896 忍者達がすごく知りたかった情報
伊賀大名の居城である『華月城』に最強便器を設置しに来たのだが、トイレ工事が終わった直後に頭から土をかぶってしまい、風呂に入ることになった。
驚いたことに華月城の風呂がまさかの温泉で、しかも露天風呂まであると聞き、テンションMAXで平蔵と共に男湯へ突入。
内湯も檜風呂で非常に興味があったのだが、ここはやはり露天風呂に入るしかないと思い、扉を抜けた先にあった岩風呂を見て感激していると、なぜかすぐ近くからお色気お姉さんの声が聞こえ、まさかの混浴だったことが判明した。
まあそんなわけで、くノ一達の裸を見て一通り驚いたわけだけど、向こうも俺の顔をジーっと見たままフリーズしていることに気付いた。
「声が同じだから間違いないと思うけど、尾張軍師の赤い流星なのよね?」
「その通りだが・・・。ああ!そういやマスクを着けてないんだった!」
「何でそんな男前なのに顔を隠してるわけ!?」
「ホントだよ!意味わかんない!!」
「素顔でいた方が絶対モテるよね?」
「この人おかしいよ!」
いや、もうモテなくていい!
これ以上嫁が増えたら手に負えん。
「そうそう!この男はマスクで顔を隠しているくせに、そこから更にピカピカ人間に変装する奇人変人なのだ!」
「奇人変人とか言うのヤメレ!装備品の制約の問題だ。別に顔を隠しているわけではなく、ヘルメットまで全部装備することで能力値が上がるから外せないんだ」
「装備が強いからって理由で、いつもあんな窮屈そうな格好しているの?随分と徹底してるわね~」
「着る時少し面倒ではあるが、言うほど窮屈じゃないぞ!たまにヘルメットを脱ぎ忘れたまま寝てしまい、首を痛くするくらい馴染んでいる!」
「アホだ!!」
この説明ってもう何度目だ?
俺って、そんなおかしなことしてるかなあ?
「ところで、洗い場ってあそこか?」
「そそ。土をかぶっちゃったし、まずは体を洗いましょ♪」
というわけで、洗い場に移動した。
「三河の雑貨屋で買った、体や髪を洗う洗剤は持ってこなかったのか?」
「あーーーっ!忘れてきちゃった!」
「そうか。尾張で売られている物で良かったら、1セットプレゼントしてやろう」
「やったーーーーー!」
使い方を教えるため、お色気お姉さんの隣で体を洗うことになった。
メロンが気になってしゃーない。
「泡草と違って、洗う場所によって使用する洗剤が違うんだ。シャンプーってのが髪を洗うヤツで、お色気お姉さんくらい髪が長い場合、3プッシュくらいした方がいいかな?平蔵くらい短髪なら、1プッシュで余裕だ」
ポンプを数回プシュプシュして、シャンプーが出るようにしてから、まずは自分の髪を泡立たせてみせた。
「へ~~~~~!とても良い香りがするわね♪でもよく分からなかったから、お願いしていいかしら?」
「は!?俺がお色気お姉さんの髪を洗うんかい!!」
「ずるーーーーーい!私も洗って!」
「おい、ちょっと待て!もしかして平蔵もか!?」
「自分でやるわい!何が悲しくて男に頭を洗われなくてはならんのだ!」
「そ、そうだよな!?驚かせやがって!!」
「勝手に勘違いして驚くのやめろ!!」
とりあえず先に平蔵にシャンプーを使わせてから、自分の手の平に2プッシュして、お色気お姉さんの髪の毛をわしゃわしゃ泡立たせ、追加の1プッシュで肩から下の髪の毛も泡立たせる。
「アハハハハハ!泡草よりも泡立ちがいいかも♪」
「こっちもはーやーくーーー!」
「なんで俺が侍従みたいなポジションになってんだ!?自分で洗いなさいよ!」
とか言いつつ、結局くノ一3名の髪の毛も泡まみれにしてから、ようやく元の場所に戻って来た。
土をかぶったので二度洗いを推奨し、かけ湯で泡を流してから、次にリンスの説明をすると、案の定リンスもお願いされた。
「それくらい自分でやりなさいよ!」
「いいじゃない♪貴方が華月城のお風呂に入ることなんて、最初で最後かもしれないでしょ?」
「まあ確かに、滅多にあることじゃないとは思うが・・・」
「ほらほら、はーやーくーーー!」
まだ忍者の生態がよく分かっていないので、風呂での裸の付き合いで仲良くなる感じなのかなと思い、彼女達にリンスもしてあげた。
そしてボディーソープの説明をすると、当然のように体を洗わされたけど、さすがに背中を流すだけで許してもらえた。
ちなみに平蔵の背中は流さなくてもいいらしい。
忍者風呂の仕来たりがよう分からん!
