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クローバーの日記帳

【あらすじでフェナーデがフエナーデになってます】 皇国暦218年言の葉月6日


 今日、婚約者のロギルス様から15歳の誕生日のお祝いに日記帳を頂いた。

 ロギルス様の護衛騎士様が持って来て下さったのだ。

 若草色で四つ葉のクローバーの刺繡のブックカバーがしてある日記帳だわ。

 可愛い、嬉しい。

 この日記帳を大切に使おう。

 私とロギルス様は、私が10歳、ロギルス様が12歳の時、婚約したのだけれど。

 母親同士が決めた口約束だったから。

 私が15歳の誕生日に正式に婚約は決められ。

 それまではお会いした事は無かったけど。

 誕生日の贈り物は、ロギルス様のお母様(エイダ・ランカスター侯爵婦人)が贈って下さっていたが。

 ロギルス様のお父様は余りこの婚約には賛成でないようだ。

 ロギルス様のお母様は時々お茶会で我が家に来られる事があったけど。

 ロギルス様のお父様(レオパルト・ランカスター侯爵)は来られた事は無い。

 とてもお忙しい方とお聞きしている。

 仕方のない事だわ、彼は侯爵家嫡男なのだから。

 お茶会で結婚式に初めて顔を合わせたと言う話も聞いた事がある。

 貴族の結婚とは政略結婚がほとんどで、『愛のある結婚は望めない』とお茶会に招かれた方が、ため息交じりにそう零していたが。

 私は愛が無くても信頼があればいいなと思っている。



 ~~~*~~~~*~~~



 皇国暦219年霜の月20日


 ロギルス様はとてもお忙しくて中々会えない。

 月に一度しか会えなくて。

 私から訪問する事は、控える様にお父様から言われた。

 護衛騎士様の方が、月に2回ほど贈り物を持って来て下さる。

 贈り物は花だったり、お菓子だったり。

 とてもきめ細やかな配慮がされた物ばかりだ。

 護衛騎士様のお名前はソルロンド・カースと言うそうで。

 ロギルス様より一つ上だとか。

 銀の髪に灰色の瞳で仲間から『真っ白白助』と呼ばれていると。

 冗談を言ってよく私を笑わせてくださる。

 その方にロギルス様の事をよくお聞きする。

 そうだ、お礼のお手紙を書こう。

 ロギルス様はお返事を下さるかしら?

 とてもお忙しいから返事が来なくても仕方がないわね。

 手紙にはお礼と、この間温室で咲いたアネモネの事を書こう。

 アネモネの花言葉は【儚い恋】や【恋の苦しみ】とか【見放された】【見捨てられた】なんてあまりいいい意味の花言葉ではないけれど。

 色によって花言葉は違うのよね。

 白いアネモネには【真実】【期待】って花言葉だし。

 紫のアネモネの花言葉は【貴方を信じて待つ】。

 ピンクのアネモネの花言葉は【期待】【待ち望む】

 そして…私の好きな赤いアネモネの花言葉は【君を愛する】よ。

 いつかロギルス様が赤いアネモネを送ってくださるといいな~



 ~~~*~~~~*~~~



 皇国暦220年梅雨の月6日


 雨が酷くて、ロギルス様の訪問が中止になった。

 残念。

 先月も訪問が中止になり。

 その代わり、護衛騎士様がお菓子を持って来て下さったわ。

 有名なお店のお菓子よ。

 とても美味しい。

 来月はロギルス様にお会いできるかしら?

 この頃、妹がお父様とよくお出かけしている。

 お医者様の所に行くと言っているが、凄くお洒落している。

 体の弱い妹はお母様とお茶会には出かけないけれど。

 お父様とはよくお出かけする。

 体の弱い妹の為に良いお医者様を探しているのですよと。

 妹の侍女が言っていたのを聞いた事がある。

 このところ……

 お母様の顔色が良くない。

 フエナーデの具合が悪いのだろうか?

 それにしてはあの子はお父様と度々お出掛けしているし。

 フエナーデの顔色はそんなに悪くない。



 ~~~*~~~~*~~~



 皇国暦220青葉月の12日


 夜中に目が覚めて喉が渇いていた。

 水差しは空っぽで、また新しく入ったメイドが水を入れるのを忘れたのね。

 明日しかっておかなければ。

 水が欲しくて台所に向かうと。

 妹の部屋で誰かが言い争う声がした。

 お父様とお母様の声?

 すすり泣いているのは妹?

 お母様が部屋から飛び出してご自分の部屋に駆け込んで行かれた。

 どうしたのだろう?

 でも次の日の朝食には、お父様もお母様もフエナーデも何処も様子が変わらなかった。

 私は悪い夢でも見たのだろうか?



