878 伊賀の里
越後で休暇を満喫した近江一行だったが、何十人ものツッパリが参加するとなると、レベル上げからの実戦投入という流れを見据えて動く必要がある。
初めての実戦が1000人規模の敵軍と戦う街バトルなんてことになると絶対死人が出てしまうから、いつものように遠足を続けて次の街に到着するのもマズいって話になり、ツッパリ共と合流するまでの一週間、伊賀の里で遊ぶことになった。
というわけで、メタルヒーロー達は一週間お休みだ!
でも俺はツッパリ共に武器を作ってやる必要があるから、一緒に伊賀の里に行って鍛冶をする感じになるかな?
アリアダンジョンの虎徹さんの部屋でやるのが一番集中できるんだけど、一人黙々と金属バットを作り続けるのはなんか嫌だ。俺はバット職人じゃねえんだよ!せっかく伊賀の里に行くんだから、俺だって一緒に遊びたいのだ。
いつものように夜伽を終えて、ダンジョン班をアリアダンジョンに放流。
シャアリバーンに変身し、大和の里に転移した。
「お、来たか!」
「ハローニーハオコンニチワーーーーー!」
「今なんつった?」
中央広場にいたのは平蔵だけじゃなく、ニンニンもくノ一達も勢揃いしていた。
また揉みくちゃにされるんじゃないかと警戒したが、平蔵と二人で伊賀の里に行くと告知されていたようで、出発の邪魔をしないよう自粛してくれたみたいだ。
桜と白と春がニコニコしながらこっちを見ていたので、手だけ振っといた。
「んじゃとっとと行こうか」
「国境からあの乗り物で飛んでいくのだったか?」
「いや、聖帝軍から奪い取ったあの城からだな。城から国境まで大した時間も掛からんから、途中で昼飯を食った程度の違いだ」
「結構な距離があると思うのだが、そんなもんなのか・・・」
ただ単に、国境まで行くとか言ってたのを忘れてただけなんですけどね!
「では行ってくる!伊賀の里に到着したらピカピカの移動魔法で戻って来るから、里帰りする者は、しっかり準備して待っておるように」
「「はーーーーーーーーーーーーーーーい!」」
平蔵と手を繋ぎ、城の前に転移した。
「おお、城だ!しかし一瞬で景色が変わるのには慣れんな・・・」
「突然城の中から浜辺に連れていかれた人なんか、大騒ぎしてたぞ」
「そりゃ騒ぎもするだろう!」
そんな会話をしながら試作2号機を出し、平蔵に色々と説明する。
そして試作2号機に跨り、シートベルトを装着した。
ちなみに俺はピカピカに変身したままなのだが、この姿で上手く操縦できるか少し不安だったりする。まあ大丈夫だろ!
「よし、発進するぞ!凄まじい加速だから、舌を噛まないよう注意しろよ?」
「わかった。正直怖いが、お主の腕を信じよう」
ドシューーーーーーーーーー!
謎のピカピカと作務衣姿のおっさんが、大空にぶっ飛んでいった。
「こ、怖いなんてもんじゃなかったぞ!本気で死ぬかと思ったわ!!」
「安心しろ。俺も最初飛んだ時はチビるかと思ったし」
「まだ心臓がバクバクしとるぞ!しかし素晴らしい景色だな!」
「晴れて良かった。雨降りのフライトは結構辛いんだこれが」
「大和の街を見下ろすとこれ程までに美しいのだな・・・」
「伊賀の国ってどんな感じなんだ?」
「大和とは比べものにならん程の田舎だ。だからこそ守りやすくはあるな」
「丹波みたいな感じか。なんにしてももうすぐ見られるか」
「あとどれくらいで国境なんだ?」
「小半時ってとこかな」
「なるほど。確かにそれなら昼飯程度だな」
後ろに女の子を乗せてのフライトと違って、今日は正義の味方と忍者のおっさんという意味不明な組み合わせだが、意外と楽しく会話しながら国境まで来た。
「速い!なんと凄まじい乗り物なのだ!」
「さて伊賀の国に入った。道案内頼んだぞ?」
「任せておけと言いたい所だが、上空からの眺めだと非常に難しいな・・・」