とにかく体がキレイになったので岩風呂に入ろうとしたら、少し遅れて残りの土魔法忍者がお風呂にやって来て、一気に露天風呂が騒がしくなった。
もう忍者達の体を洗うのは面倒だったので、シャンプーなんかの説明は平蔵に任せ、一足お先に岩風呂に入る。
カポーーーン
「やっぱ温泉は最高だな!」
「気に入ってくれて良かったわ♪」
「温泉が好きなんだね~」
「大好きだぞ!北海道で入った温泉も最高だった!」
「えーと、最北の地のことだったかしら?」
「うむ。魔物が出るから落ち着かないけどな。素っ裸で20体もの魔物と戦った時は泣きたくなった」
「うは!湯船が血で染まったら地獄の湯じゃない!最悪ね」
実際になったんだよなあ、血の海地獄に。海じゃなくて温泉なんだが。
あれはマジで最悪だった・・・。
「聖帝と斬り合いの最中に飛ばされたとか言ってたわよね?」
「そういや、その話もしたんだっけか」
「聖帝ってやっぱり強かった?」
お色気お姉さんを見ると、真剣な表情だった。そういえば伊賀とも領地が隣接していたわけだし、いつ攻めて来るかと一瞬も気が休まらなかったのだろう。
「恐ろしい男だった。近畿を掌握していただけあって戦闘能力も凄まじいのだが、何よりも恐ろしかったのは、恐怖の波動で仲間全員の動きを封じられたことだ」
「恐怖の波動?怖い男だとは聞いていたけど・・・」
「戦の最中に恐怖で身体が動かなくなるんだ。何万もの敵兵の前でな。どんな強い武将でも身体が動かなければ斬られて終わりだ」
「「そんな・・・」」
「おかげでミスフィート軍の兵士が何人も殺られたよ。しかし俺には恐怖など効かないんで、俺が聖帝と殺り合うことになったんだ」
気付くと、お色気お姉さんとくノ一達だけじゃなく、お風呂に来た忍者全員が俺の話に夢中になっていた。
「聖帝は剣技も達人級なんだが、本当に恐ろしかったのは闇魔法で視界を奪われたことだな。斬り合いの最中に暗闇になるんだぜ?」
「そんな奴とどうやって戦えばいいのだ!?」
「此方も同じ手を使えばいい。炎魔法で聖帝の視力を奪って何とか同じ条件に持ち込んだ。聖帝は『熱い分、我の方が損ではないか!』って怒ってたけどな!」
「「ハハハハハ!!」」
「まあ、見えない状態で斬り合ってるもんだから、どっちも血まみれのボロクソですよ。至近距離で電撃の魔法までくらってさ、アレは死んだと思ったね!」
「よ、よく生きてたわね・・・」
「俺が死んだら全滅するかもしれんしな。頑張ったよ!んでまあ、もう少しで勝てるって時に、聖帝の家臣が持ってた魔道具で北の果てまで飛ばされたんだ」
「聖帝は!?」
「あの男も満身創痍で戦闘不能に近かったから、このままじゃ危ないってことで、俺と同じ様にどこかへ飛ばされていった」
「くそッ!聖帝は生きておるのか!」
「あの男のことだから生きてるだろうな~。でも飛ばされる前にミスフィートさんが右腕を斬り飛ばしたみたいだから、前ほど強くはないと思うぞ?」
「そうか!尾張大名がやってくれたか!!」
「右腕が無くなったのなら、少なくともしばらくは大人しくしてそうね・・・」
「「よかったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
忍者達も聖帝の恐ろしさを知っていて、非常に警戒していたようで、右腕を無くしたという情報に心から安堵しているな。
そうか・・・、聖帝がどうなったかなんて、実際に戦ったミスフィート軍しか知らない情報だから、ずっと詳細が知りたかったのかもしれない。
ゆっくり話ができる場所で、当人から聞けるチャンスがきて良かったな!




