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書籍化・コミカライズしたもの

悪役令嬢なので金欠騎士と溺愛生活始めます

作者: 瀬尾優梨

「リースベット・フランシスカ・フォンシェル! おまえとの婚約を破棄し、未来の王妃を愚弄した罪をもって処分を言い渡す!」


 謁見の間で高らかに宣言するのは、銀髪の王子。彼の隣には、庇護欲をそそるような小柄で愛らしい令嬢が。


 私の名は、リースベット。フォンシェル伯爵家の娘で、つい先ほどまで目の前にいるケヴィン王子の婚約者だった(・・・)

 だった、というのは、これまでに私が行ってきた罪により婚約を破棄されたから。彼曰く、私は王子の思い人である男爵令嬢・ダニエラに様々な嫌がらせをしてきたという。


 ……それは、事実だ。

 私は実際にダニエラをいじめ、その恋の邪魔をして、高圧的な態度をもって攻撃をしていた。否定はしない。


「かしこまりました、殿下。いかなる罪でも甘んじてお受けします」

「ふん、おまえは頭だけはいいのだから、理解が早いようで助かる。それで、おまえの処分だが……」

「あのぅ、殿下。私、思うんです」


 そこで口を挟んだのは、王子の腕にすがりつく小柄な令嬢・ダニエラ。男爵家の娘でありながらケヴィンからの愛を勝ち取り、私のいじめにも屈することなく愛を貫いて次期王妃の座を獲得した少女だ。


「リースベット様は確かに、ひどいことをたくさんしてきました。でも、リースベット様にも女性として幸せになる権利はあると思うんですぅ」

「なんと……ダニエラはどこかの誰かと違って優しいな」


 黙らっしゃい、この色ぼけ王子。


「それで、ですね。リースベット様がたくさんたくさん反省してくれたら、私は十分なんですぅ。だから……そうですねぇ。下級騎士あたりのお嫁さんにしてしまうのは、どうですか?」

「なっ……!」


 思わず私は声を上げるけれど、色ぼけ王子は「なるほどな!」と喜色満面になる。


「下級騎士の妻として下々の生活を経験し、それを償いとするのだな! それでいて女性として結婚する幸せも得られるのだから……ダニエラ、なんて寛大な処分なんだ」

「ありがとうございますぅ……あ、そうだ。名前は忘れたけれど、怪我をしたところをリースベット様に助けられたっていう下級騎士がいるらしいんです。その人なら、リースベット様をもらってくれるんじゃないですかぁ?」

「ほう、そんな者がいるのだな。分かった、探しておこう」


 王子はよしよしとダニエラをなでてから、私に冷たい視線を投げかけた。


「……ということで、おまえの罰は下級騎士との結婚とする。愛らしいダニエラを妬んだ罪、しっかり償うとよい!」


 わはははは、と高らかに笑うクソぼけ王子。その腕にすがりつくダニエラが、私を見つめた。

 そして……隣に立つ王子にはばれないように、ぐっと親指を天井に向けてみせた。


 ……よし、よくやってくれた。グッジョブダニエラ。

 これで計画通りだ!











 私が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していると気づいたのは、去年の春のこと。

 ここは前世プレイしていたゲーム『歪んだ愛を君に』の世界であり、私は攻略対象の一人であるケヴィン王子の婚約者であり……ゲームの主人公である男爵令嬢・ダニエラをいじめる悪役令嬢だ。


 ……お気づきだろうか?

 そう、このゲームはタイトルからなんとな~く匂うとおり、攻略対象がもれなくぶっ壊れている。

 王子は認知が歪んだ傲慢キャラで、その他にもナルシストやヤンデレやメンヘラなどのキャラが濃いを通り越した感じの攻略対象ばかりだった。


 前世の私は、「絶対に面白いから!」と友だちに勧められてプレイして……王道のケヴィン王子ルートをクリアしてすぐにカートリッジを本体から外してそっとケースにしまい、それ以降プレイすることはなかった。

 簡単に言うと、私の趣味ではない。ノットフォーミーというやつだった。


 私は社交界デビューをしに城に現れたダニエラを見た瞬間に、ここがゲームの世界であると気づいた。そして、ダニエラがどの攻略対象を選ぼうと私はケヴィンによってめっためたに殺されてしまうことも思い出す。


