ほどのチュートリアルの布団から起きるの後には何があるのですか?」

「そうですな……我々はネタバレは絶対許さない派閥の者でして…。とはいえこのゲームは皆にも知ってほしいですし……なら、チュートリアルまでを増子殿が体験してそれを記事にするという事でしたらお手伝いはしますぞ」

「うっ、ならそれでよろしくお願いします……」


 こんなきついのがまだチュートリアルの始めでしかもその先を体験することになるとは……と増子は思っていたが、新聞部の掟{全力取材}を思い出し自分を奮い立たせた。そして再度準備をしてチュートリアルに臨んだ。


 チュートリアルその1 布団を退かそう

「ふんぬぅっ! んぎぃっ!」

「増子殿、ファイトですぞ」

 →失敗


「増子殿はその1をクリア出来なかったので、ここからは拙僧のセーブデータを使いやってもらいますぞ。このゲームは過去のイベントを追体験できる使用になっておりますゆえに」

「はい、よろしくお願いします……」


 チュートリアルその2 目覚まし時計を止めよう

「速いっ! ジグザグに上にも下にも逃げてて止められないっ! ああっ!残り時間が……」

「はっはっは、このゴキブリを超える動きには面食らいましたぞ」

 →失敗


 チュートリアルその3 制服に着替えよう

「なんでっ! 制服がっ!襲ってくるんですかっ! ひぃぃぃっ!」

「後ろに目をつければいけますぞ」

 →失敗


 チュートリアルその4 部屋を出よう

「家具が雪崩のように迫ってくるーっ! こんなにたくさん家具無かったですよね?!」

「そこはパルクールの要領でいけるンゴ」

 →失敗


 チュートリアルその5 一階に下ろう

「怖いっ! 登りエスカレーターを下るとか怖すぎますよっ! というか速すぎませんこれ?!」

「筋肉と勇気で全力疾走することがカギですぞ♡」

 →失敗


 チュートリアルその6 少し寝坊気味でお母さんの機嫌が悪いぞ、速く朝ご飯を食べよう

「なんかお母さんの視界に入ったらゲームオーバーになったのですが……」

「お母さんに気づかれないように移動しつつ、朝食を食べて部屋から出るのがルールです故。ミソは新聞を読んでいるお父さんを盾にして、素早くしなやかに静かに動くことですな」

 →失敗


 チュートリアルその7 玄関を出よう

「ドアがっ……! 重いっ!」

「がんばえ~」

 →失敗


 チュートリアルその8 通学路を進もう

「ひいぃ! 目が合った瞬間に通行人が笑顔で追ってくるぅっ! しかも足が速いしどんどん増えてくっ!」

「目標地点までダッシュしかありませんな。ちなみに次で最後ですぞ」

 →失敗


 チュートリアルその9 ???

 息も絶え絶えに増子はやっと最後かと思っていた。どれもこれも理不尽かつきつい内容で、これをクリアしたゲーム部員達には尊敬の念しか出てこなかった。もう何があるか分からず身構えていた増子の元に声が聞こえてきた……


「いけな~い、遅刻遅刻~♡ 転校初日に遅刻なんてヤになっちゃうっ!」


 これまた古典的なヒロインらしき女子の声が曲がり角から聞こえてきた。

 これは曲がり角で出会い頭にぶつかって物語が始まるのかなと思いつつ前に進む増子。しかし古典的過ぎる展開に増子は油断してしまっていた……


 曲がり角に一歩踏み出した瞬間、何か衝撃を感じたと思ったらゲームオーバーになっていた。

「な、何が起こったのですか?」

「拙僧達もここは苦戦しましたぞ、ヒロインが異世界トラックもなんのそのな速度で突っ込むわけですからな」

「はぁっ? そんな女子いませんよ! どう攻略するってんですか?!」

「少し落ち着くンゴ、説明するから聞いてクレメンス。何だったら拙僧のおっぱい揉む?」

「アァ?(ぶち切れ)」

「すんません……」


 5分経過


「さっきはすいません……つい頭に血が上って……」

「いっいえ、こちらもふざけすぎました……」

「では改めて先ほどの攻略法でしたな、まずは一瞬でいいから彼女を超える速さで前に出て身構える、次に衝撃を感じたらひたすら押さえ込む、最後は10秒間維持し続けるですな。後ろに下がれるのは5M位までですぞ」

「えぇ……出来ます? そんなこと?」

「まぁ、今までの動きの総決算みたいなものですし、最後以外のチュートリアルを余裕でこなせるようになって初めて攻略の可能性がある位ですな」

「ゲーム部の皆さんはこれをクリアしてますよね? 人間やめていませんか?」

「いやいや、我が部にはいませんが、ヒロインとの初めてのお買い物に到達した猛者がいるらしいですしな」

「もう、想像すらできない……」


 細かい所をゲーム部から聞き、げっそりとした顔で部室を後にした増子。

 

 それから3日かけ記事を完成させて部長に提出した。

 部長からはもう少し体験して見ても良かったのではと言われ思わずドラゴンスクリューを掛けた増子は悪くない。


 今回の記事が発表され、根性がある事を証明したゲーム部には入部希望者が増え、学園のボディビル同好会や格闘技系の部と合同でトレーニングをする姿が見受けられるようになりお互いに切磋琢磨しているようである。

 

 比例するかのように学園内の黒光りマッチョ率も増え、暑苦しくなりそれが間接的な原因で学園がジャングルに覆われてしまうのは別の話




ちなみにゲームタイトルは「ときめきハート~クライマックス・すくらんぶる~」です。


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