893 野球が盛り上がってきた
伊賀の里の広場の中心でツッパリ共の武器を作っているわけだが、ケンちゃんとセイヤに金属バットの本当の使い方を教えたところ、バットでボールを打ち返すのが思った以上に面白かったみたいで、ニンニンを交えてワーワー盛り上がっている。
ただヒットを打つとボールを取りにいくのが大変で、ヒットを打たれないようにピッチャーが少し本気を出し始め、野球のレベルが少し上がってきた。
そこでピッチャーをやっていたニンニンに、変化球を教えてやることにした。
「ボールをこうやって握る。すると変化球を投げることが出来るんだ」
「変化きゅーでござるか?」
地面に『変化球』と書いた。
「昔、遊びで変化球を投げる練習したことがあるんだ。俺も素人同然だから成功するかどうかわからんけどな」
ケンちゃんが構えるグローブに向かって、スライダーを投げてみた。
ヒュン
「いてッ!あれ?なんで捕れなかったんだ?」
お?ほんの少しだが変化したっぽい。
「曲がりはイマイチだったけど今のがスライダーだ。次は違うのいくぞ!」
ヒュン
「うごッッ!」
「なんだ!?ボールが消えた!!」
おお!フォークはメッチャ落ちた!
高レベルで身体能力が上がってるおかげか?
ちなみにボールはケンちゃんの股間に直撃し、向こうで悶絶している。
「ケンちゃん大丈夫か?今のがフォークだ!」
「うぐぐぐ・・・、へ、変化きゅーってヤツ、見えなくてヤバいっス!」
「今のすげーーーーーーーーーー!どうやって打つんだ?」
「ボールの軌道が変わるとか、面白いでござるな!」
「ただケンちゃんが瀕死なんで、変化球を投げる時は『次は変化球いくぞー』って教えてやった方が良さそうだ」
「ニンニン。でも打つ方にもバレるでござるな」
「まあ捕れるようになるまではしょうがあるまいよ」
とりあえず二種類の変化球を伝授したので、金属バット職人の仕事に戻った。
変化球を覚えたことで今度はピッチャーが人気となり、三人でワーワー盛り上がっている。
そうこうしているうちに、ゼーレネイマスが現れた。
「アレは何をやっている?」
「野球だ」
地面に『野球』って書いて軽く説明した。
「なかなか面白そうだな」
「今、ボールの軌道を変化させる遊びが流行ってるから、曲がるボールを打てるか試してみるといいさ」
協調性の無さが売りのゼーレネイマスだが、興味を持ったことには積極的に手を出す一面もあるので、なんか普通に野球に参加した。
ちなみに伊賀で忍者達と修行するって話はナシになったらしい。
ツッパリ共が合流したらダンジョンでレベル上げをする予定だから、そこからまた仕切り直しって感じでバリバリ戦うため、この一週間は精神と身体を休めることにしたのだ。みんなすごく喜んでたぞ!
「ねえねえ!みんなで何やって遊んでるのさ?」
今度はレミィとレナとパトランが現れた。三人で伊賀の里を観光してたらしいけど、広場の近くを歩いてたら俺達の姿が見えたようだ。
「ほうほう、野球って遊びなのね」
「レミィ達も参加してみるといい。中が空洞の軽い金属バットを作ったから、向こうに持っていってくれ」
「ハイハ~イ!」
女の子三人も加わって騒がしくなってきた。
しかし、フライやライナー性の当たりをキャッチするにはグローブが必要か。
ガチャで手に入れた軍手に衝撃耐性を付与すれば代わりになるかな?
軍手なら、デラックスガチャの青カプセルから10双セットのが定期的に手に入るので、たぶん200双とか持ってる。
しゃーねえ、衝撃耐性と汚れ耐性を付けた軍手グローブを作ってやっか!
「ピカピカじゃないピカピカがいた!」
『すのこ』の上に座って軍手を強化してたら、白が勝手に肩に跨った。
「おっと!肩車はいいけど、金属バットを作る時は近くにいるだけで火傷するから降りるんだぞ?」
「うん」
「あれは何をして遊んでいるのかしら~?」
よく見ると、白はお母さんと一緒だったらしい。
お母さんといっても20代後半くらいで全然若いけどね。
「白のお母さんも一緒だったのか!えーと、あれは野球って遊びだ。ところで忍者の姿があまり見えないんだけど、広場って普段こんなもん?」
「お城に行ってるのよ。お祭りで大絶賛だった味噌と醤油を売ってもらえるってことで、朝から大行列になってるわ!」
白のお母さんが、手提げかばんの中を見せてくれた。
「なるほど、味噌と醤油か!そりゃみんな買いに行くわな」
でも買えたのは味噌と醤油だけっぽいかな?
人が多すぎて収拾つかなくなるから、雑貨品は後日販売するつもりなのだろう。
「帰ったらお味噌汁を作ってみようと思うの!」
「味噌汁はどんな具を入れても大体全部美味いぞ~。具の組み合わせが重要だから、色々探ってみるといい。味噌を入れ過ぎないようにな」
「ドラゴン汁がすごく美味しかったわ♪といってもドラゴンのお肉なんて手に入らないんだけどね~。えーと、他のお肉を入れても美味しいのよね?」
「脂身の多い肉ならアレに近い味になると思う」
「ふむふむふむ」
白のお母さんと料理の話で盛り上がってたら、広場に少しずつ忍者が現れるようになった。まだ昼間だから夕食を作るには早いしな。
「よし、軍手グローブ完成!ちょっと向こうまで歩くぞ」
「うん」
野球勢のところまで移動し、全員に軍手グローブを手渡した。
「その『軍手グローブ』には衝撃耐性++が付与されているから、痛烈な打撃をキャッチしても痛くないと思う。ちょっと強めにキャッチボールしてみてくれ」
「ほうほうほう!パトラン、強めにボールを投げてみて!」
「あいよ!」
ヒュン
パシッ!
「ホントだ!全然痛くなかった!」
ヒュン
パシッ!
「これは使えるね!このでっかいグローブはもういらないかな」
「いや、軍手グローブで変化球をキャッチするのは難しいと思う。キャッチャーだけはそっちのデカいグローブを使った方がいいんじゃないかな?」
「あ~そっか!」
そして、軍手グローブを装着した野球チームでワーワー盛り上がってたんだけど、広場で面白そうな遊びをしてるわけだから、興味を持った忍者達がどんどん集まってきた。
ふむ・・・。これだけの人数がいれば、もう普通に野球ができるな。
となるとベースやホームベースが必要だよな。鉱山から石灰を持って来て、ラインも引いてやった方がいいか。まあ今日のところは何か別の物で代用しよう。
よし!そろそろ皆に本格的なルール説明をしてやるか!