 いやいやいや、あんな暴君みたいな王子と婚約者でいるなんて、無理無理。リースベットは王妃の座に固執していたから我慢できていたようだけれど、前世の記憶を取り戻した今は無理無理。

 それ以上に、ケヴィンによって滅多刺しにされるのも無理無理無理無理。


 いやこれヤバいわ、詰みだわ。でもなんとかあがかねば……と思ってゲームにない行動を取っていた私にある日、ダニエラが接近してきて囁いた。


「もしかしてあんたも、転生者?」と。


 その日から、私たちは心の友になった。

 ダニエラも前世、『歪んだ愛を君に』をプレイしていた。彼女はケヴィン王子推しらしく、自分と王子の恋を応援してくれるのであればリースベット処刑ルートを回避するよう手伝う、と申し出てくれた。


 この子、ケヴィン王子がいいのか……と思ったけれど、ダニエラは「顔さえよけりゃそれでいい」というタイプらしく、攻略対象の中でも一番のイケメンのケヴィンすら捕獲できればそれで満足だそうだ。強かですごくたくましい子だ。


 しかもそれだけでなく、ダニエラは「せっかく転生したんだから、好きな人と一緒になりたくな~い?」と問うてきた。


 私の、好きな人。実は、いる。

 それは、下級騎士であるヴァルデマール・イェンス・ブラードだ。


 今年二十二歳になった私より二つ年下の二十歳で、少し癖のある硬質な金色の髪に優しい垂れ目を持つ、青年騎士だ。体つきはいわゆるマッチョというやつで、いつ見ても騎士団服が筋肉ではち切れそうになっている。


 彼と出会ったのは、前世の記憶を取り戻してすぐのこと。


 うわぁ、やっべぇわ、どうやって滅多刺しエンドを回避しよう……と悩んでいた私は、足を怪我して座り込んでいる青年騎士を見つけた。彼は、食物搬入用の馬車の車輪が壊れたため王城の隅で途方に暮れていた業者を助けたのだが、そのときに足をひねってしまったそうだ。


 大柄な体躯のわりに童顔な彼が痛みをこらえて座り込んでいるのを見ていると、なんというかこう、母性本能のような何かが湧いてきた。前世の私はアラサーで死んだからかよけいに、年下の男の子が困ってるのだから助けねば、という気持ちになった。


 巨体を支えて水場まで行き、そこで足を冷やしてあげる。彼は「貴族のご令嬢に申し訳ない」とずっと遠慮していたけれど、「わたくしの厚意を無下にする方が、無礼です」とごり押し理論で説き伏せた。


 後日、伯爵邸に贈り物が届いた。みずみずしい季節の果実がいっぱい詰まったバスケットに書かれているカードを見て、私はあのときの筋肉青年がヴァルデマールという名であると知った。


 ヴァルデマールは元々男爵家の長男だったけれど、ぼんくらな父親のせいで爵位返上する羽目になり、今では母や弟妹たちの貧しい生活を支えるために下級騎士として一生懸命働いているそうだ。

 そんな彼はいたってまともな人間だからかそれともそれほど美形ではないからか、『歪んだ愛を君に』の攻略対象でないのはおろか、モブとしての登場さえない。


 でも、出てくる攻略対象皆歪んでいるゲームの世界に辟易していた私にとって、善良で優しいヴァルデマールはまさに心の清涼剤だった。あんな人と一緒にいられたら幸せだろうなぁ、なんてことも思っていた。


 ……ということをダニエラに話すと、「じゃーその人とくっついちゃいなよ」とゲヘゲヘ笑いながら提案してきた。


 ゲーム進行の都合上、私はどうしてもダニエラをいじめてケヴィンから婚約破棄されないといけない。でもそのときに告発されるいじめはダニエラと相談の上でソフトなものにして、処分を言い渡される際にもダニエラが口添えをして、ヴァルデマールと一緒になれるようにしてくれるのだ。


 ダニエラは「あんたは偉いんだから、拒否されたりしないって。それに、何だかんだ言われてもベッドに連れ込んでやっちまったらこっちのもんよ!」とかわいい顔をゲス色に染めて言っていた。この子、前世は確か十代後半で亡くなったそうだけど、いったい……いや、詮索はよしておこう。


 ということでダニエラは私のサポートもあり見事ケヴィンを籠絡し、ゲーム一番のイケメンを手に入れた。そして約束を守り、私とヴァルデマールが結婚できるように手はずを整えてくれた。

