97 攻城戦
ビュオン
「ぎゃあああッ!」
ビュオン
「ガハッ」
城門をビームライフルで破壊しようと思ったのだが、弓兵が待ち構えていて危険だったので先に弓兵を狙撃。俺だけじゃなく、エルフ達も魔法で攻撃中だ。
せっかくここまで来て、弓兵なんかにやられたら兵達が可哀相だからな。
もう、たった1人の兵士すら失いたくないんだよ。
「よし、敵の弓兵も顔を出すとやられると学んだみたいで、もう出て来ないな」
威力レバーを操作して、扉だけを破壊する程度に調整する。
この城はウチらが使うことになるから、出来るだけ壊したくないんでね。
「じゃあ行きます!」
ビュオン
ズガン!!
ビームが直撃し、良い感じに城門だけを吹き飛ばした。
中を覗くと敵兵が何人も倒れていたが、難を逃れた兵士も何人かいて、飛び込むには少々危険そうだったからトドメの火魔法をぶち込む。
「クリア!城内に突入可能です!」
「よしっ!では順次突入開始!カトレア部隊は城の包囲を継続」
「ハッ!」
「じゃあ行くよッ!」
「「オーーーーーー!」」
一斉に突入したら、門で詰まってしまうからな。
ウチの特攻隊長、カーラが先陣を切って突入して行った。
今回はミスフィートさんの希望で、俺の部隊の次に本隊も突入することになった。
まだ一度も戦闘をしてないから、いい加減ストレスの限界らしい。
万が一を考えると戦わせたくないんだけど、『お飾りは嫌だ!』と全身全霊で駄々を捏ねたので、みんな渋々了承した。
おっと、俺の番だ。
「じゃあ行くぞ!」
「「オーーーーーーーーー!」」
城内に入ると、まずは死体の山だった。
クリアって言ったけど、言うほどクリア出来ていなかったみたいだ。てへぺろ。
奥へ進むと戦闘音が聞こえて来たので、そこからは警戒しながら進む。
「死ねええええええええ!!」
「シッ!」
ザンッ
不意打ちするのに、声を出したらダメだろ!
隠れてる敵兵に注意しながら、どんどん前へ進んで行く。
ジャバルグは城から逃げ出さなかった。ならば、こそこそ隠れるような真似は絶対にしないハズだ。城の象徴とも言える場所、玉座の間で待ち構えてると思っていい。
なので1階の細かい場所は一般兵に任せて、俺は真っすぐ玉座を目指す。
2階へ上がる階段を見つけた。
このまま駆け上がったら上から攻撃される気がしてならないので、敵の死体の鎧を脱がせて階段に放り投げる。
ドスドスドスドス
案の定、弓の集中攻撃を受けた死体が酷い有様だ。
「む!?小烏丸、上へ行かないのか?」
後ろから来たミスフィートさんが、上の様子を窺っている俺を発見したようだ。
「弓兵が待ち構えています。処分するので少々お待ちを」
ビームライフルの出力を、門を撃破した時の威力まで上げる。
ビュオン
ズガアアアン!
「「ぐああああっ!」」
敵兵の悲鳴の多さで判断すると、10人くらいいたのかもしれん。
「クリア。行きます!」
階段を駆け上がると、敵兵が10人ほど倒れていた。予想通りか。
辛うじて生きてる敵兵もいたので、刀を突き刺し介錯してやった。
俺の部隊の兵士達やカーラも追いついて来たので、兵士達に廊下脇の部屋を一つ一つ虱潰しに調べさせ、主力は一直線に玉座の間を目指すことにした。
そして奥へ進むと、大きな扉があるのを発見。
「この奥だな・・・、扉を破ります!」
「頼んだ!」
ビュオン
ドンッ!
扉を壊して中に入ると、間違いなくそこは玉座の間。
そしてその玉座にはジャバルグが一人、悠々と座っていた。
「・・・遅かったな?随分と待ったぞ」
「そいつは悪かった。私達は歩きなんでな」
とうとうミスフィートさんとジャバルグが対峙した。
「部下はいないのか」
「俺様一人だ。だが勝利を諦めたわけではないぞ?」
ジャバルグが立ち上がり、大剣を頭上に振り上げた。
「かかって来い。全員同時で構わん」
「ミスフィートさん!俺が行きますよ」
「駄目だ!!」
「な、なぜです?」
「大名というモノはな、その国で一番強き者がなるんだ。ジャバルグを単独で撃破せずに、私は大名を名乗る事など出来ない!」
それを聞いて、初めてミスフィートさんと会話した時のことを思い出した。
『大名ってのはその国で一番強い奴の事だ。ジャバルグを倒せばキミが大名になる事も可能だぞ?』
確かに彼女はそう言っていた。
この世界の常識がそういうモノならば、これは避けては通れない道。
ならばもう、ミスフィートさんの勝利を信じるしかない!
「わかりました。手は出しません。此処で二人の勝負を見届けます!」
「ありがとう」
ミスフィートさんがジャバルグの前に立つ。
ふと周りを見ると、カーラだけじゃなく、チェリンやリタなど重臣のほとんどが集まっていた。
ん?なぜか城の包囲を頼まれていたカトレアもいるな。
カトレアと目が合った。あ、目を逸らした。
「さあ、始めようか」
「貴様を倒し、尾張を平和な国にする!行くぞジャバルグ!」
俺が戦うと言ったが、それは万が一を考えてのこと。
実力で彼女が劣るとは全く思っていない。
元々実力は飛び抜けていたが、彼女の所持していた武器は粗末な物で、実力がまるで発揮出来ていなかった。
だが、今は俺の作り上げた毘沙門天を所持している。
ジャバルグがどれほどの強さだろうが、俺と彼女が組んだ以上、敗北など有り得ない!必ず奴を撃破し、皆が笑って暮らせる平和で豊かな国を創るんだ!
―――そして、尾張の命運を賭けた最後の闘いが始まった。




