847 忍者村に行く
伊賀忍二人がお嬢の体操服姿を完全スルーしていることに違和感を感じた俺が問いただすと、くノ一の方がエロエロだというとんでも回答が返ってきた。
「くノ一・・・だと!?もしかして大和にもくノ一がいたりするのか?」
「我らは例外無く生まれて死ぬまで忍だ。男女共にな」
「半数がくノ一でござる故、大和の里で100人ほど修行中でござる」
「100人って、くノ一だけで100人!?っていうか大和の里?もしかしてそれって、大和に作った忍者村なのか?」
「ニンニン」
「おい!いらん事まで喋り過ぎだ!」
「多分このピカピカは問題無いでござる。エロ好きに悪い奴はいないでござる」
「「いるわ!!」」
ニンニンに全員からツッコミが入った。
「ニンニン先生・・・くノ一が見たいです・・・」
俺の悲痛なセリフに、三人の視線が集中した。
「良いでござるよ」
「お前はお前で軽く承諾するな!!」
「この男にエロ女を見せるなんてとんでもないですわ!また嫁が増えるに決まってますわ!」
「なにッ!?嫁がいるのか」
「100人いますわ!」
「違うぞ。108人だ」
「「ぶはッ!!」」
噴き出した後、伊賀忍コンビがジト目で俺を見ている。
「ふむ・・・。一人くらいなら嫁がせても良いかもしれぬな。ミスフィート軍と繋がりを持つのも悪くない」
「でもくノ一はやめたほうがいいでござるよ?上の命令一つで、例え夫であっても簡単に裏切るでござる故」
「いや、嫁が欲しいわけじゃないし!もうお腹いっぱいだし!それに簡単に裏切る嫁とか絶対嫌だし!」
「おそらく今のは本心ですわね。でも・・・」
お嬢もジト目で俺を見つめている。
「まあいいですわ。ずっと宇宙刑事のままでいるなら許可しますわ!ワタクシもその『くのいち?』とかいうのには興味ありますし」
「ああ、お嬢。『くのいち』ってのはだな、ひらがなの『く』カタカナの『ノ』そして漢字の『一』って書くんだ」
「へ??統一感が無いですわね?」
木の枝で地面に『くノ一』と書いた。
「漢字で『女』って書く時、く、ノ、一って書くだろう?」
指で空中に女って書いたお嬢が、『あっ!』って顔になった。
「確かに『くノ一』でしたわ!でも、どうしてわざわざくノ一って呼びますの?」
「それは知らん」
「知らんな」
「知らんでござる」
「誰も知らないじゃないですの!意味不明ですわ!」
忍者達まで知らないとは俺も予想外だった。
「じゃあこの姿のまま行くんで、大和の里に連れてってくれ!手土産もちゃんと持ってるぞ!」
「手土産は有り難いが、一つもらってもな・・・。200人いるのだぞ?」
「大丈夫だ、問題無い」
アイテムボックスからでっかいホタテを出した。
「「ぶッッ!!」」
「今どこから取り出した!?」
「デカい貝でござるな!」
「俺くらいの正義のヒーローになると、謎空間に色々収納できるのだ」
「ホント意味の分からんピカピカだな!」
「でもこれ一個じゃ全然足りないでござるよ?」
「安心しろ。200人を腹いっぱいにできる程持ってる」
「4階層で大量ゲットしたのですわね?」
「うむ。子供チームが最初から最後まで4階層で狩りしてたから、海産物まみれになったのだ」
「まあ!ちょうど良かったですわね!」
忍者二人がホタテを調べている。
「絶対これ普通の貝じゃないだろ!魔物なのか?」
「滅茶苦茶美味そうでござるな!」
「ダンジョンに出現する魔物だぞ。他にも色々あるから楽しみにしとけ!」
「良かったですわね~♪」
とりあえずホタテを返してもらった。
「ところで、ニンニンはニンニンでいいが、そっちのあンたは何て呼べばいい?」
「そういや自己紹介をしていなかったな。平蔵だ」
男が木の枝を拾い上げて、地面に『平蔵』と書いた。
「漢字の名前だと!?」
「遥か昔から忍の里には、生まれた子に漢字で名を付ける風習がある」
「ニンニンは?」
ニンニンが木の枝で、地面に『ハム蔵』と書いた。
「半分カタカナやんけ!」
「ニンニン」
っつーか見た目と雰囲気から、もしかして『半蔵』って名前なんじゃないかと期待してたのに、『ハム蔵』って面白すぎるだろ!!
