87 水生成機
ユリが洗濯を終えた。まあ、スイッチを押しただけだけどな!
次に洗った物を乾かさなければならないのだが、まあ個人的な感想なんだけど、衣類乾燥機を使うよりも太陽光で干した服の方が、着た時に気持ち良いと思っている。
なので、とりあえず乾燥機は後回しってことにして、洗った衣類の籠を持って井戸まで移動した。
「おお!全部乾いてるっスね」
見た感じちゃんと汚れは落ちてるな。
「汚れも落ちてるし、問題は無さそうかな?」
「洗濯がこんなにも楽になるなんて・・・」
乾いた洗濯物を回収し、ユリが洗った物を干して行く。
「んじゃ、他の人への洗濯機の説明なんかは二人に任せるよ」
「作ったのは小烏丸だけど、自慢したくてしょうがないっスよ!」
「私も誰かに言いたくて、さっきからずっとうずうずしてるわ!」
「ハハハッ!あーでも、もう一つ設置したい魔道具があるんだよね。さっき見た、洗濯機に取り付けてあった水生成機のことなんだけどさ。厨房と、あとどこか二ヶ所くらいに置いとけば便利だろう?」
「それは絶対必要っス!」
「ん-ーー、でも魔道具で作った水って飲めるの?」
「あ!そういやまだ飲んでないな・・・。空気中の水分だから、大丈夫だとは思うけど」
大丈夫だよな?毒素が混入するくらいなら、もうすでにココで暮らしてるみんなが具合悪くなってるだろうし。
その場でリュックからコップを取り出して、水生成機を起動させる。
ふむ、普通に綺麗な水だな。
飲んでみた。
・・・・・・なるほど。
味はまったく問題ない。ただ、温くて美味くも何ともないな。
「問題は無さそうだけど、温くて全然美味しくなかった」
「ほうほう。飲んでみていいっスか?」
「コップの使い回しが気にならないのならどうぞ」
水生成機を起動させて、コップに水を溜める。
ルーシーが水を一気に飲み干した。
「たしかに温くて美味しくはないけど、普通に飲めるっス!」
ユリも味が気になるらしく、同じように水を飲んだ。
「問題なく普通に飲めるわね。まあすごく便利なのだから、これで十分じゃない?」
「あっ、思い出した!味はともかく温さは解消出来るぞ!ああ、それは厨房に設置してから試そうか」
三人で厨房に向かう。
・・・・・
「どこに設置したら使いやすい?」
「えーと、それならココにお願いするわ」
「近くに窓もあるし、問題は無さそうかな?」
言われた場所に水生成機を設置した。
厨房はかなり水を使うだろうから、勢いよく水が出るように、魔石を3個使う強力なタイプも作って来たのだ。
ただ料理班からすると、厨房がココまで便利になるとは、今まで一度も考えたことすらないワケで。・・・よし、時間のある時に日本の台所みたいに改良しよう!
コップを三つ持って来て、水を入れていく。
そしてマジックバッグから魔道具を一つ取り出した。
「見てな?」
コップの上に魔道具を持って行き、起動ボタンを押す。
10秒ほど待ってから、コップの中に四角い氷を落とした。
「なんか落ちたよ!?」
「氷生成機だ。こうやって使おうと思って作ってあったんだ」
「おおーーーー!氷も作れるっすか!?」
三つのコップに氷を入れて3分ほど待ち、みんなで飲んでみる。
「冷たくて美味しいっス!」
「これは素晴らしいわ!」
「大成功だな!氷生成機も量産するか~」
新しい魔道具を一つを作るたびに、必要な物がどんどん出て来てしまうな。
魔道具作りは楽しいから苦痛ではないんだけど、今は時間が足りんのよね~。
とりあえず成功ということで、1階と2階の窓辺に水生成機を設置した。
「んじゃ二人共、洗濯機と水生成機の説明は任せた!」
「任せるっス!」
「わかったわ。まあ張り紙を見れば、ある程度わかるでしょうけども」
帰り道にふと気付く。
あ、思えば最後らへんはユリとも普通にタメ口になってたな。
ん-ー、まあいっか。仲良くなったってことなんだから。
・・・・・
作業場に戻って来た。
さて、氷生成機の量産と・・・、後はどうすっかな~。
「あっ!」
風呂場のことを思い出した。
浴槽の中に水を汲むのって本当に大変でさ、もうほとんど罰ゲーム状態だったのだ。
「デカい水生成機と熱生成機、あとシャワーも欲しいな」
シャワーは、座って使う用と立って使う用の二つ作るか。
水を生成して、途中で熱生成ゾーンを通って、シャワーヘッドから出て来るって感じでいいだろう。水の威力を出すために、ちょっとした工夫も必要かな?
