863 網外し要員を流星城から拉致してくる
ガルザリアスと別れる前に、『お人形って呼ぶのが恥ずかしかったらファンネルーと呼ぶがいい』って教えてあげた。
まあ俺は別に、お人形呼びでも構わないと思ってたりするけど。
お人形かと思ったら実は凶悪な兵器だったというギャップが面白いんだよね。
そして再びセレスティーナと二人で試作2号機に乗り、ガルダンの街目指して進めるだけ進んでおいた。
「そろそろダンジョンメンバーを回収しなきゃいけない時間だから帰るぞー!とっととおっぱいを隠しやがれ!」
海が見たいと言い始めたので浜辺に着陸したのだが、なぜかセレスティーナがトップレス姿で遊び始めたのだ。
いつの間にかビキニの下だけ履いていたのだが、海に来てから履いたのかずっと履いていたのかは不明だ。
『誰かに見られたらどーすんだ!』とブチキレたんだが、『近くに街も民家も無かったから大丈夫だ!』と言い放ち、靴と白いブラウスと白いスカートを俺に預けて海に入っていったわけですよ。
泳ぐつもりはなかったみたいで、水際でチャプチャプ遊んでるだけだけど。
大きい波が来たらワーーーーっと逃げてきて、いちいち俺に抱きつくのだが、トップレス姿だから目に毒すぎる!
まあでも彼女と二人だけで海に来ることって滅多にないだろうから、少しの時間でも思い出になったのならそれでいいか~。
ほっこりするし、楽しいっちゃ楽しいのだ。
セレスティーナがトップレス姿ってのが問題なだけで。
何なんだこの思い出のワンシーンは!
海ではしゃぐ彼女とか素敵なシーンのハズなのに、絵面がちょっとおかしくないですか?よく見たら彼氏の方も赤い流星だしさ!
「楽しかったな!やっぱり越後の国は大好きだ」
「そうだな。北海道まで行った後、佐渡ヶ島にも転移セーブしに行くつもりだから、今度は佐渡ヶ島の海に遊びに行こうか」
「その北海道って所もすごく楽しそうだから、そっちでもいいぞ!」
「どっちも魔物がわんさか出現するけどな!」
砂浜デートに大満足のセレスティーナを連れてアリアダンジョンに転移し、仲間達を回収してから流星城に帰還した。
次回はニャルルだな。その前に遠足があるのだが。
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遠足はまたもや戦闘ナシだった。
でも琵琶湖で釣りをして魚を補給したので、結構楽しかった。
―――――そしてニャルルと一緒に漁をすると約束した日がやってきた。
天候は快晴。
気合十分のニャルルを試作2号機に乗せ、越後の空へ舞い上がった。
でもセレスティーナと越後の三分の一ちょいって所まで進んでいたので、昼過ぎには新潟市の位置にあるガルダンの街付近に到着できるのではなかろうか?
上空から猫ちゃんと出会った浜辺が分かるといいんだけど・・・。
「にゃつかしい景色だにゃ~♪」
「前回とは反対方向に進んでるんだが分かるのか?」
「にゃんとにゃく覚えてるにゃ。あの浜辺もたぶんわかるにゃ」
「すげーな!俺もまったく覚えてないわけじゃないんだが、上空からの眺めだと結構違って見えるから難しいんだよな~。ニャルルの記憶力に期待するぜ」
「任せるにゃ!」
とてもご機嫌なニャルルとの飛行も楽しく、順調に進んでいると、ほとんど思った通りの時間に後ろから『あそこにゃ!』と聞こえた。
「あ~、確かにこんな感じの場所だった気がするな。とりあえずあの辺の砂浜に降りるか?」
「うにゃ!」
というわけで砂浜に着陸。
ニャルルがきょろきょろしているが、残念ながら眼鏡のチンチクリンが海を見ながら黄昏ているなんてことはなかった。
猫ちゃんは佐渡ヶ島にいるハズだからな。
それにもう、船を流されるようなヘマはしないだろう。
ニャルルが満足したところでまた試作2号機に乗り、上空から大型船を浮かべられそうなポイントを探すが、冷静になって考えたら、わざわざ陸から船に乗り込む必要が無いことに気が付いた。
試作2号機に乗ったまま船を出せばいいだけなのだ。
「この乗り物ヤバすぎるにゃ!」
「しかし二人で網外しするのは大変そうだな」
「応援を連れて来るにゃか?」
「暇そうなヤツを見つけたらそいつを拉致する!」
「面白そうにゃ!最低3人は欲しいにゃね」
「経験者問わずでいこう」
というわけで砂浜に戻り、セーブしてから流星城に転移した。
なんとなく玉座の間に転移したのだが、昼過ぎだったから、食堂に行けばたくさんいるかなと思ってニャルルと二人で移動する。
―――――階段に座って話しているルーシーとリンコを発見!
