ドラゴンと雨宿り
「なろうラジオ大賞2」応募作品のため、1000文字以内の作品になっています。
ポツリ…
頭に当たった雨粒に空を見上げる。
「ヤバい!」
慌てて篭を服で覆い、雨宿りできそうな場所を探す。
ポツリ、ポツリ…
ようやく大きな岩影を見つけて急いで走り込む。
「助かったぁ。」
篭の中身が無事なことを確認し、岩肌に背中を預けて座り込む。
「おい。」
知らぬ間に寝てしまったらしい。
地響きのような声で目を覚ますと大きな瞳と目があった。
ド、ドラゴン!!
逃げなきゃと思うのに恐怖で体が言うことをきかない。
嘘だろ!僕まだ死ねない!動け!動けよ!僕!!
そんな僕を嘲笑うかのようにドラゴンは息を吸い込む。
ドラゴンブレスだ!
咄嗟に篭を抱えて踞る僕を暖かな風が包む。
「よし。寝ていいぞ。雨が止んだら起こしてやろう。」
踞ったままの僕にドラゴンが声をかける。
「驚かせてしまったな。だが濡れたままでは風邪をひくぞ。」
少し困ったようなドラゴンの言葉で、僕は自分の髪や服が乾いていることに気づく。
「あ…ありがとう…ございます。」
何とかお礼を言うとドラゴンは目を細めた。
「大したことではない。それよりこんな森の奥まで薬草取りか?」
「す、すみません!」
「怒ってはおらぬ。森の恵みは皆の物。だが主のような幼な子にここは危ない。もう来てはいけないぞ。」
慌てて謝る僕にドラゴンは静かにそう告げる。
わかってる。森の奥が危険なことなんて百も承知だ。
「でも…父さんが死んでうち大変なんだ。母さんにこれ以上無理させたくないし、弟たちもまだ小さいから。」
僕がそう言うとドラゴンは驚いたように瞳を大きくする。
一拍おいて大きな爪が目の前に迫り、僕はヒッと悲鳴をあげる。
するとそっと爪が僕の頭を撫でた。
「偉いな。だが無理はいけない。主もまだ子供だ。」
「でも、僕がしっかりしないと…」
ドラゴンの爪は固くて冷たくて、全然似てないのに、なぜか父さんの手を思い出させて…
そう言う僕の声は喉の奥に物が詰まったような変な声だった。
「…そうか。では…」
そういうとドラゴンは僕の頭を撫でながら続けた。
「主が自分が子供であることを忘れそうになったら、いつでも雨宿りに来るがよい。」
僕はびっくりしてドラゴンを見上げる。
「いいの?」
「構わぬ。我は主より強く大きいからな。」
そう言うとドラゴンは目を細めた。
気づいたら雨は止み、空には綺麗な虹かかっていた。