93 小烏丸vsジャグルズ
今、俺の目の前には1メートルモヒカンの男、ジャグルズがいる。
もっと奥にいるのかと思ってたのだが、向こうからやって来たのだ。
しかしあの爆撃にも耐えるとは、良いモヒカンだ。
「キサマだな!?俺に派手な魔法を撃って来た野郎は!!」
「ご名答。しかしよく見えたな?陣に戻って行った直後に撃ったハズだが」
「殺気をビンビンに感じたから振り返った所で大爆発だ!俺の部下を何人も殺りやがって!キサマだけは俺の手でぶっ殺さねえと気が済まねえ!!」
なら部下に攻撃させるの止めろっつーに。
「死ねええええええ!!」
ザンッ!
「がはッッ」
「鬱陶しい、邪魔すんな」
しかも定期的に矢が飛んでくるのもウザい。
戦場だと、タイマンすらまともにやらせてもらえないようだ。
「行くゾ、マスク野郎!俺とキサマの1対1の勝負だ!!」
「どこが1対1だボケ!まあいい、面倒だからとっととかかって来い」
ジャグルズから凄まじい殺気が放たれる。
ダンジョンのゴブリンを思い出すな。最初見た時はチビりそうになったっけ。
ドゴッ!!
大剣が地面を破壊した。
咄嗟に避けたが、恐ろしい速度の一撃だ。
コイツはつええな。ジャバルグの弟ってことは、ナンバー2か。
面白い!これほどの相手は虎徹さん以来だ。
大名クラスはみんな強いと言っていたけど、ジャグルズも大名クラスと見た。
「俺の攻撃を避けやがった!?」
「いや、良い攻撃だったぞ?俺じゃなかったら今ので死んでる」
「当たり前だ!!だが少しはやるようだな・・・」
ジャグルズが冷静になったようだ。激高する相手なら楽だったのに。
ザンッ
不意に飛んできた矢を斬った。
くそー、マジで鬱陶しい!
「ゴハッ!」
「戦いの邪魔をするなんてダメですわよ?」
お嬢が倒してくれたのか!ナイス援護だ!これでジャグルズに集中出来る!
しかしジャグルズは冷静になってしまったので、なかなか攻撃して来ない。
・・・ならばこちらから仕掛けるか。
一瞬で間合いに入り刀を一閃。
ギンッ
しかし大剣で防がれる。
大剣は少し欠けたようだが、天国の一撃で折れないとは良い剣だ。
でも今の攻撃の威力に少し驚いている様子。
刀を右上段から袈裟斬りにすると見せかけ、体を反転して左下段からの振り上げ。
ガギンッ
しかしフェイントにかかったにも関わらず大剣で防がれる。
ジャグルズの野郎、本当に手強い!
ジャグルズも守っているだけでは埒が明かないと判断したらしく、怒涛の連撃を繰り出す。
薙ぎ払い、振り上げ、振り下ろしと見せかけての突き。
それをひたすら躱す。時には刀で弾き、相手の隙を窺う。
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―――――ジャグルズ視点―――――
このマスク野郎、マジでつええ!
体裁きも見事だが、その攻撃の重さが異常だ。
前大名との戦いでも、これほどの手練れは一人もいなかった。
それに何なんだあの武器は!!こっちはオリハルコンの大剣だぞ?
あんな細っこい剣のくせに、俺の剣をどんどん砕いて来やがる!
クソが!!このままでは、こっちの武器が持たねえ・・・。
大剣が壊れる前に勝負を決めなきゃ、このままじゃ確実に負ける!
奴の攻撃を防いでるだけじゃ駄目だ。攻めて攻めて攻めまくってやる!
コイツを兄者の元に行かせてはならねえ!絶対に俺がコイツを殺す!
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―――――小烏丸視点―――――
「ハアッ、ハアッハアッ、フーーーッ!」
ジャグルズが少し下がり、大剣を降ろす。
「お前、強いな・・・。反乱軍如きにこれ程の男がいるとは想像もしなかった。このままじゃ俺の武器が壊されちまう。次の一撃で決めるぞ!」
戦闘中にジャグルズに話しかけられるとは思わなかった。
しかし敵に褒められるとはな・・・。ジャバルグ軍にも、まともな奴はいたのか。
「いや、あンたも相当強いぞ。ここまで苦戦したのは三河の虎徹さん以来だ」
「三河の?ああ、あの眼帯の男か!奴とやり合ってたとは驚きだ」
「まあ敵ってワケじゃないんだけどな。一度戦う機会があったってだけだ」
本当は二度なんだけど、最初は俺が雑魚すぎたからノーカンで。
「お前が味方なら頼もしい限りだったのだが、敵にいる以上殺し合うしかねえ。さて、そろそろ決着をつけるぞ!」
「どちらが勝っても恨みっこ無しだ」
奴との間合いを図り、刀を鞘に納める。そして抜刀術の構えに移行。
それを見たジャグルズが訝し気な表情になるが、その直後、殺気が膨れ上がった。
ドンッ!
ジャグルズが大地を蹴り、一瞬で間合いを詰められる。
大剣が目の前に迫るが、今回はしっかり見えている。
虎徹さんの時と違って相打ちにはならない!
刹那、懐に潜り込み刀を一閃。
「・・・俺の負けだ」
ドサッ
その斬撃はジャグルズの胴体を鎧ごと断ち斬り、体が二つに分かれ地面に倒れた。
・・・ジャグルズ、あンたも無茶苦茶強かったぞ。
「敵将ジャグルズ、小烏丸が討ち取ったり!!!」
「「わあああああああああああ!!!」」
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