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赤い流星 ―――ガチャを回したら最強の服が出た。でも永久にコスプレ生活って、地獄か!!  作者: ほむらさん


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89 ルルの頼み事

 朝の訓練場。



「「イッチニーサンシ、ゴーロックシチハチ!」」



 兵士の数もどんどん増えて、最近は規律を重視した訓練をするようになった。


 今までは『ミスフィートと愉快な仲間達』って感じの軍だったから、規則なんてゆるゆるもいいとこだったんだけど、兵士が増えるとそれじゃあダメなんだよね。


 軍としてしっかり統制がとれてないと、この先の戦いに生き残ることは出来ない。


 ちなみに今兵士達がやってるのは、ラジオ体操だ。

 当然ラジオなんか無いので、掛け声を中心にやらせている。


 最初は俺が兵士達の前に立って、実際に動きを見せながら全員に真似させていた。

 それを毎日やっているうちに、動きや順番を覚えてくれたようなので、今は別の人に指導を任せている。


 集団行動ってのは結構大事で、ラジオ体操はチームワークを磨くいい訓練なんじゃないかなーとか思っているんだけど、まあ、何かしら効果はあると思う。

 体操が終わると次はランニングをし、そこからようやく刀の素振りが始まる。

 体力がなきゃ戦なんて出来ないからな。走り込みは絶対必要なのだ。



 鉱山組は戦を経験したのが本当に大きく、刀の使い方も様になって来た。


 その中でもリーダーの素質がある者は組頭に任命し、下に新人兵士9名をつけて、10人1組体制で訓練させてみている。

 新兵の中には実力者もいて、リーダーが出来そうならば組頭に抜擢することもある。ウチは年功序列でリーダーを決めたりはしない。


 尾張平定後ならばしっかりした身分になるのだろうけども、今はまだ暫定の組頭だから給料はみんなと一緒だ。でもいずれはその肩書きが給料に反映されるようになるのだから、将来に向けて頑張って欲しいもんだ。


 しかし中にはソリが合わない人とかもいるんで、自己申告によるチームの入れ替えも許可している。

 口だけは達者な無能の上司とか、実際いるからな~。

 酷い組頭の下じゃ、出世に響くどころか最悪の場合死に直結する。なので自分の直感を信じて、良いリーダーを探し当てて欲しい。


 もちろんイジメや暴力行為などの報告があれば、証拠を掴み次第、俺自ら粛清だ!

 目に余るほど酷い場合は『躊躇なく殺す』と、予め兵士全員に伝えてある。

 そこそこ厳しく扱っているので、軍の統制は結構上手く行ってるんじゃないかな?



 そして、俺が参入する前から軍を支えていた女性達。


 彼女らはみんな本当に強いんだけども、まだ身分が確定されていない。

 ってか、身分持ちって俺とカーラだけなんだよね。

 なので、とりあえずは組頭の一つ上のポジションで動いてもらってる。


 カトレア、チェリン、リタ、リナは服も武器も入手済みなので、侍大将の一つ下の足軽大将扱いで大役を任せている。

 現在ダンジョン服を着ている数名の女性達も、やはり皆から一目置かれている存在なので、それ相応のポジションに就かせて頑張ってもらってる感じだな。




「小烏丸さん!お願いがあるのです」


「ん?ルルか。お願いって?」



 ルルから頼みごとをされたのは初めてだ。何だろう?



「他のエルフ達にも、指輪を作ってあげて欲しいのです!」

「・・・指輪か~」


 ミスリルの在庫はまだあるので、指輪を作るのは造作もない。しかし面識がない人に恩賞クラスの物を与えるのは、よっぽどの理由がなきゃ無理だぞ?


「作ることは可能だけど、いっぱい条件があるぞ?」

「条件ですか・・・」

「んじゃ、いくつか質問するから答えてくれ」


 指輪の価値は、ルルが1番良くわかってるだろうに。



「一つ目、そのエルフ達は軍に入りたいのか?それとも指輪を買い取りたいのか?」

「二つ目、その人達は信用できるのか?指輪を持って逃げたりしないか?」

「三つ目、指輪を渡すに値する力はあるのか?」

「四つ目、ミスフィート軍に相応の見返りはあるのか?」



「・・・えーと、ボクの村の人達なので信用できます。絶対に持ち逃げなんかしません!魔法はボクより上手な人達ばかりです。ただ軍に入るかどうかは聞いてみなければわからないです」


 いや、そこが一番重要なんだが。


「さすがに軍の人以外に渡すのは無理だ。簡単に作ってるように見えるかもしれないが、その指輪は恩賞の服クラスの性能。ホイホイばら撒いたりしたら、他の兵達に示しがつかないだろう?本来ならば軍で戦功を上げて、ようやく手にすることが出来るような代物なんだ」


「うう、そうですよね・・・」


「ルルはたぶん、指輪さえあれば村のみんなが強くなって色々なことが出来るようになるから、ミスフィート軍の力になれるんじゃないかと考えたのだろう?」

「わわっ!そうなのです!絶対力になれると思ったのです!」



 やっぱりか。ふわっとした考えのまま俺の所に来てしまったんだな。



「えーとだなあ、俺がエルフ達に軍に入って欲しい理由は、戦力欲しさだけじゃないんだよ」


「?」


「ジャバルグ軍との戦いは、ほぼ間違いなく反乱軍が勝つだろう。問題なのはミスフィートさんが大名になってからの話だ」


 これは先読みしておかないと、尾張の今後に関わる問題だ。


「尾張の惨状を憂いて、ミスフィートさんがジャバルグ打倒の為に立ち上がった。そして彼女と一緒に戦う為に、大勢の仲間たちが軍に参加した。そのほとんどは人族だが、ドワーフも獣人も続々と集結し、ついにジャバルグを倒すことに成功する」


 そう、この話にはピースが一つ足りてないんだ。



「ちなみにエルフの参加者は、ルルとララだけだ」



 ルルがハッとした顔になった。



「気付いたようだな?尾張の為に立ち上がった戦士達の中に、エルフが入っていないのが問題点なんだよ。俺達はルルの功績をとても良くわかっているけど、世間一般の人らはそれを知らない。みんなが頑張っているのにエルフは何もしなかったなんて噂が流れてしまうと、間違いなくエルフはこの国に住みにくくなる」


 せっかく国が平和になったのに、エルフだけが隅っこに追いやられるとか最悪だろ。そんなん俺も見たくないわ。


「尾張が平和になった後に大手を振って街を歩く為にも、エルフ達を説得してくれないか?・・・きっと次の戦は大きなモノになるだろう。死人もたくさん出るだろう。しかしエルフ達が加われば、反乱軍は必ず勝つ!これに参加しない手はないぞ!」


「うん!小烏丸さんの言う通りです。もう怯えて暮らすのは嫌です!エルフのみんなはボクが絶対説得するです!」

「もし難航するようならば手伝うよ。こう見えて、弁舌は俺の得意技なのだ!」

「あははっ!その時はお願いしますね!」



 その後、ルルがエルフ達の説得に成功し、何十人ものエルフが軍に加わることとなった。


 尾張にいる全ての種族が手を取り合い、ジャバルグ軍を撃破するのだ。

 この国の未来は明るいぞ!


 ただ俺の弁舌が炸裂しなかったのは少し残念だった。くそう!

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