表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ドラゴンと雨宿り

作者: 蜜蜂

「なろうラジオ大賞2」応募作品のため、1000文字以内の作品になっています。

ポツリ…

頭に当たった雨粒に空を見上げる。

「ヤバい!」

慌てて篭を服で覆い、雨宿りできそうな場所を探す。


ポツリ、ポツリ…

ようやく大きな岩影を見つけて急いで走り込む。

「助かったぁ。」

篭の中身が無事なことを確認し、岩肌に背中を預けて座り込む。


「おい。」

知らぬ間に寝てしまったらしい。

地響きのような声で目を覚ますと大きな瞳と目があった。


ド、ドラゴン!!

逃げなきゃと思うのに恐怖で体が言うことをきかない。

嘘だろ!僕まだ死ねない!動け!動けよ!僕!!


そんな僕を嘲笑うかのようにドラゴンは息を吸い込む。

ドラゴンブレスだ!

咄嗟に篭を抱えて踞る僕を暖かな風が包む。


「よし。寝ていいぞ。雨が止んだら起こしてやろう。」

踞ったままの僕にドラゴンが声をかける。


「驚かせてしまったな。だが濡れたままでは風邪をひくぞ。」

少し困ったようなドラゴンの言葉で、僕は自分の髪や服が乾いていることに気づく。


「あ…ありがとう…ございます。」

何とかお礼を言うとドラゴンは目を細めた。


「大したことではない。それよりこんな森の奥まで薬草取りか?」

「す、すみません!」

「怒ってはおらぬ。森の恵みは皆の物。だが(ぬし)のような幼な子にここは危ない。もう来てはいけないぞ。」

慌てて謝る僕にドラゴンは静かにそう告げる。


わかってる。森の奥が危険なことなんて百も承知だ。

「でも…父さんが死んでうち大変なんだ。母さんにこれ以上無理させたくないし、弟たちもまだ小さいから。」

僕がそう言うとドラゴンは驚いたように瞳を大きくする。


一拍おいて大きな爪が目の前に迫り、僕はヒッと悲鳴をあげる。

するとそっと爪が僕の頭を撫でた。

「偉いな。だが無理はいけない。主もまだ子供だ。」


「でも、僕がしっかりしないと…」

ドラゴンの爪は固くて冷たくて、全然似てないのに、なぜか父さんの手を思い出させて…

そう言う僕の声は喉の奥に物が詰まったような変な声だった。


「…そうか。では…」

そういうとドラゴンは僕の頭を撫でながら続けた。


「主が自分が子供であることを忘れそうになったら、いつでも雨宿りに来るがよい。」

僕はびっくりしてドラゴンを見上げる。


「いいの?」

「構わぬ。我は主より強く大きいからな。」

そう言うとドラゴンは目を細めた。


気づいたら雨は止み、空には綺麗な虹かかっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  企画読みで来ました  とてもほっこりとする物語だと感じました。 [一言]  読ませて頂きありがとうございました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