865 なぜか全員帰らずリンドンの街へ
お昼を食べてきた人達は刺身で腹いっぱいになったみたいだけど、俺とニャルルはこの時のために朝食抜きで来ていたので、エビやらヒラメやらとにかく限界まで食いまくった。
リンコも俺とニャルルに負けない勢いで食いまくっていたので、無限の胃袋を持っているってのは本当らしい。
少し前まで極貧生活だったから、高級魚と聞いてココが勝負どころと無理して食ってたのかもしれないけど、食べ終わっても余裕がありそうだ。
こんなところに大食いキングがいたとは・・・。
おっと、クイーンか。
というわけで助っ人選手達の出番は終了だ。
仕事の途中で拉致したわけだし、早く城に返さんとな。
「小烏丸とニャルルは、越後に漁をしにきただけなのか?」
「ニャルルの目的は漁でしたけど、このまま次の街まで進もうと思っています」
「ほほう、どんな街なのだ?」
「とにかくツッパリがうじゃうじゃいる街だから、たぶん街に降りた瞬間喧嘩になるだろな~」
「「はあ!?」」
「ツッパリって、あのツッパリ??」
「そのツッパリだ。でも越後では刃物を所持することが禁止されているから、結構平和な街だぞ」
「ツッパリに絡まれるんでしょ?どこが平和なのよ!!」
「なあに、勝てばいいんだよ勝てば!」
「わはははは!面白そうではないか!私も行ってみたいぞ!」
「いや、ミスフィートさん、仕事があるんじゃ?」
「もうそんな気分じゃないから、今日は遊ぶぞ!!」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
マジかよ!あの街にミスフィートさんを?
まあ、彼女に限って喧嘩に負けることはないだろうけど。
「思い出した!越後って美味しい大福売ってるんだよね?」
「あ~、俺が大福を買った所は、今から行こうとしてるリンドンの街だな」
「やった!大福買いに行こ!」
「うぇえええ!イズミも仕事サボるっスか!?」
「ダイフクって何?美味しいってことは食べ物?」
「甘いお菓子だよ!すっごく美味しいの!」
「わーーーーー!食べたい!」
「リンコ、死ぬほど魚料理を食ってたっスよね!?まだ食えるんスか!?」
「甘いお菓子は別腹だし!!」
「ぐぬぬぬ・・・。こうなったらウチらも行くしかないっス!」
「やったーーーーーーーーーーーーーーー!」
大福に釣られて、全員行くことになったもよう。
でも転移セーブしてからじゃないと、この人数は連れていけん。
「とりあえず転移セーブしないと皆を連れていけないんで、ニャルルと二人でリンドンの街まで行ってきます。たぶん1時間半くらいで到着すると思うから、ひとまず流星城で待機してもらっていいですか?」
「いや、城に帰ったら仕事に連れ戻されるから、此処で待ってるぞ」
「うん。私達全員、城に帰ったら一瞬でアウトだね!」
「すでに大福気分なのに、仕事なんかしてらんねーっス!」
「海で遊びながら待っていよう!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
どうやら全員、仕事をボイコットするらしい。
おそらく文句を言われたら、『俺とニャルルに拉致されて帰って来られなかった』って言い訳するつもりだな?
そうすれば彼女達はただの被害者だ。
そして俺とニャルルはクソミソに文句を言われることだろう。
でも実際に彼女らを拉致してきたわけだから、もう腹をくくるしかあるまい。
「ニャルル、帰ってからのことは考えるな」
「わかってるにゃ。さかにゃをばら撒いて有耶無耶にするにゃ」
「そういや貝やカニなんかは城に持ってかなきゃマズいか・・・」
魚は全滅してるだろうけど、生きてる魚貝類がいたらアイテムボックスに入らないのですよ。
「ササッと流星城の厨房の奥にある冷蔵倉庫に置いてくる。少し待っててくれ」
「わかったにゃ」
流星城の食堂に転移すると、和泉が消えたことにキレながら皿洗いしてる料理班の子がいたが、見なかったことにして冷蔵倉庫に魚貝類を置いて船に帰還した。
そしてミスフィートさん達を転移で砂浜に移動させ、試作2号機を発進させて大型船を回収。
ちょっと面倒だったけど、越後に港を造るわけにゃいかんから、ここで漁をする時は毎回このパターンになるかな。
「んじゃサクッとリンドンの街まで行ってきます。ここから見える範囲で遊んでて下さい」
「了解だ!」
「海で遊ぶのなんて久しぶりっス!」
「ダイフクのために胃の中の物を急いで消化しなきゃ!」
「早く帰って来るっちゃよ?」
「そういや今は鬼っ娘だったな・・・」
せっかく海にいるんだからって盛り上がり、みんな水着に着替えたのだ。
和泉は鬼っ娘だ。もう恥ずかしさとかそういうのは無いらしい。
「ニャルルも遊んでていいんだぞ?」
「海はもう十分にゃ」
「そうか、んじゃ出発だ!」
ドシューーーーーーーーーー!
・・・・・
ほぼ予想通りの時間にリンドンの街に到着した。
大福屋があったのは街の東寄りだったハズだから、上空から東に進んでいき、公園の真上で試作2号機をアイテムボックスに収納して、落下しながら公園の中に転移するという、最近覚えた荒業を使った。
「ちょっとドキドキしたにゃ!」
「俺もだ。でも門から正々堂々と入ると武器チェックされるから面倒なんだよ」
「にゃるほど!」
「よし、転移セーブ完了!あの砂浜に戻るぞ」
「うにゃ」
ニャルルと砂浜に転移すると、四人が水際で楽しそうにはしゃいでいた。
「ただいまーーーーー!」
「リンドンまで行ってきたにゃ」
水着姿の四人が振り返った。
「あ、小烏丸達が帰ってきた!」
「ダイフクだ!」
「よし、服に着替えるか」
「お風呂を出してほしいっス!」
ゆっくりしている時間は無いので、みんな軽くシャワーを浴びるだけにして、すぐ元の服装に戻った。
「今から木刀を配布します。出来れば喧嘩は殴り合いがいいんだけど、相手が道具を持ったら使って下さい。でも殺しはご法度の国ですから、強面のツッパリとはいえ低レベルです。すごく手加減しながらボコること。いいですね?」
「低レベルだったのか!わかった。手加減しよう」
「顔が怖いだけって感じなんだね」
「ウチらは少し前まで派手に戦争してたから、皆レベルが高いっスもんね。殺しちゃわないよう気を付けるっス!」
「私、雑魚なんだけど!!」
「この前レベル上げしただろ。ミスフィート軍では雑魚でも、たぶんツッパリより強いぞ」
「おお!村長を撃破するためにケンカの練習するしかないね!」
「前も言ってたけど、それほどまでに村長が嫌いなのかよ!」
全員の腰に帯を巻いてあげてから輪っかを装着し、そこに木刀を通した。
「よし、バッチリだな!」
「私は喧嘩なんかしないからね!」
「メッチャわくわくしてきたっス」
「対村長の練習台になるがよいわ!」
ミスフィートさんはともかく、それ以外は喧嘩とかやらなそうなメンツなんだけど、意外とみんな好戦的なのかもしれない。
一体どうなるんだ?と思いながら、手を繋いでリンドンの街に転移した。




