871 驚きまくる百花繚乱の女の子達
今日は朝からやることがいっぱいだ。
まずはいつものように、ミスフィート軍の仲間達をアリアダンジョンに放流。
そして和泉をお迎えに流星城の食堂に転移した。
「あ、来た来た!」
「んじゃ公園に行くか~。問題なのは五人共揃ってるかどうかだな」
「ヨーコはいると思うんだけど、それ以外の子達にとっては突然決まった出稼ぎだからね~。それに朝集合としか伝えてないし、まだ来てないかも」
「イズミ!絶対に五人連れて来なさいよ!そしたら許してあげる。仕事をサボった罪は重いのよ!」
「だから私はミスフィートさんと話してる所を、この男とニャルルに拉致されたんだってば!被害者なの!!」
おおう、まだ料理班に恨まれているようだ。
「高級魚で許してもらえなかったのか?」
「まだ食べてないから、見せただけじゃ効果が無かったんだよ!」
「夕食に間に合わなかったもんな・・・」
一般家庭と違って大量に料理を作らなきゃならないから、1時間くらいじゃ夕食までに間に合わないのだ。しかも魚を捌かなきゃならないわけだから、どう考えたって無理なのである。
「おっと、無駄話している余裕は無かった。とにかく行くぞ!」
「勢揃いしてますように!」
越後の公園に転移した。
「お!?」
「いたーーーーーーーーーー!」
女番長グループのいる方に近寄っていく。
「よう」
「ちゃんと五人揃ってるじゃない!おはよー!」
「「おはよっス!」」
「みんな大きなバッグを持ってるし、ちゃんとご両親に報告して準備してきたってことだよね?」
「ああ。いや、はい!住み込みで一ヶ月仕事してくるって言ったら、『そうか!しっかり働いてこい!』って」
「ウチの親もそんな感じだったな~」
「まあ、仕事するって言ってんだから、引き留められるわきゃねーよなあ」
「京の都で働くっつったら、『嘘こけ!』って信じてもらえなかったぞ!」
「そうそれ!冷静に考えたらさ、京の都ってメチャメチャ遠いんじゃ?向かうだけで余裕で一ヶ月過ぎね?」
「「あっ!!」」
オイお前ら、今気付いたのかよ!
和泉が俺の顔を見たので、俺から説明することにした。
「安心しろ。俺ほどの正義の味方になると、一瞬で京の都まで連れていくことが出来るんだ」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
「だがその前に寄る所がある。少し待っててくれ」
通信機を取り出した。
『小烏丸か?どうしたこんな朝から』
「一応筋を通したいんで、今からそっち行っていいか?」
『筋を通す?何の話だ?』
「大したことじゃない。門兵に案内してもらうのも面倒だから、直接玉座の間に行っても構わんか?」
『意味不明な野郎だな!丁度そこにいるから来ても構わんが』
「んじゃすぐ行く!」
通信機を切った。
「よーーーし、全員手を繋いでくれ!」
「どこに通信してたのよ?」
「すぐわかる」
「手なんか繋いで何の意味があるんスか?」
「京の都に行くために必要な儀式をするんだ」
「儀式!?」
「なに適当なこと言ってんのよ!」
頭に『?』を浮かべている女の子達と手を繋ぎ、ガルザリアスの城に転移した。
「・・・え!?」
「景色が変わった!」
「ここどこ!?」
「おいおいおい、なんだこの女共は?お前一人じゃなかったのか」
何も説明してなかったので、ガルザリアスが女の子達を見て訝しんでいる。
「ガルザリアス、ちょっと急いでるもんで突然来てすまなかった」
それを聞いて、女の子達がギョッとした。
「はい!?ちょ、ちょっと!ガルザリアスって越後大名の名前じゃ・・・」
「うぇえええ!?この明らかにヤバそうなヤツ、ウチの大名なん!?」
「おいバカ!口の利き方に気を付けろ!」
「ああああっ!ご、ごめんなさい!」
「やっぱココってお城なのか!」
「ひええええええ」
眉間に皺を寄せたガルザリアスが、女番長グループを見ている。
「こいつら、リンドンの百花繚乱か?」
「へーーーー、あの街までちゃんと見てるんだな。正解だ」
「で、何故連れて来た?」
「勝手に持ってっちゃマズイと思って報告しに来た。とりあえず一ヶ月ほど貸してくれ。ちょっと京の都の城で軽い仕事をするだけだ。出稼ぎだな」