 この子、やるわぁ。


 当然ヴァルデマールは遠慮するだろうけれど、「悪女のリースベットを引き受ける迷惑料を渡す」とケヴィンの方から提案させる。そして私も家族に、「私のようなろくでもない女を引き取ってくださる方には、精一杯のお礼をしたい」とお願いしておく。


 私の父は自分の娘を国母にしたい、という勝手な判断で私を悪道に陥らせた――実際は陥っていないけれど――ことを反省したようで、騎士の妻として静かに暮らすことを承諾してくれた。なお、実家には累が及ばないようにダニエラがケヴィンを説得してくれている。いや、マジであの子優秀だわ。


 その結果、ケヴィン直々に私との結婚を打診されたヴァルデマールは少しは悩んだそうだけれど、最終的には「ありがたく拝命します」と言ってくれたようだ。その日には、私はダニエラと手を取り合って「言質を取った!」「あとはしっかりやりなさいよ!」とお祝いした。







「あ、あの。このたびは麗しいあなたを妻に迎えられること、大変光栄に思っております」

「……」

「俺……じゃなくて私は見ての通り無骨な男ですので、リースベット様のお気に沿わぬことをしてしまうかもしれません。ですが、あなたの夫として恥ずかしくないよう頑張ります!」


 私は何も言えず、目の前にいる男を見つめていた。

 純白の正装を纏った、ガタイのいい青年。肩周りや胸筋のあたりはぱつんぱつんで、ボタンがはじけ飛ぶんじゃないかと心配になる。

 くすんだ金色の髪は前髪を上げ、整髪剤で整えている。おかげで太い眉と垂れ目がはっきり見えた。


 この人こそ、本日私の夫になるヴァルデマール・イェンス・ブラードだ。


 年中金欠の彼は、多額の「迷惑料」と引き換えに私との結婚を承諾してくれた。本心では不服なのだろうな……と結婚前にダニエラが調査してくれたけれど、彼は「伯爵令嬢を妻にするなんて恐れ多いけれど、誇らしい」と言っていたそうだ。


 そういうことでいざ結婚式場で再会を果たしたのだけれど、二十歳の彼は顔を真っ赤にして舌を噛みそうになりながら私に話しかけてくれていた。


 ……なんだろう。胸の奥が、きゅんっとした。


「……ヴァルデマール様」

「は、はい!」


 名前を呼んだら、いっそう顔が赤くなった。


「わたくしのような厄介者を引き受けてくださり、本当にありがとうございます。わたくしこそ、あなたの妻として恥ずかしくない振る舞いができるよう、努めます」

「え、そんな、滅相もございません。リースベット様はお気持ちのままに過ごしていただければ十分です。私はこの一生の全てをあなたに捧げる覚悟ができておりますので」

「いいえ、それではフェアではありません。あなたがわたくしを受け入れてくれた分、わたくしも一生の愛をあなたに捧げます」

「あ、愛……!?」

「だめですか?」

「まさか! ですが、その、俺みたいな卑しい者があなたからのあ、愛を受け止めるなんて……」


 あらら、また一人称が「俺」に戻っちゃっている。

 ……かわいい。


 ずい、と身を寄せると、ヴァルデマールはぎょっとしたように身をすくませた。

 ゲームの悪役令嬢らしく、リースベットはとてつもなく魅力的な……セクシーな体つきをしている。

 本日着ているウェディングドレス(監修:ダニエラ)はそんな肢体を際立たせるようなデザインだからか、私に迫られたヴァルデマールは真っ赤になって目線をさまよわせていた。