 ~~~*~~~~*~~~




 皇国暦221年霜月26日


 今日学園の帰り、お友達と買い物に出掛けた。

 ふと見ると、お父様とロギルス様と妹が裏道に入るのを見かけた。


「どうしたの?」


 と友人に聞かれたから、知り合いを見た気がしたと答えたら。


「あまりあちらを見ない方がよろしくてよ」


 と言われた。


「あら……どうしてですの」


 友人は少し困った顔をして。


「あちらは……いかがわしいお店がある場所ですの」


「それなら私の見間違いね」


 そう……きっと私の見間違いだわ。

 お父様がいかがわしい場所にロギルス様やまして妹を連れていくはずはありませんもの。

 私は忘れる事にした。



 ~~~*~~~~*~~~



 皇国暦221年彩葉の月


 どうして‼ どうして‼ 


 こんな事になったの?


 この日に起こった事は全てが悪い夢の様だった。



 今日お父様に呼ばれて応接室に入ると、久しぶりにロギルス様がいらしてた。

 嬉しい。

 私はロギルス様に笑いかける。

 ロギルス様とお会いしたのは青葉の月だったかしら?

 お手紙では、学園での騎士の訓練が大変だと書かれていた。

 すっかり逞しくなって、幼さが抜けてきたわ。

 でも、ロギルス様もお父様もとても厳しいお顔で私を睨む。

 何故かフエナーデもいてソファに腰をかけて俯いている。


「どうしたの? フエナーデ泣いているの?」


 私は優しくフエナーデに訪ねた。

 フエナーデが手に持っているハンカチをギュッと握る。


「どうしたのだって‼ 何て白々しいんだ‼」


 ロギルス様が私に怒鳴る。


 えっ? 


 私は何故ロギルス様に怒鳴られたの?


 意味が分からなかった。


「お前は陰で隠れてフエナーデを虐めていたのだな‼」


 私は思わず父の顔を見た。

 父の顔は怒りでどす黒く歪んでいる。

 まるで親の仇を見る目だ‼


「わ……私はその様な事をしておりません‼」


 声が震える。

 お父様が私に向ける感情は無関心だった。

 応接間の花瓶程の関心を持たれた事が無い。

 小さい時はお父様の関心を引こうと、お勉強にピアノにダンスにと頑張ったが。

 一度もお父様から関心を持たれた事が無い。

 お父様の関心は何時もフエナーデただ一人に注がれていた。

 それでもいつかは……

 と思っていたが。いつの間にかその感情は諦観に変わり。

 お父様に愛されないのならその愛を婚約者に向ける様になった。


「おまけにこの毒薬は何だ‼」


「毒?」


「侍女が見つけた‼ これがお前の部屋から出てきたのだ‼」


 父は懐から小さな小瓶を取り出した。

 ドロリとした赤黒い液体が入っている。


 知らない。

 そんな小瓶なんて知らない‼


「お父様‼ 私そんな毒なんて知りません‼ 信じてください‼」


「見損なったぞ‼ エレナ‼ 私とフエナーデの仲を勘ぐって、妹に毒を盛るなんて」


「信じてください‼ 私はそんな恐ろしい事をしていません‼」


 私は父に訴える。


 パン‼


 左の頬に痛みが走る。

 気が付くと床に倒れ込んでいた。

 お父様にぶたれたのだ。

 椅子に座っている妹と目が合う。


「フエナーデ……信じて……私はあなたに毒など盛ろうとした事なんてない……」


 フエナーデは目を背ける。

 その肩が震えていた。

 体の弱いフエナーデはいつも部屋に閉じこもっている。

 それに私は、父に妹の所に行く事を禁じられていたのに。

 体が弱いから、お前の声が体に障るからと。

 どうやって妹に毒を盛れると言うのだろうか?

 気が付くと、母が部屋の隅に佇んでいた。


「お母様‼ 信じてください‼ 私はそんな……」


 父が私の腕を掴んで引きずるようにして馬車に放り込んだ。

 遠ざかるドアのすき間から、ロギルス様は妹を抱いて慰めている。

 婚約者の妹を慰めていると言うよりかは、まるで恋人の様だ。

 年老いた御者は直ぐに馬車のドアを閉める。

 あらかじめ馬車の準備はされていたのだ。

 慌てて駆けつけて来た者がいた。

 ロギルス様の護衛騎士のソルロンド・カース様だ。


「これは何かの間違いです‼」


 彼はお父様に取りなそうとした。

 しかし、父は耳を貸そうともしない。


「必ず‼ 必ず‼ 誤解を解いてお迎えに参ります‼」


 馬車に追いすがりながら彼だけはそう言ってくださった。

 遠ざかる馬車の窓から、二階の応接室のバルコニーに佇む人影がある。

 抱き合う二人の姿。

 ロギルス様とフエナーデだ。

 何故だか二人は笑って口づけを交わしていた。


 私は……

 父からも母からも妹からもそして……

 婚約者からも裏切られ見捨てられた事を知る。


 馬車は全てを置き去りにして王都から遠ざかって行った。




 ***************************

 2021/9/16 『小説家になろう』 どんC

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自治会の仕事やコロナワクチンの接種なんか色々ありまして。遅くなって申し訳ありません。

感想・評価・ブックマーク・誤字報告などよろしくお願いいたします。

今年は雨が多いせいか、捻挫した足首やらぎっくり腰なんかやばやばです。

皆様もご自愛ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この物語の続きは……ウズウズしながら更新待ってます☆
[一言] 小細工を弄して正嫡を追いやった上での貴賤結婚なんて国王が許すわけないじゃん 纏めて首括るまで追い込まれてしまえ
2021/09/16 06:12 退会済み
管理
[一言] まさかの続きktkr
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