「なんだ、そんなことか。しかしどうしてコイツらなんだ?」
「深い意味は無いぞ。リンドンに大福を買いに行ったら軽く揉めてな、自分で稼いだ金を両親に渡したら家での待遇が良くなるぞーとか、そんな話になっただけだ」
それを聞いてガルザリアスがニヤリと笑った。
「ハハッ、親孝行か!いい話じゃねえか。しっかり働いてくるといい」
「「は、はい!!」」
よし、これで越後大名に筋は通した。働くのが一ヶ月だけとは限らんけどね。
しかし本命は爆炎一夜の方なんだよな~。
「んじゃ京の都に行くぞ!ガルザリアス、後でまた来るから城にいてくれ」
「また来るつもりかよ!俺はお人形作りで忙しいんだがな」
「早速始めたか!おっと、いかんいかん。急いでるんだった」
再び女の子達と手を繋ぎ、流星城に転移した。
「うわっ、今度は外だ!」
「目の前にデッカイ城があるんだけど!」
「え?なんで城門前なのさ?」
「しばらくここで働くんだぞ?いきなり食堂じゃ威厳もへったくれもねーだろ」
「たしかに!!」
「じゃあこの子達のことは任せたぞ。遅刻だってまたどやされちまう」
「はいはーい。頑張ってね~」
「ってか何でこのマスクの人、越後大名と知り合いなの!?」
「しかもタメ口だったよな!?」
「あ~、この赤いマスクね、こう見えて尾張ミスフィート軍の軍師なんだよ」
「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
女番長グループの驚く顔を見ながら、アリアダンジョンに転移した。
「「遅えぞ!!」」
早速、清光さんと虎徹さんにどやされた。
「すみません、ちょっと越後まで行ってたんですよ」
「越後だと!?」
「あの空飛ぶバイクで行ったのか!」
「もちろん!ようやく目標達成です。上手くいけば近江の状況が激変しますよ。そして今日の遠足はたぶん中止になります」
「なんだと!?」
「メッチャ気になるじゃん!」
「とりあえず近江に行ってから話します。もうどやされたくないんで」
「まあ、とにかく近江に飛ぶか~」
ってことでメタルヒーローに変身し、近江に転移した。
「「遅い!!」」
やっぱりレミィ母さん達にどやされた。
「安心しろ。たぶん今日の遠足は中止だ」
「はあ?ん~、確かにちょっと雨がチラついてるけど・・・」
「おーい、ケンちゃん!」
「はい?」
少し離れた場所にいたケンちゃんが、こっちに駆け寄って来た。
「越後に行くぞ」
「へ?」
「だから越後だ。リンドンの街、お前の故郷だ」
「いや、近江からメッチャ遠いじゃないっスか。そんな暇無いんスけど・・・」
「いつからそんな現実的な男になった?存在自体が意味不明なピカピカが突然越後に行くって言い始めたんだぞ?意味不明なことが起きるに決まってるだろ!」
それを聞いたケンちゃんが、ハッとした顔になった。
「本当に越後に行くんスか!?」
「昨日、爆炎一夜の十一代目と会ってきた。ケンちゃんの話を聞かせてやったら喜んでたぜ?」
「うおおおおおおおおおおおおお!マジか!爆炎一夜の仲間に会えるのか!」
気になるワードが出てきたので、清光さんが口を開いた。
「十一代目だと?そのバクエンってのは?」
「『爆炎一夜』。通称『爆炎一夜』。越後のリンドンって街でケンちゃんが率いてた喧嘩チームの名前です」
木の棒を拾って、地面に『爆炎一夜』と書いた。
「やはり族だったのか!」
「族上がりのスピルバーンなら喜ぶと思ってましたよ。一緒に行きますよね?」
「行くに決まってるだろ!!」
ゼーレネイマスに視線を向ける。
「ケンちゃんを、信頼してる仲間達と会わせるんだ。俺の企みは言わなくたって分かるよな?もちろんゼーレネイマスも行くだろ?」
ゼーレネイマスが口端を上げた。
「今日の遠足は中止だ。全員で越後に行く」
「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!」」
事態を把握してるのは半数くらいだけど、雨がチラつく遠足よりも楽しいに決まっているので、よく分からないながらも全員笑顔になった。
さてさて、あとはケンちゃんの仲間達が覚悟を決めるかどうかだな。