 ……超かわいい。


「……ねえ、ヴァルデマール様」

「うっ……」

「これからどうぞよろしくお願いします。末永く、かわいがってくださいませ?」


 あざといポーズで言うと、ヴァルデマールは「う」とか「お」とかうめいた後に、震える声を吐き出した。


「……お、俺のことはどうか、ヴァルと……お呼びください……」

「ふふ、了解よ。私の旦那様……ヴァル」


 初めて呼ぶ夫の名前を特別甘ったるくデコレーションしてささやくと、ヴァルはぷるぷる震えながらぎこちなくうなずいてくれた。

 ……ハイパーかわいい。








 かくして悪役令嬢のリースベットは表舞台から下り、歪みの欠片もない純朴な騎士様の妻になったのであった。めでたしめでたし。


















「あなた、聞いたわ。今日の練習試合で優勝したそうね」

「はい。僭越ながら」

「おめでとう。あなたのような素敵な夫を持てて、私は幸せだわ」

「恐縮です」


 ある日の夕食後。

 仕事を終えて帰ってきた夫に声を掛けると、彼はほんのりと微笑んだ。


 彼は、先月結婚した夫のヴァル。現在も下級騎士としてせっせと働いている、頑張り屋な旦那様だ。

 結婚時の契約により、彼には私を引き取る「迷惑料」としてかなりのお金が渡された。あれだけあれば騎士を辞めてのんびり暮らせるだろうに、彼はもらったお金の半分を家族に送り、残りの半分は全て私の生活費に充ててしまった。


 彼は、「あのお金は俺が自由に使っていいものではありません。自分の食い扶持は自分で稼ぎます」と笑顔で言い、仕事も辞めずに続けている。形ばかりとはいえ伯爵令嬢を娶るのだから上級騎士に昇格しても……と言われたけれど、「己の実力で昇格したいです」と断っていた。

 それでいながら、私の生活水準はできるだけ下げさせまいと気を遣い、きれいなドレスや宝飾品などを贈ってくれていた。


 ……はっきり言わせてもらう。

 私は、この夫に惚れてしまった。


 遠慮がちに微笑んで小さな花束を贈ってくれる様に、惚れた。

「気に入ってくださるか分かりませんが……」と言いつつ小さな髪飾りを渡してくれる様に、惚れた。

「おいしいですね」と料理を一緒に食べながら向けてくれる笑顔に、惚れた。

 自力で上級騎士になろうと毎朝鍛錬する姿に、惚れた。

 私がうっかり彼の上半身裸を見たときに照れて真っ赤になる姿に、惚れた。


 どちらかというと童顔でかわいらしいのに、体は厳つい。お人好しで困っている人を放っておけず、自分のことよりも肉親や弟妹、妻を優先させてしまう優しい人。

 そう、ヴァルはまさに私のストライクど真ん中の男性だった。


 いつぞやダニエラが、「あんたはせっかく、ドスケベボディを持っているんだからね。ああいうウブっぽいのはあんたの色気で迫れば落ちてくれるだろうから、さっさと食っちまいなよ」とグヘヘと笑いながら言っていたことがあり、そのときはいやいやまさかそんな痴女まがいのことはできないよ、とダニエラをなだめた。


 でも……今はなんかもう、ダニエラ先生のご助言に従いたいくらいうずうずしていた。


「頑張った旦那様には、ご褒美をあげないとね。さ、こっちに来て」

「……えっ、あの、その。いつも言っていますが、俺、でかくて重いので……」

「私がしたいのよ。それとも……ヴァルは、嫌?」

「い、嫌なわけありません!」


 ダニエラ直伝の「男を落とすあざといポーズ」でしおらしく尋ねると、ヴァルは真っ赤になった。そうしてためらいつつも私が座るソファの前まで来てそこに寝転び、私の膝の上に頭を乗せてくれた。

 いわゆる、膝枕というやつだ。

 前に、夫のために何かしたいとしつこくお願いした私に対して彼がかなり迷った末に、「膝枕をしてほしいです」と言ったのが始まりだ。


 ムキムキしているのに、妻の膝枕が好きだなんて……うふふふふふふ。かわいい。


「ふふ。あなた、素敵よ」

「リズ様……」


 最近ようやく私のことを愛称で呼ぶようになってくれたので、もうそれだけで胸がきゅんきゅんする。

 ヴァルは照れて恥ずかしいらしく、私の膝の上で寝返りを打ったけど……あらあら、私のお腹の方に顔を向けるなんて。


「まあ、積極的ね」

「え? ……あ、い、いや、そんなつもりじゃ!」

「分かってる分かってる。でも……もっとくっついていいのよ?」

「それは……」


 口ごもって体の向きを変えようとするヴァルを逃がすまいと、膝を少し持ち上げてぎゅっとその頭を抱き込んだ。

 ……ああ、ちくちくした髪の感触さえ、気持ちいい。仕事帰りだから少し土埃っぽい匂いもするけれど、ヴァルの匂いもしてきて興奮する。


「私の旦那様……かわいい」

「……かわいいはおよしくださいと、いつも申し上げております」

「まあ、ごめんなさい。でもあなたはかわいいだけでなくて格好いいし、とても素敵よ?」


 私が適当にはぐらかすと、ヴァルは獣のように低く唸ってから、諦めたように私のお腹に顔を突っ込んだ。やだもう、積極的ー!