「伊賀の里への愛があれば感じるハズだ。俺なんか、ミスフィートさんが家出して秘密基地に隠れていたとしても直感で見つけ出すことが出来るぞ!」
「なんだその大名に対する異常な程の狂愛は!?」
「ふぉふぉふぉ。お主も精進するのだな」
「上から目線で生意気な!見ていろ、儂の郷土愛を!」
こうして、本気になった平蔵の指示する方向に試作2号機を走らせた。
おそらく忍者の用心深さにより、他国との隣接地点には広い道などなく、俺には森の上を飛んでるだけにしか感じなかったが、平蔵の郷土愛は本物だったようで、1時間後くらいに小さな村が姿を現した。
「村だ!えーと、ここが伊賀の里なのか?」
「いや、ここではない。中継地点にある村だな」
「降りるか?」
「頼む。この村に用事があるわけではないが、もうここまで来たということは、夕刻までには伊賀の里に到着するだろう。というわけで昼飯にしないか?」
「確かに腹減ったな。よし、降りよう!」
村の人達を驚かせないよう、ゆっくりと中央広場に着陸した。
上から変なモノが降ってきたから忍者達が驚いているが、大和の里と違ってご年配の方が多く暮らしてる村のようだ。
魔改造されたミスフィート領とは違い、どうやら忍者達は中央広場に集まって運動や世間話をするのが日常みたいで、横の繋がりの強さを感じた。
やはり平蔵は伊賀軍の重臣らしく、年配者からも敬語で話し掛けられている。
気楽に正体を明かせない俺のために家を借り、そこで昼飯を食った。
伊賀の安全な村にいるわけだから、正体を知られても問題無いような気はするんだけど、まあ一応って感じ?
話を聞くと、忍者達は何か事件があれば全員で協力して解決するのが常識といった感じで、レザルド軍相手に一歩も引かずに戦える理由はこれかと感心したぞ!
腹も満たされたので、平蔵と二人で試作2号機に乗って空に舞い上がり、伊賀の里目指して爆走を再開した。
確かに伊賀は森に囲まれた村がちょこちょこあるような感じで、今の所大きな街は見当たらない。
だが、街と言うより大きな村って感じのとにかくデカい村が見えたので、平蔵に聞いてみると、やはり此処が目的地の伊賀の里だったみたいだ。
「此処が伊賀の里か~!」
「本当に夕刻前に着いたな!この乗り物凄すぎだろう!」
「どこに着陸すればいいんだ?」
「このまま真っ直ぐ進んでくれ」
デカい村の上空をゆっくり進んでいるのだが、流石は伊賀で一番人口の多い伊賀の里だけあって、大和の村なんかとは比べものにならないくらい賑やかだ。
ただ女性が多いような気がする。
近江軍とバチバチにやり合ってるから、強い男達は最前線にいるのかもな。
「あそこが伊賀の里の中央広場だ。えーと、移動の魔法を使うには景色を記憶する必要があるんだったな?」
「そうだ」
「ならば広場に降りよう。此処に大和の里の皆を連れ帰りたい」
「オーケイ!」
忍者達を驚かせないよう、ゆっくり中央広場に着陸した。
フィーーン フィーーン フィーーン
だが試作2号機から不思議な音が鳴っているので、広場にいた大勢のくノ一らの注目の的になってしまった。
「皆こっちを見ておるな」
「嫌な予感がする。平蔵、降りてくれ」
「うむ」
試作2号機から降りて、急いでアイテムボックスに収納した。
「あれ?平蔵様?」
「えええ?大和にいるんじゃなかったっけ?」
「それよりアレ!」
「なに?鉄人間!?」
「変なピカピカがいる!!」
ワーーーーー
ぺたぺたぺたぺた ぺたぺたぺたぺた
ぺたぺたぺたぺた ぺたぺたぺたぺた
一瞬にして、広場にいたくノ一全員に囲まれ、初めて大和の里に行った時みたいに超モテモテ状態になった。
「やっぱりこうなったし!!平蔵はどこだ!?」
ワーーーーー
ぺたぺたぺたぺた ぺたぺたぺたぺた
ぺたぺたぺたぺた ぺたぺたぺたぺた
ダメだ!大和の里よりも人数が多すぎて、平蔵と完全にはぐれた。
モテモテなのは嬉しいけど、この後大事な用事があるんだってば!!




