神様
ここまでで体感的に三時間は経過したはずなのに、スマホの時計やツイート発信時間は数分しか経っていない。かと思えば、1秒で5分進んだ。時間の流れが、違うのか?
直後、僕はさらに不思議な体験をすることになる。
一瞬の出来事だった。僕はどうやら命を落としてしまったらしい。蛇……のような何かに噛まれて、全身が痺れて、そのまま……あっという間の出来事だった。目の前が真っ暗になって、何も感じなくなった。
なのに、どうして意識だけははっきりとしているのだろう。
――急に身体が軽くなり、まばゆい光に包まれる。とても暖かい光だった。
光はゆっくりと一箇所に集まり、やがて人の形を成した。
「転生したばかりだったのに……ついてなかったねぇ」
光から、声がした。
「私が誰かって? うーん、まあ、この世界の神様ってところかな。ああ、うん。今、きみ喋れない状態だから、思うだけでいいよ。それで私に伝わる。そうそう、俗に言う、異世界転生ってやつね。えっと、きみが住む地球って言う星……世界と、ここは違う世界。ここはガルディアっていう世界。ま、名前は適当につけられただけだけど。あ、うん。察しがいいね。そう、きみはあっちの世界で交通事故? ってやつに遭って命を落としたんだ」
鈍く、重たい衝撃がよみがえる。
「たまたまゲートが開いていたんだろうねー。きみの魂はこの世界に迷い込んでしまった。そのままだと消えちゃうから、私は近くにあった新鮮な遺体に定着させたってわけ。ホントは先に恩恵を与えなきゃだったんだけど、久々だから忘れちゃったのと、予期せぬことだったから焦っちゃって。ごめんね」
”神”は続ける
「転生したばかりでモンスターにやられちゃうのはよくあるけど、流石に恩恵与えないうちに……は可哀想だから、サービスでやり直しね。あー、細かい説明は省くけど、異世界転生者の使命みたいなもんね。そうそう、お約束」
その後の話しを要約すると、恩恵――つまり特別なスキル、レアな能力を授けるから、悪の存在を倒してこの世界を救ってくれという。
悪の存在。
すなわち――魔王。
「そう。ありきたりな設定の世界さ。他にも色んな世界あるんだけどね。まー、きみのいた世界の“ゲーム”の中とでも思って、楽しんで生きてよ。え? もとの世界に帰れるかって? それはちょっと無理かなー。あっちの世界のきみの身体、火葬されちゃってるしね、もう」
……え。
「ま、そんな気落ちしないでよ。チートって程じゃないけど、よい恩恵あげるから……って言っても何が発現するかわからないんだけど。それっ」
頭の中で、何か弾けるような音が鳴った。
「さてさて、どんなスキルかなっと……って、あー、何というか、ホント、ゲームみたいなスキルというか、システム? でも使いようによっては……。だから、きみ自身のステータスは低いのかー。ああ、ごめん。詳しく説明……したいとこだけど、時間切れみたいだ」
“神”の声が急に不明瞭になった。
「心配しないで。私の分身みたいなものをサポートにつけるから。少しは役に立つと思うよ。そんじゃ、またどこかでー!」
……そして、僕は起き上がる。