妖精レイン
何がなんだかよくわからないままだ。どうやら先程の草原に、僕は立っていた。
結局、僕が与えられた恩恵とは何だったのか。サポート云々の人? も見当たらない。これからどうすればよいのだろうか。
「あっ! こーんなトコにいたっスね! もー、探しまくりましたっスよ!」
ぶんぶんと大きな虫が僕の周りを飛び回っていた。
「虫じゃねーっス!! 妖精っスよ! よーせい!」
妖精。
これもファンタジー世界でよくある存在。
名前はレインと言った。レインは神の使いであり、僕の『サポーター』とか『ナビゲーター』の役割として、色々と手助けをしてくれるとのことだ。
見た目は小さい少女の姿をしたレインは、透明な羽根と金色の髪を輝かせて僕の周りを飛んでいる。
「ちなみにここはアーヌイ草原。冒険初心者にゃ危険な場所っスよ。モンスターを避けて、まずは安全な近場の町をめざしましょー!」
あ。とレインが止まる。
「ところで、にーさんの名前、なんていうんスか?」
不意の問いに、僕は思考が止まる。そういえば……僕の名前……。ああ、思い出した。
「僕は……優里。そう、優里だ」
「ふぅん。ユウリっスか。改めて宜しくっス、ユウリ」
訊いておいて、興味を失ったかのような声色でレインは言う。
まだ記憶がはっきりしないところがある。
どこまでが僕の記憶なのか。どこまでが『この世界の僕』の記憶なのか。
……時間が経てば、落ち着くだろうか。
レインの先導のもと、僕は歩を進めた。