「アレでいいか」
「役には立たにゃそうだけど悪くにゃい人材にゃ」
すたすたすたすた
ガシッ
「ルーシーとリンコを捕獲しました!」
「速やかに連行するにゃ」
「え?なに!?」
「よくわかんないけど捕まったっス!これは一大事っスよ!!」
シュッ
砂浜に転移し、ルーシーとリンコを置き去りにして城に戻った。
そしてまたニャルルと二人で次の獲物を探しながら城内を歩く。
―――――通路で話しているミスフィートさんと和泉を発見!
「ちょっと大物すぎるがどうする?」
「当然拉致するにゃ」
たぶん二人とも全然暇じゃないが、この流れを止めるわけにもいくまい。
ガシッ
「ミスフィートさんと和泉を捕獲しました!」
「連行するにゃ」
「む?小烏丸ではないか」
「なんで私達捕まったの!?」
シュッ
越後の砂浜に転移。
「はあ!?海ではないか!」
「え?なんで砂浜に連れて来られたの!?」
水際でワーワー騒いでいたルーシーとリンコが、俺達を発見して駆け寄ってきた。
「突然砂浜に置き去りにするとか酷すぎっス!っていうか隊長とイズミまで連れて来られたっスか!」
「全然意味わかんないんだけど!!」
城にいたのに突然海だからな。
ミスフィート軍では常識の範囲内の出来事だが、混乱するのは当然か。
「落ち着きたまえ。緊急ミッションだ!諸君らは網外し要員として、一緒に船に乗ってもらう!」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
「仕事の最中なのだが?」
「これから食器を洗わなきゃいけないんだけど!」
「ウチらも船乗ってる場合じゃないっス!」
「早く書類を持っていかなきゃ怒られるよね?」
でしょうね!
みんな忙しいんだろなーとは思ってましたとも。
「仕事に追われる毎日なんて虚しくないですか?たまには大海原に出て、魚と戯れながら心を癒すことも必要だと思いますよ」
「時と場合によるでしょうが!そういうのは休日にしてよ!」
「ところで何処の海なのだ?」
「越後です」
「「越後だってーーーーーーーーーー!?」」
「なんでいきなり越後の海なんスか!」
「のどぐろを獲るために、ウチらは遥々越後までやって来たんにゃ!」
「えちごってどの辺にあるの?」
「そうだな、地図で説明してやろう」
木の枝を拾ってきて、砂に大きな日本地図を描き、国ごとに分けていった。
「この小さいのが京の都。んで越後はここだ」
日本しか存在しない世界だから、日本地図というより世界地図だな。
「こんな遠くまで連れて来られたのか!!」
「越後ってこんなに大きかったっけ?」
「仕事中に知らない国まで連れて来るのやめてほしいっス!」
「地図見てもさっぱりわからないし!」
説明はこれくらいにして、そろそろ船に乗るか~。
「それでは航海士の諸君、大海原に出るぞ!」
「今回の漁の目的は『のどぐろ』にゃ!みんにゃ気合入れるにゃ!」
「オーーーーーーーーーーーーーーー!」
俺しかノッてこなかった。
「お前らやる気あるにゃか!?しっかり腹から声を出すにゃ!」
「「オーーーーーーーーーー」」
忙しいのに連れて来られた新人航海士四人だったが、ニャルル船長の機嫌を損ねて海に置き去りにされてはかなわんから、しぶしぶ声を出した。
まあ今はやる気が皆無でも、漁が始まったら何だかんだで楽しいだろうし、『のどぐろ』の美味さを知ったら来て良かったってなるでしょう!
・・・なるよな?




