メンターとの闘い〜その4
「オリト。あなた、現行の組織に入るつもりなのね?」
「新しく作り出すよりも、古いものを改革していったほうがいいと思うんだ」
「それは、うまく行く算段があって言ってるの?」
「ミサ…」
オリトは息がかかるほど近くにいた。
「俺は死ぬかもしれない。だけど」
「だけど?」
「俺が生きてたって証がほしいんだ」
「…」
オリトは行方不明になった。
「命令文に付け加えて。"AIの指示は絶対ではなく参照程度とする"」
様相はコンピュータ端末の書き換え合戦になっていた。
「ミサ」
「何?」
「裏パスワードに添付されてる文章、君宛だ」
ハッカー仲間から言われて、ミサは身重の体を事務椅子に乗せて画面に見入った。
"オレハココニイル。ミサ、キミニアイタイ。オリト"
"ココってどこ?"
"クライケンキュウシツ"
「発信源を特定して!」
「了解」
オリト。オリト。お願い生きていて。もし人生で何か過ちをおかしたのならば、生きてその過ちを償って!人生は儚いものじゃなく、自分の手足で形作っていくもの。どんなに長く生きても生きたりないって言ってよ!
ミサは心からそう叫びたかった。
自分の生きた証が欲しいって言ったよね?あなたの子どもが今私のお腹にいるけれど、あなた自身の生きた証は自分の手で掴んで下さい。子どもは受け継いでいくけれど、あなたではないの!
「特定できました!」
「行くわ」
「でも、一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫。あとをよろしく」
「はい」
ミサはオリトの元へ急いだ。