・・・まてよ?コレがもし成功したら、同じやり方で水を冷たくすることも出来るんじゃないのか?
氷生成機必要ねーーー!・・・いや、何だかんだ氷は使うか。やっぱり作ろう。
ただ今日は少し疲れたので明日にすっかな。シャワーはたぶん大仕事だ。
作りたい魔道具が大体決まったので、それから何日か作業場に籠った。
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シャーーーッ
シャワーの温度は大体こんなもんかな?
ホントは使う時に自分で調節出来れば最高なんだろうけど、それをやろうとすると少し複雑で大変そうだから今回はやらない。作るなら平和になって落ち着いてからだなー。
湯船を張るための水生成機と熱生成機も同時に稼働中。
「きゃっ!」
へっ?なんか女の声が・・・。
「ちょ、なんで入って来てるんですか!工事中の貼り紙してあったのに」
「知らないよ!そんなの貼ってあった?」
「ドアにデッカイ紙が貼ってあったハズですよ!」
「うーーー!気付かなかったんだもん」
ちなみに入って来たのはピピンだ。
「まいったなぁ、しかしそのままじゃ風邪をひいてしまう。浴槽にはまだお湯が溜まってないし・・・、ついでだからシャワーの実験を手伝ってもらうか~」
「しゃわー?」
シャワーのスイッチを入れる。
シャーーーッ
「わわっ!何これ!?」
「このボタンを押すと、こんな感じで細く広がるようにお湯が出て来るんだ。このシャワーを使って、髪や体を洗うワケですよ」
「すごい!!」
「使い終わったら、もう一度ボタンを押すとシャワーのお湯が止まるんで、身体を洗い終わったら必ず止めて欲しいんだ」
ピピンがおっかなびっくり、シャワーのお湯に手を入れる。
「え?なに??あったかいよ!?」
「何も無い所から水を生み出すだけではなく、その水を一瞬でお湯に変えてしまうという、最先端の技術を取り入れた究極の魔道具なのだよ!」
「あははははっ!すごくおもしろいこれ!」
シャワーに夢中で、全然聞いてねえし!!
「まずそれを頭からくわーッとかぶって髪の毛を濡らす。そしてシャンプーで髪を洗った後、またシャワーの下に入って泡を洗い流すんだ。ああ、俺はちょっと浴槽の方をチェックするんで、一人でやってみるといいよ」
「やってみる!」
今度はちゃんと聞いてたみたいだ。
浴槽を見ると、もう結構お湯が溜まっており、触ると火傷するほど熱かった。
熱生成機をストップし、水を足して温度の調節をする。
「あはははははっ!」
初めてのシャワーってあんなんだったっけ?
なんせ俺の初シャワーは幼少の頃だろうしなあ。細い水が当たって、くすぐったかったような気がしたような、しないような・・・。
「よし!浴槽はオッケーだ。ピピン、俺はもう行くけど、・・・っていねえ!?」
タッタッタッタッタッ
「ホラ!コレだよコレ!」
「ちょ、ちょっと待って、って小烏丸くんがいるじゃないの!!」
ブホッ!!裸の女が一人増えたんですけど!!!
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