「名前が漢字って、小烏丸と一緒ですわね!」
「「なんだってーーーーー!?」」
木の枝で地面に小烏丸と書いた。
「とても良い名前ではないか!」
「まさか忍だったとは思わなかったでござる!」
「いや、俺は忍者じゃないぞ。でも漢字で名付ける国の生まれなんだ。遠い東の果てにある島国だ」
「ほう、そんな国が・・・」
「初耳でござる」
この世界じゃないんだけどね。
「もう知ってるみたいですけど、ワタクシはベアトリーチェですわ。地面に書く必要は無いですわよね?」
「うむ」
「ニンニン」
その、とりあえず『ニンニン』って言っとけばいいっての楽すぎるだろ。
「よし、自己紹介も終わったし、そろそろ忍者村に行こうぜ!」
「楽しみですわね~♪」
「それはよいが、このピカピカを連れ帰ったら大騒ぎになりそうだな・・・」
「間違いないでござる」
忍者との邂逅だったので前置きが長くなってしまったが、ようやく俺達は『大和の里』と呼ばれている忍者村目指して出発した。
・・・・・
―――――休憩所から大和の里までめっちゃ遠かった。
すぐ近くだと思ったのに、2時間近く掛かったんですけど!!険しい山の中を魔物を倒しながら進んだので、時間が掛かるのは当然なんだけどさ。
・・・まあそれはともかく、そう!忍者村ですよ忍者村!
「「ちぇいっ!ちぇいっ!ちぇいっ!」」
もう建物の形からすでに俺の常識とかけ離れていて驚いた。
戦国時代的な感じでもなく、木とコンクリートと植物のツタを組み合わせたような不思議な家がいっぱい並んでいるのだ。
ただ子供達が並んで木刀を振っているのが見えて、ほのぼのしてるのは確かなんだけど、流石は忍者村って感じで大興奮です!
「あ、お帰りなさいませ平蔵様!随分早く・・・」
青年忍者が、平蔵の後ろにいた赤いピカピカを見て固まった。
「うぇええええ!?鉄人間がいる!!ナニコレ!?」
「客だ。異常な程怪しいヤツだが重要人物だから失礼の無いように」
「は、はあ」
青年の前に立ち、両腕を組んでふんぞり返った。
「ほう・・・でかくなったな小僧」
「しゃべった!え、えーと、前に会ったことありましたか?」
「ない。何となく言ってみただけだ。しかし忍者は俺の憧れの職業だったから、友達になりたいと思っている。手土産を持参したから一緒に来るといい」
「は、はあ」
青年忍者が仲間になった。
「お前達、その赤いピカピカが美味いもん食わせてくれるそうだから、訓練は止めてついて来い」
「「わあああああああああ~~~~~!」」
たたたたたたたたっ
子供忍者隊も仲間になった。
「可愛い子供達ですわね~♪」
「でも男の子ばかり・・・だよな?女の子は一緒に訓練しないのか?」
「今日は男女別の訓練日でござる」
「なるほど」
「よし、中央広場に移動するぞ」
「そこに全員集めてくれるのか?」
「うむ。山で修行中の者もいる故、全員では無いがな」
「突然の襲来だったし、それはしょうがないか~」
「襲来だと悪者になりますわよ!」
「しまった!俺は正義の味方だって御触れを出してくれ」
「面倒だから嫌ですわ!」
子供達が俺のことををガン見していたので、ガチョピンを1体出して地面を歩かせたら、みんな大喜びしてガチョピンの虜になった。
ワーワー騒ぎながら、中央広場に向かって歩いていく。
「エーーーーー!なにその赤いピカピカ人間!!」
タタタタタッ
「うおっ!?」
目の前に、濃いピンク色の忍装束を着た女の子が現れた。
「「くノ一きたーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
なぜか俺だけじゃなく、お嬢もくノ一を見て叫んだ。
しかしこの忍者・・・、派手なピンク色で全然忍んでないじゃん!!