「……ふふふ。あなた、明日はお休みよね?」

「え、ええ、そうです」

「……今日は一緒に、夜更かし(・・・・)しない?」


 身をかがめて、真っ赤な耳元にささやく。するとヴァルの体がびくっと震え、うんうん唸った後にこくりとうなずかれた。


 ああ、やばい。

 普段は格好いいのに照れまくって、私のお誘いを受けてくれるヴァル……最高。鼻血出そう。


 この歪んだゲームの世界で私の心を清めてくれる、素敵な旦那様。

 これからめいっぱい、溺愛させてもらうからね?














 ヴァルと結婚した私は世間では、「騎士に渋々娶られた悪名高き伯爵令嬢」と呼ばれ、どうせその仲も冷え切っているだろう、もしくは妻が夫を奴隷のように粗雑に扱っているのだろう、と言われていたようだ(ダニエラ談)。


 でも私は結婚した翌年には第一子を出産し、その後も次々に子どもを産んだ。ヴァルは、「リズ様のお体が心配です……」と言っていたけれど私の方からぐいぐい迫り、ヴァルの子どもだったら何人でもほしい、とおねだりして誘惑した結果だ。


 ヴァルはすっかり子煩悩になり、大きな体を存分に使って子どもたちと遊んでいた。それでいてずっと私のことを「俺の愛する奥さん」と大切にしてくれたので、そのたびに惚れ直してしまった。


 たくさんの孫たちを、伯爵家の両親もかわいがってくれた。後にヴァルのお母様や弟妹たちも王都に呼び、私たちは皆で賑やかに暮らすことになった。







 なおダニエラはケヴィンと結婚してからは完全に夫を尻に敷き、見事なおねだり術で夫を支配した。

 一応ケヴィンが国王でダニエラが王妃だけど、この国を動かしているのは傲慢でガハガハ笑ってばかりのケヴィンではなくて、かわいこぶりながらも実は王城を牛耳っているダニエラの方だった。


 ケヴィンは私のことを「卑しい男の子を孕み、苦しむがいい!」と高笑いしていたけれど、ダニエラはちょくちょくお忍びでうちに来ては、かわいい我が子たちと遊んでくれていた。


 私とヴァルが一生ラブラブだったことと、私とダニエラの友情が一生涯続いたことは、言うまでもないだろう。

(登場人物)

リースベット・フランシスカ・フォンシェル(リズ)

22歳。伯爵令嬢。ダニエラ曰く「ドスケベボディ」。

前世はアラサーのOLだった。本人は性癖ノーマルだと思っているようだが、おそらく年下萌え属性を持っていた。好きなものは、夫の照れ顔。


ヴァルデマール・イェンス・ブラード(ヴァル)

20歳。没落貴族の下級騎士。くすんだ金髪と垂れ目の童顔ナイスマッチョ。

見た目は厳ついが優しくて家族思いな青年。本人は性癖ノーマルだと思っているが、年上のお姉さんによしよしされるのがツボ。好きなものは、家族。


ダニエラ

19歳。男爵令嬢。見た目だけは子リス。

前世は女子高校生だったが、18禁モノに手を出せる年齢になる前に亡くなったため、転生してスケベオヤジ令嬢になってしまったという悲しい過去がある。好きなものは、顔のいい男。


ケヴィン

23歳。王太子。銀髪。

『歪んだ愛を君に』のメインヒーローで、煽り文句は「認知の歪んだ傲慢俺様」。リースベットの婚約者だったが、ダニエラに捕獲された。顔だけはいい。好きなものは、甘え上手な女性。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 有能ヒロインダニエラ様がかっこよかった! きっと前世でも優秀だったのでしょうね、惜しい人を若くして亡くしてしまった。 ……まあ、ちょっとだけ下品なのは目をつぶりつつw
[良い点] 細じゃないマッチョがかわいい! 終始あたたかな気持ちで読めた素敵な作品な点。
[良い点] 面白かったです!ヴァルがとてもかわいくてラブラブで最高
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